ニッポン放送では、2013年10月から半年間、「ニッポン放送開局60周年記念番組『Next Stageへの提言』」を放送し、2013年10月6日の放送で、今年7月に亡くなられた大橋巨泉さんをお迎えしてNext stageへの提言をお聴きしました。
その内容を今回から3回に分けてテキストでお届けします。
大橋巨泉さんは未来に向けて何を提言したのでしょうか。
聞き手はニッポン放送 増山さやかアナウンサーです。
■小倉智昭との出会い、妻との出会いもニッポン放送がきっかけだった
―最初にお伺いしたいのは大橋巨泉さんとニッポン放送についてですが、「大橋巨泉の日曜競馬ニッポン」というのを昭和51年に担当されていたということですが。
大橋巨泉さん(以下巨泉) その前にディスクジョッキーの番組、「巨泉のグリーンドライブ」とかいろいろとやっていました。その1本を新人の放送作家だった阿久悠さんが書いていたんです。初めて来た時にあの字を見て、ふざけた名前つける作家がいるなあと思ったのを覚えています(笑)。
その頃、今のラジオ日本、ラジオ関東の競馬中継にゲストで出たりしていたんです。そうしたらニッポン放送から声がかかって、ニッポン放送も土・日に競馬やりたいと。その頃はハイセイコーの絶頂期の時代で競馬はブームでしたから。
ニッポン放送へ移ってからは、毎週競馬場へ行ってやっていました。当時12チャンネル、今のテレビ東京で競馬放送の司会をしていたのが小倉智昭です。ある昼休みの休憩時間の時に僕の所へ来て、実は壁に突き当たっていると、「僕はこれからどういう道を進んでいいかわからないので話を聞いてくれますか」って言うから、聞いたんですよ。
結局、小倉は独立して大橋巨泉事務所に入って、日曜競馬ニッポンの司会をすることになったんです。
―我々もお世話になりました。
巨泉) 僕の家内と最初に会ったのもこの局でした。昭和43年、1968年に突然ニッポン放送から事務所のマネージャーに土曜日のディスクジョッキーの依頼が来たんです。当時アイドルみたいなことをやっていた浅野順子という子がアシスタントでいて、主として若い人のリクエストを聞く番組なんだけど、どうですかというから、「土曜日は競馬行く日だから…午前中の番組だったんです。それやってから行けばいいから、いいよ」って言ったんです。家内は僕より14年下ですから僕が79になったから今では立派に65になりましたけど、その頃は僕が34歳、家内は20歳だったわけですよ。だから、こっちは子供だと思っていましたから、ロマンスとかそういうことはなかったんです。
結婚してから聞いたら驚いたのは、実はその番組は青島幸男くんとうちのカミさんでやっていたんですって。もし、青島さんの後釜ですって言ったら、僕が断るに決まっているじゃないですか。それでなくても自分の番組しかやらないと宣言していた男ですから。ですからニッポン放送と、そのアシスタントの女の子とうちのマネージャーがグルになって嘘ついたんです(笑)。
■一番、愛着のあった番組「大橋巨泉の日曜競馬ニッポン」
巨泉) 一番愛着があった番組は「日曜競馬ニッポン」ですね。
―どのくらいの期間されていたのですか?
巨泉) ずいぶんやりましたよ。10年じゃきかないんじゃないかな?
―その当時の競馬も人気があってご自分で馬券買ったりしてなさっていたのですか
巨泉) 僕は競馬関係者で唯一競馬で家を建てたとしたら僕しかいないんです。自分の法則を作って、馬券はめったに買わない。
―そうだったんですね。
巨泉) ええ、一日1レースか2レースしか買わない。そのくらいに絞ると当たるんですよ。買えば買うほど当たるということではないんです。これが一番重要なのですが、馬券というのはダービー、天皇賞も、未勝利レースも同じなんです。ダービーだから高くつくってことはないんですよ。取れそうなレースというのは未勝利だろうが障がいだろうが、あるんです。かえって、有名な大きなレースは難しいということがあるんですよ。だから、平気で有名なレースは買わない。一番取れそうな2レースや3レースの未勝利のレースに狙いをつけてそれを取るんですよ。取ったら、もう買わないんです。その日の収入ですから。
―調子に乗って次のを買ったりはしないんですね。
巨泉) そうすると最後ゼロになるか、マイナスになっちゃう。では取れなかったらどうするかというと、「あ、今日はついていないからやめちゃおう」ってやめちゃうんです。
いずれにしてもほとんど馬券は買わないです。
どうするかっていると、本持っていくんですよ。それじゃなくても競馬好きですから、パドック見て、返し馬見たら「あ、あれよさそうだな」となって、買いたくなるんですよ。買わないで本読んだり、記録つけたりするんですよ。競馬と馬券って違うんですよ。
―競馬と馬券の違いは?
巨泉) 馬券の買いのうまい下手と競馬の好き嫌いは別なんです。巨泉はあまり競馬好きじゃなくて記録着けたり本読んだりしていてギャラ稼いでいたのかというと、とんでもない、その記録つけていたのは、全出走馬の過去の成績とか血統とか調教だのをつけているんです。
―競馬新聞に書いてあるような情報ですか。
巨泉) それを僕流に詳しく、もっと科学的に。毎レース馬券は買わないけど見るんです。「競馬はロマンで見ろ、馬券は金で買え」という言葉があるんですよ。ホント、至言ですね。