追悼・キダ・タローさん “浪花のモーツァルト”が人々に愛された理由

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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1181回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

今回は特別編---

5月14日、作曲家のキダ・タローさんが死去されました。享年93歳。先月、4月にはテレビ番組に出演し、元気な姿をお茶の間にみせていただけに驚かれた人も多かったことでしょう。

大阪出身の私は、キダ・タロー先生の音楽とともに育ってきたようなもので、いまでも信じられない気持ちでいっぱい。芸能界からも続々と追悼の言葉が寄せられています。

そこで今回の「Tokyo cinema cloud X」は番外編として「昭和レジェンドを語り尽くす」。稀代の作曲家キダ・タローさんにスポットを当てます。

キダ・タローさん  ※写真提供:オフィスとんで

キダ・タローさん  ※写真提供:オフィスとんで

親しみやすいメロディーと個性的なキャラクター タレントとしても人気を博した関西レジェンド

“浪花のモーツァルト”の愛称で親しまれた、キダ・タローさん。生涯に作り上げた曲の数は、5000を超えるとも言われています。

その中でも、私が特に印象深いのは、やっぱりCMソング。かに料理店に老舗温泉旅館、インスタントラーメン。どれもインパクトが強く、一度聴いたら忘れられない。いや、それどころか、気がつけば口ずさんでいる自分がいる。

そう言えば、私が上京したばかりの時、関西出身のプロデューサーから「関西人オーディション」なるものを受けた記憶があります。お題は、キダ・タロー先生作曲のCMソング。プロデューサーが途中まで歌って、私がその続きを歌うというもので、もちろん全問正解。まぁ、番組スタッフとのちょっとしたお遊びなのですが、これがきっかけでスタッフの皆さんとも打ち解け、私も緊張がほぐれて楽しく現場を過ごさせていただいたことを思い出されます。

それだけ、キダ・タローさんの楽曲は親しみ深く、関西人のDNAに擦り込まれているといっても過言ではないでしょう。

「浪花のモーツァルト キダ・タローの ほんまにすべて」  (C)UP-FRONT WORKS

「浪花のモーツァルト キダ・タローの ほんまにすべて」  (C)UP-FRONT WORKS

今こそ聴いてほしい!「浪花のモーツァルト キダ・タローの ほんまにすべて」

2010年にキダ・タローさん生誕80年を記念して制作された、集大成の1枚。テレビ・ラジオ番組の主題歌、CMソング、テーマソング、歌謡曲、計100曲を厳選。あなたの記憶に強く残るキダ・タロー サウンドに出会えるかも。

 

大人から子どもまで幅広い世代の人々に愛された、キダ・タローさん。その所以は、お人柄が垣間見えるトークにもあるでしょう。歯に衣着せぬ物言いながらも、常に知性とユーモアを兼ね備えていて、その姿は、“近所にいる、ちょっとインテリなおっちゃん”のようであり、“子ども心をよく理解してくれている学校の先生”のようでもあり。そして年を重ねてもなお、毒舌の鋭さは衰えず。

キダ・タローさんと笑福亭鶴瓶さん  ※写真は、N-NEXT「無学 鶴の間」より

キダ・タローさんと笑福亭鶴瓶さん  ※写真は、N-NEXT「無学 鶴の間」より

それを強く感じたのが、ニッポン放送パーソナリティとしてもおなじみの笑福亭鶴瓶さんがホストを務める配信番組「無学 鶴の間」。キダ・タロー先生は、第7回のゲストで登場。鶴瓶師匠に舌鋒鋭く斬り込んだかと思えば、90歳を超えてなお、現役作曲家としての意欲をみせる。旧知の仲だからこそ語ることが出来る秘話の数々に抱腹絶倒。「これぞ、神回!」と呼べるコンテンツです。

CMソングやテレビ番組のテーマソング、歌謡曲など幅広いジャンルの楽曲を世に送り出してきたキダ・タローさんですが、学校の校歌や企業の社歌、自治体の市歌も作曲してらっしゃいました。「音楽でニッポンを明るくしたい!」という、キダ先生の願いが込められているのでしょうか。どれも耳にするだけで、元気になるような明るいものばかり。

思えば、キダ・タローさんが生み出す作品はキャッチーさばかりが注目されがちですが、そのインパクトの裏には繊細なメロディーが紡がれており、実はその芳醇な音の重なりこそがキダ・タロー音楽の真髄なのではないかと感じます。

「本当は、モーツァルトよりショパンが好きだった」というキダ・タロー先生。

確かに、キダ先生が生み出された音楽は、熱い血潮が伝わってくる、誰もが愛さずにはいられないものばかりでした。

そして、関西の人気番組「探偵!ナイトスクープ」での最高顧問ぶりをもう観ることが出来ないのも悔しい……。

……と、ここまで書いてきて、いま思い出しました。

私が映画コメンテーターとして初めてレギュラー番組を担当させていただいた時、キャッチコピーが「浪速のシネマアナリスト」だったことを。「なにわ」という文字の違いはあれど、思わぬところでキダ・タロー先生とご縁があったとは。いやはや、光栄の至りです。

キダ・タローさん  ※写真提供:オフィスとんで

キダ・タローさん  ※写真提供:オフィスとんで

改めまして、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

U-NEXT『無学 鶴の間』

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<作品情報>
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連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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