日本も中国から「浸透工作」されているという恐ろしい「事実」

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地政学・戦略学者の奥山真司が5月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国共産党による海外への浸透工作について解説した。

日本も中国から「浸透工作」されているという恐ろしい「事実」

22.03.2023 Chinese President Xi Jinping attends a departure ceremony following a three-day state visit to Russia at Vnukovo International Airport in Moscow, Russia. Aleksey Nikolskyi / Sputnik、共同通信イメージズ

中国の裁判所がアメリカ国籍の男性に対し、スパイ罪で無期懲役の判決

中国江蘇省蘇州市の中級人民法院は5月15日、香港の永住権を持つ78歳のアメリカ国籍の男性に、スパイ罪で無期懲役の判決を言い渡した。香港メディアなどによると、この男性は米中の友好関係や文化交流の促進に長年従事していた。

飯田)日本でも日中友好団体の方が拘束され、去年(2022年)、拘束を解かれたという話がありました。

中国はなぜ海外に浸透工作を仕掛けるのか

奥山)私はスパイ行為も含め、中国が海外に対して行う影響力工作に関する本を2冊翻訳しているので、この辺りのことは興味深く思っています。

飯田)そうですか。

奥山)『目に見えぬ侵略』と『見えない手』という2つの本を翻訳しました。中国がいかに海外に対して浸透工作を行っているのかという話です。今回、無期懲役の判決を受けた方はアメリカ国籍を持っていますが、基本的に中国系だそうです。

飯田)梁成運氏と名前も出ていますけれど、漢字の名前があるということは中国系、あるいは……。

天安門事件とソ連崩壊という2つのショック

奥山)中国にルーツのある方ということになります。中国共産党が海外に対して、なぜこういうことをするのかに関してですが、中国共産党にとっては80年代~90年代にかけて、2つのショックがありました。

飯田)2つのショック。

奥山)1つ目が天安門事件です。天安門事件によって、中国共産党のなかで「共産党を守らなければならない」という意識が生まれた。2つ目は、同じく共産主義を信奉していたソ連が解体されてしまったことです。

飯田)ソ連の解体。

奥山)1991年12月25日、クリスマスに解体され、ソ連はなくなってしまいました。天安門事件で自分たちの共産主義の危機があり、そのあとに同じく共産主義の国がなくなってしまうというショックが続いた。

外に対して工作を仕掛けなければならない ~華僑の住む現地メディアを中国共産党側が買収して、「新北京にしよう」という工作を仕掛ける

奥山)「このままだと自分たちは守り一方だな」と考え、中国の共産主義を国内で守るために、「外に対してもっと工作を仕掛けなければいけない」と思想転換したという歴史があります。

飯田)なるほど。

奥山)その一環として今回の判決もあるわけです。そのとき、海外に対して中国共産党が何をしたかと言うと、海外に存在する中華系の方々、いわゆる華僑と呼ばれる人たちへの工作から始めたのです。

飯田)華僑の人たちを。

奥山)2000年代の初めくらいに本格的に開始したのですけれど、その前に90年代から「愛国教育」を始めました。

飯田)愛国教育。

奥山)最初にやったのは、現地の中国系メディアを買収することです。中国にとって脅威になるのは、海外の華僑の人たちなのです。「中国を民主化せよ」など、現地で反北京運動のようなことを行うではないですか。それはまずいと考え、先に現地メディアを中国共産党側が買収し、「新北京にしよう」という工作を仕掛けたらしいのです。

中国からの留学生とビジネスマン、華僑コミュニティを通じて現地の政治家を買収 ~新北京側に

奥山)そこから華僑の「反北京の姿勢」を崩していったのです。常に鍵になったのは、華僑の人たちもそうですけれど、留学生や、経済力が上がってきた中国のビジネスマンです。

飯田)留学生とビジネスマン。

奥山)ビジネスの取引をしているなかで、共産党に都合のいいことを言おうという流れがあり、そのなかから徐々に北京側の意見に賛同してくれる人間を集めていったのです。そこから現地の華僑コミュニティを通じて現地の政治家を買収するなど、新北京側にしていく。

