
ソフトバンクは、5月24日の日本ハム戦を「王貞治レガシーデー」と銘打ち、王貞治球団会長が監督時代につけていた背番号「89」のユニホームを全選手が着用して試合に臨んだ。1回に4点を先制されながらも、最終的に7-6での逆転勝利に、9月17日にリーグ3連覇を決めた小久保監督は優勝インタビューで「今年のターニングポイント。ここで我々ホークスの風向きが変わりました」と、そこから上昇気流に乗ったソフトバンクは、約1か月後の6月30日に首位に返り咲くと、そのままトップを譲らなかった。
その〝一大イベント〟に備え、球団は2025年に全国の20歳以上の男女1000人を対象としたWebアンケートを行っていた。調査項目の一つは「ソフトバンクホークスに関して想起される人」で、その設問は「現役選手・OB・監督を問わず、あなたがソフトバンクホークス、ダイエーホークスの顔だと思う人物を1人以上挙げてください」。
調査結果の上位3人は、柳田悠岐22.2% 王貞治21.5% 小久保裕紀8.9%と現役の柳田が、王会長も小久保監督も上回ったのだ。その年齢別データも興味深い。
【20代】【30代】【40代】【50代】【60代以上】
王 7.0 16.0 20.5 28.0 36.0
柳田 31.5 23.5 17.5 17.5 21.0
この結果から読み解けるように、柳田悠岐というスーパースターは〝新時代のホークス〟を代表するスターであることを証明しているのだ。
その柳田、2024年は右太もも裏の負傷で52試合、昨季も右脛骨骨挫傷の回復が遅れたことで、わずか20試合出場にとどまっていた。相次ぐ故障渦、今年10月には38歳を迎えた年齢、さらに2026年は7年契約の7年目契約最終年。かねてから柳田は「契約満了まで突っ走って、その後は人生のセカンドステージ」という〝ライフプラン〟を公言していたから、その去就に繋げる形でも大注目が集まっていた今季は128試合出場、打率.302はパ・リーグ3位で、5年ぶりの打率3割超え。柳田自身が「獲りたい」と意欲を見せていた「カムバック賞」の可能性も膨らんでいる。
まさしく完全復活を遂げた〝ホークスの顔〟だが、これは何も、グラウンドでの存在感ばかりではありません。本拠地・みずほPayPayドーム福岡では、試合開催時に主力選手の名前がついた弁当が販売されている。シーズン前には球団の営業、事業の関係者が弁当の業者を交え、何度となくミーティングを重ねた上で、選りすぐりの10選手ほどをピックアップ。それぞれの弁当には選手の出身地にまつわる食材もアレンジされ、本人の試食も経た上で販売されるという、実に手の込んだ目玉商品。選手の活躍ぶりによってその売上は大きく左右され、2軍降格の場合、販売が一時停止されたりするケースもあるというから、たかが弁当とはいっても、その〝レギュラー定着〟は難しいのです。
しかし、その〝弁当ラインアップ〟でも、柳田の存在感は際立っているそう。肉好きの柳田ゆえに、2026年のメインの弁当は「ギータの和牛特上ロースと厚切り牛タン弁当」で3150円。他の弁当に比べても、ちょっとお値段が張りますが、事業担当者によると「柳田さんの名前で売れます。お肉をいっぱい入れたらちょっと価格が上がったのですが、売れるペースは安定しています」。さらに「ギータのいちごづくしクレープ」は990円。スイーツとしては少々高価格帯に入る商品なのだが「これも売れます」と証言する。
しかも柳田の場合、故障で2軍に落ちようが、試合に欠場しようが、柳田にまつわるメニューは、常に売上1位を争う超人気商品。本人が1軍にいなくても弁当が売れるのは、柳田と今季の本塁打&打点の2冠王・栗原陵矢の2人だといい、その売上は人気と実力を兼ね備えているという証明でもある。弁当開発に関わる球団スタッフは真顔で「柳田さんが引退されたら、本当に困ります。影響は大きいと思います」と語るほどだ。
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JR博多駅の壁画(柳田は2枚目右上)
グッズの売上でも、1軍にいない期間の方が長かった昨季でさえも「常に1、2位。だからMD(マーチャンダイズ)の方でも、柳田さん〝さまさま〟です」と商品開発に携わる球団職員は語る。2024年はケガで1軍不在の時期が長引いたというのに、台湾・台北市政府観光伝播局から「台北市のイメージキャラクター」への就任要請があったという。台湾では日本のプロ野球がTV中継されていることもあって、ソフトバンクの知名度は高く、ソフトバンクにも今季から台湾球界を代表する右腕・徐若熙がプレー。日本球界への関心が高まっている中、柳田に白羽の矢が立ったという。その時はコンディションの問題もあって、イメージキャラクターへの就任は断ったのだが、もはや柳田の人気と知名度は日本の枠を超えての〝アジア級〟。今年2月、チームは台湾遠征を行っているが、台湾の街中に張り巡らされた歓迎のバナーには、柳田の顔面アップの写真のバージョンも多数準備されたという。ただ、宮崎キャンプ終盤に首痛を発症したため、柳田は台湾遠征を回避。台湾で落胆の声は大きかったそうだ。
もはや、柳田が打てば、チームはもちろん、球団の営業サイドや事業関連の方々、さらには、海外に至るまで、誰もが喜ぶという〝幸せの図式〟が描かれているのだ。その「新時代のレジェンド」が挑む、2026年の頂上決戦、日本シリーズは10月24日、DeNAの本拠地・横浜スタジアムでいよいよ開幕する。
2015年6月3日のセ・パ交流戦で、スコアボード上部を直撃する、推定150メートルの超特大本塁打を放ち、打球が直撃した部分を破壊したという〝柳田伝説〟が刻まれた横浜スタジアムでの日本シリーズ開幕。これまで8度のシリーズ出場、通算41試合で159打数51安打の打率.321、5本塁打、21打点の成績は、大舞台での勝負強さを十分に物語っている。
ソフトバンクの2年連続日本一、そして2年前に苦杯をなめたDeNAへのリベンジを期する38歳のパフォーマンスに、日本中、いや、アジアからの熱視線が集まりそうだ。




