数量政策学者の高橋洋一が1月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。新設される女性支援室について、また、公金の拠出の在り方について解説した。
厚生労働省、4月に「女性支援室」を新設
厚生労働省は困難に直面する女性への対応を手厚くするため、「女性支援室」を4月に新設する。ドメスティックバイオレンス(DV)や性被害、貧困など女性を取り巻く問題は複雑化しており、実態を踏まえて問題の解決や自立の促進につながる体制を目指す。
飯田)現在は厚労省の「子ども家庭局」に所属する職員3人が中心となって対応していますが、それとは別に、社会福祉を担う社会・援護局のなかに「女性支援室」をつくる。10人体制になるということです。
Colaboをめぐる住民監査請求
高橋)方向性としてはいいのでしょうけれど、都道府県などで実際に政策へ下ろしていくときは、いろいろな補助金を出します。その補助金はどう使われているのか。最近、一般社団法人「Colabo(コラボ)」の件が話題になっています。
飯田)公金をどう使っているのか監査されている。
高橋)あまり使い方がよくないと思われる場合は住民監査請求がありますが、住民監査請求は95%が門前払いで、「こんなものは請求に値しない」と終わってしまうのですよ。
飯田)95%が。
高橋)でも、Colaboに対する住民監査請求は2月末までの再調査になっています。とても珍しい例ですね。
飯田)今回のColaboの件は。
高橋)私も監査請求を見ましたが、その付け方がすごいのです。「これはひどいな」という感じでした。東京都の福祉保健局が対応しないといけないのだけれど、おそらくコロナの影響などで見切れないのです。この手の話が大きくなり、NPOが対応して補助金を出したりすると、目配せと言うか監視と言うか、モニタリングできないような状態になると思いますよ。すごく数が多くなると思うので、行政では多分対応できなくなると思います。
飯田)行政では。
高橋)しかし、Colaboのような話を住民監査請求に委ねるとしても、第三者が見るのにも限界があるでしょう。だから補助金などを配る。一説によるとネットでは「公金チューチュー」などという言い方もされています。やり方を考えた方がいいと個人的には思っていました。
補助金を配るのではなく、直接NPO法人などに寄付してもらう ~税収は減るけれど効果は同じ
飯田)行政が手間をかけて監査を徹底するのか、全体のスキームを変えるのか。
高橋)変えた方がいいと思います。実は役人のときにトライしたことがありました。数千万円という金額は役所のなかでは低くて、下の係長で終わってしまい、チェックが効きにくいのです。
飯田)低くて。
高橋)どうしたらいいかと思ったのですが、やり方の1つとしては、補助金は税金を吸い上げて役所が配る仕組みです。それであれば、直接NPOなどに寄付させるのです。寄付させて税額を控除する。税収はその分減るのだけれど、効果は一緒です。
飯田)税収が減るということは、その分を税金で補助したのと変わらないことになる。
NPO法人などに寄付してもらえば、寄付した人が自分が寄付したお金がきちんと使われているかどうか監査する
高橋)まったく変わりません。この方法なら、寄付した人はより関心があるから、よりきちんと監査するのです。
飯田)自分の寄付したお金がどう使われているかをよく見る。
高橋)ある程度の金額になると、Colaboの話では「赤い羽根共同募金」にまで影響があり、公金の使い方が緩いのではないかと。
飯田)どこからお金が拠出されているかを調べると、いろいろな名前が出てくるところの一環に「赤い羽根共同募金」もあった。
高橋)そういう変な話になってしまうので、少額ではなく大きめの寄付をさせておいて、寄付した人が監視する。もちろんインターネット上で財務の話はきちんと公表するのが前提です。そうした方が監視は効くのですよ。
飯田)ある意味、より多くの人の目で見る。
官僚にもNPO関係の補助金の仕組みをつくろうとする人は少なくない
高橋)行政に監視を頼らず、より多くの国民の目や、寄付した人の目で見る。そういう方がうまくワークするのではないかと思い、提案したことがあったけれど、ものすごい勢いで潰されましたね。「何なのかな?」と思いました。
飯田)やはり、補助金の差配のようなことがしたいのでしょうか?
高橋)そうなのでしょうね。このような仕組みをつくろうとする人はたくさんいるのです。官僚の方でも助成に限らず、NPO関係の補助金の仕組みをつくろうとする人はたくさんいます。
飯田)官僚のなかにも。
高橋)そういう意味で、私は官僚の補助金の仕組みをつくる人を「バサッ」とやってしまうではないですか。「こんなもの寄付金を出した人がチェックすればいいでしょう?」と言うから。そうすると官僚の出番が少なくなってしまうのです。
女性支援こそ、監査の仕組みを考えるべき ~コロナのこともあり、福祉保健局では公金をチェックしきれない
高橋)女性支援となれば、数が増えると思います。きめ細かくやらないといけないですから。
飯田)それを全部行政が対応するとなると、マンパワーも何もかも足りない。そこで専門性のあるNPO法人に頼もうという話になるけれど、監査を全部行政がやるのはまた非効率です。
高橋)数が多すぎて無理だと思います。きめ細かくやるから、いろいろなタイプのものがたくさん出るのですよ。行政の方で対応するのは難しいし、特にコロナ禍であれば対応しきれないですよね。
飯田)担当しているのは東京都の場合、福祉保健局になりますので、まさにコロナと正面で向き合っているところです。マンパワーも予算もそちらに割かれる。
高橋)できないでしょう。厚労省で別の組織をつくるということですが、いくら何でも全国の話をそこでチェックするのは無理だと思います。政策はいいにしても、公金を使うときには何らかの仕組みを考えなければなりません。
飯田)使うときの仕組みを。
高橋)あとで変な話が出ると、政策がうまくできなくなってしまうこともあります。「こんな公金の使い方はよくない」と言う人もいますからね。
飯田)「だからこの政策を全部やめてしまえ」となったら本末転倒です。
高橋)公金のチェックの仕組みを一緒に考えた方がいいと、私は思います。
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