飯田)新北京側に。

奥山)いままでは「反北京」のような形で工作を受けていたと、自分たちは思っていたのですけれど、逆に現地にいる中国人をアセットとして使うことで、海外の政治家をオセロのようにひっくり返そうとしたのです。

オーストラリアでの浸透工作を描いた書籍『目に見えぬ侵略』 ~現地の中国人コミュニティを利用して現地の政治家を操作していく

奥山)その工作の様子をまとめた本が、私が翻訳した『目に見えぬ侵略』です。この本で書かれたのはオーストラリアの件でした。

飯田)『目に見えぬ侵略』。

奥山)2016年に、北京側に対して都合のいいことしか言わない人がいたわけですが、その人が中国側のビジネスマンからお金を貰うというスキャンダルがありました。彼は、オーストラリアの公式の立場とは違う「南シナ海は中国のものだ」という発言をしていたのです。そこで調べてみたら「こういうことをやっていた」と判明し、中国との関係がバレてしまったのです。

飯田)お金を貰っていたという。

奥山)スキャンダルを発端に、オーストラリアで次々に浸透されていた事実が出てきた。その実態を暴いたのが『目に見えぬ侵略』という本です。現地の中国人とのつながりを利用して、そこから海外の政治家を操作していくという動きが実態として出てきたのです。

飯田)あの本を読むと、選挙の際の票集めについても書かれています。特に地方選挙では少ない票数で受かってしまうので、このコミュニティを利用し、そこから徐々に中央政界を目指すと。

日本も中国から浸透工作されているという事実

奥山)そういうことですね。元政治家の方にも工作を行っています。『目に見えぬ侵略』が執筆される際、筆者のリサーチアシスタントをされていたアレックス・ジョスキさんと言う方がいます。

飯田)リサーチアシスタントをされていた。

奥山)中国系オーストラリア人の方です。その方が独自にいろいろと調べて『Spies and Lies』という本を書かれました。まだ翻訳本は出ていませんが、この方が先日、プライベートで日本に来ていたのです。

飯田)アレックス・ジョスキさんが。

奥山)26歳の若い方で日本語は話せないのですが、お母さんが中国人なので中国語が読めるのです。ですので、日本語の文献もけっこう読めるそうです。彼は「日本も実は相当、浸透工作されているのですよ」と、恐ろしいことを教えてくれました。

中国の大学教授と偽って日本の大学教授と仲よくし、浸透工作を行う国家安全部の工作員

奥山)今回、中国で逮捕された方は中国とアメリカの文化交流に関わっていたそうですが、日本でも中国との文化交流を進めていた方々のなかに、某大学の中国専門の先生もいるのです。そういう先生は向こうの大学の先生方と仲がよいではないですか。

飯田)確かにそうですね。

奥山)ジョスキさんがその先生方にインタビューして、「中国のどういう先生とお付き合いされているのですか?」と聞くと、その方は実はジョスキさんの知っている中国の国家安全部、アメリカのFBIにあたるような中国の情報機関の人間だったのです。

飯田)大学の先生ではなく。

奥山)スパイ組織の構成員が大学教授を偽り、海外で「中国政治を研究しています。あなたも研究していますよね。仲よくしましょう」と、情報交換をするのです。

飯田)大学教授を偽って。

奥山)「中国側の情報を与えてあげる」と言いつつ、中国に都合のよい情報しか与えないようなことをやっているらしいのです。

飯田)身分を騙る手法は、スパイ映画などでよく出てきますけれど、リアルでも行われているのですね。

奥山)彼によると、実際に漏れ出てきた内部文書を見たところ、日本の有名大学の先生と20年間の付き合いがある教授が、実は中国国家安全部の人間だったのです。そのような事実をすべて資料で裏付けしています。

飯田)そういう工作は統一戦線工作部など、情報機関のようなところが行うイメージがあるのですけれど。

奥山)表向きにはそう言われていましたが、裏の情報機関である国家安全部の工作員が、身分を偽って動いていたということです。

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