安倍総理辞意は「新たな病気が発見」されたため~須田慎一郎
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月31日放送)に中央大学法科大学院教授の野村修也が出演。ジャーナリストの須田慎一郎を電話ゲストに迎え、自民党総裁選の行方について解説した。
自民党総裁選~菅官房長官が出馬の意向
安倍総理大臣の後継を選ぶ自民党総裁選に向け、菅義偉官房長官が出馬の意向を固め、二階俊博幹事長に伝えた。二階派(47人)が支持する方針で、他の主要派閥にも追随の動きがあり、選挙戦は菅氏を軸に展開するとみられる。岸田文雄政調会長も立候補を明言した。
飯田)選出の段取りは二階幹事長に一任することになっていて、9月1日以降に正式表明ということです。菅さんが軸になって来ましたね。
野村)そうですね。選び方については2つあるわけですけれども、党員投票はやらずに両院議員総会でということになれば、国会議員のなかで影響力の強い人が選ばれるということになりますから、道筋が菅さんの方向に向かって来ているという感じはしますね。
持病の潰瘍性大腸炎以外の病気が見つかった安倍総理
飯田)ジャーナリストの須田慎一郎さんと電話がつながっています。須田さんは、突然の辞意表明をどのようにご覧になりましたか?
須田)やはり病状が相当悪化していたのだろうと思います。潰瘍性大腸炎ということで、もともと安部総理はこの病気にかかっていたわけですけれども、アサコールという薬を投与して、かなり改善していたのです。病院関係者に取材しますと、この薬はしばらく飲んでいると効かなくなって来るので、点滴で別の薬を投与したという状況があるようです。それで症状は改善したのですが、この点滴は2~3週間に1度、病院に行って投与しなければならないとのことです。病院に行けば、数時間かかります。「公表して2~3週間に1度の時間を空けるべきだ」と主張する人たちと、「公表すると憶測を呼んでしまうから隠すべき」と主張する人たちがいたのですけれども、8月17日に慶応大学病院で健診を受けた際に、どうもまた別の病気が見つかったようなのです。そのなかで病院サイドも安部総理の入院受け入れをめぐって、準備態勢に入っています。入院治療、検査をしなければならないという状況になり、「これはもう持たないだろう」ということで、辞職という形を取ったのだと思います。
飯田)潰瘍性大腸炎以外にも、何かある可能性が出て来たのですか?
須田)そうですね。それについては入院、検査をして、治療する必要性が8月に入って生じたということです。
キーパーソンは二階幹事長~「反二階」派との攻防
飯田)後任についてはどうなって行くとお考えですか?
須田)やはり、キーパーソンは二階幹事長だと思います。二階さんの意向が大きく影響して来るのですが、自民党内には「反二階」、二階さんに対して腹に一物を持つ人たちもいるわけです。その辺りとの攻防になるのだと思います。体制としては2つポイントがありまして、1つは次の内閣が、ある意味で危機管理内閣だということもあり、ここで大きく内閣の方向性を変えるわけにはいかないので、「菅さんを軸に」というところと、「ここは一旦リセットして」と考えるところで2つに分かれているのだと思います。
次の解散総選挙を誰が仕切るのか~2021年の9月までに解散総選挙か
須田)なぜ2つに分かれているのかというと、いちばん大事なポイントは、「次の総選挙を誰が仕切るのか」というところです。これについて言えば、来年(2021年)10月に衆議院議員の任期を迎えるので、来年の10月までには解散総選挙をやらなくてはいけない。もう1つは、来年9月に自民党総裁の任期を迎えるわけです。新総裁は残りの期間、つまり安部総理が途中で退任ですから、「来年9月まで」と党則で決まっているのです。そう考えると、来年の9月までに解散総選挙をやるということになって来ます。解散総選挙となると、どの人を選挙の看板にすればいいかということも、大きなポイントになると思います。
飯田)党員投票となると、その辺で石破さんの名前が挙がって来るということですか?
石破氏が出て来たのは解散総選挙を意識した背景があるため
須田)そうですね。石破さんの名前が浮上して来ているのは、解散総選挙を意識した背景があるのだろうと思います。
野村)いまお話にあったように、1つの軸として菅さんの名前が出ているのは、コロナ対策だと思うのですが、危機管理内閣というところがある。一方で菅さんが総理になられたら、次の総裁選は「現職総理対新たな候補者の戦い」になる可能性があります。その場合、これまでは現職有利というのが一般的な総裁選の流れでしたので、菅さんが長期化するという可能性を見ている人もいます。その辺りはどうですか?
須田)菅さんが2021年の総裁選で勝利を収め、党内をまとめるというところですが、一旦選挙で勝つというハードルを超えないと難しいのだろうと思います。解散総選挙のどの辺りが勝敗ラインになるのかも見極めなくてはいけないのですが、とりあえず、そのラインを超えることができるのかどうかという点が、菅さんが新たに総理に選ばれる際の大きなポイントになって来ると思います。
次期総裁の任期ギリギリで解散総選挙を行う場合
野村)見立てとして、例えば総裁選挙をやった直後、まさに任期ギリギリのところで選挙を打つとなると、「選挙の顔は次に選びます」という選択肢はないのですか?
須田)ないわけではありません。ただ、それには2つポイントがありまして、1つは任期ギリギリの「追い込まれ解散」ということもあり、野党を含めて準備万端整ったなかでの選挙ですから、果たして追い込まれ解散でいいのかどうか。もう1つは、立憲民主党と国民民主党が合流の流れになっています。この合流は、「選挙で勝つために体制を整える」ということですから、時間が経てば経つほど、野党が強くなる可能性が高いのです。来年の任期ギリギリまで引っぱるとなると、ある意味で野党へのプラス作用になるという思惑もあります。選挙をいつのタイミングでやるのか、勝てるタイミングでやるということを考えると、あらかじめスケジュールを決めてしまうということは、ある意味で愚策なのかなと思います。
小泉純一郎氏が総裁に選ばれた際、党員投票が大きく影響~同じ轍は踏みたくない
野村)なるほど。いま若手のなかでは、むしろ党員投票をやって、疑似選挙的な形で衆議院選挙を見据え、選挙の顔の人を選ぼうという動きもあるようですが、この方式を選ぶことはないということですよね?
須田)そうですね。小泉純一郎さんが総裁に選ばれたときのことが浮かんで来ます。小泉さんは国会議員のなかではあまり人気がなかったので、総理総裁にはならないだろうという予想のなか、党員投票をやったことで大きく支持が集まったため、一気に総理総裁になって行った。小泉さんは結果的に5年5ヵ月やって、よかったということにはなっているのですが、あのときは自民党執行部の計算外の総理なのです。同じ轍は踏みたくないという意識があるのではないでしょうか。談合ではないけれども、派閥での話し合いのなかで、しかるべきところに落とし込むというやり方と、フリーハンドで人気により選んでしまうやり方と、どちらの方が現在の自民党執行部の影響力を残すことができるか、ということだと思います。
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