障がい者スポーツの存在を知ってもらえば、生きがいになって人生が変わっていくということもあると思うのです。 【清水朋美(国際クラシファイヤー・眼科医) インタビュー】

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ニッポンチャレンジドアスリート
このコーナーは毎回一人の障がい者アスリート、チャレンジドアスリート、および障がい者アスリートを支える方にスポットをあて、スポーツに対する取り組み、苦労、喜びなどを語ります。

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清水朋美(しみずともみ)
1991年、愛媛大学医学部卒業。93年、バーバード大学医学部に留学し、帰国後、眼科医に。
2009年から埼玉の国立障害者リハビリテーションセンター病院に勤務するかたわら、障がい者スポーツのクラス分けを担当する日本初の国際クラシファイヤーとして国内だけでなく、世界でも活躍している。

―そもそも清水が眼科医になった理由とは?

清水朋美(以下清水) 私の父親がベーチェット病という病気で失明していまして、私が生まれた時から失明しているので、その父を見て小さい時から眼科医になろうと思っていました。それが実現してしまったというのが一番の理由です。

―2009年、埼玉の国立障害者チハビリテ―ションセンター病院で眼科医として勤務することになった清水、最初から障がい者スポーツに関心はあったのだろうか?

清水 正直、あまり知らなかったです。ただ、2009年の1月に東京でパラユースゲームズという国際大会が予定されていて、私が国リハ(国際障碍者リハビリセンター病院)に着任する前から障がい者スポーツ医を取るという話があって、当時は言われるがままに講習会を受けたという経緯があります。

―資格を取って半年後、清水はさっそく障がい者スポーツ医として国際大会に駆り出され、クラス分けを行った。清水が担当した競技はゴールボール、アイシェードと言われる目隠しをつけて行うスポーツだが、視覚障害の度合いは厳しく判定される。

清水 視覚のクラスは大きく3つに分かれています。B1からB3、数字が少ないほうが障がい程度が重いのですが、逆に一番障がい程度の軽いB3、それよりも視機能のいい方はNEという扱いになって、そこに該当する視機能の方は出場できません。仮に日本の視覚障害の手帳を持っておられる方であってもNEに入ってしまう方もいらっしゃいます。というのは国際クラス分けの基準と日本の視覚障害の手帳の基準がまったく違うんですね。

―NEとは不適格の意味。クラス分けで最も悩ましいのは競技に出場できるB3と出場できないNEの境界線上にいる選手を判定する時だ。

清水 本当にボーダーラインの方は時々いらっしゃいます。明らかな病弊もなかったりして、検査データを見てもそこまで悪いわけではないけど、というような場合に大会に行かれるのはもちろん行けるかもしれないけど、ひょっとしたらNEになるかもしれないということは含みとしてお伝えすることもあります。

―現地への旅費は出るが、ほぼボランティアに近い国際クラシファイヤー、清水もそうだが、皆、本業の合間を縫って活動しているので悩みも多いという。

清水 みんなそれぞれ本職があって、なんとか時間を捻出しているので、職場から理解が得られないだとか、集まるたびにみんなどうしているというような話になることもあります。

―現在、日本には何人の国際クラシファイヤーがいるのか?

清水 今、クラシファイヤーは国内に4人います。

―クラシファイヤーを増やすことも障がい者スポーツ発展のためには必要だ。清水は国際クラシファイヤーとして活動したことでいろいろ気付いたことがある。

清水 この仕事を通して思うのですが、日本人と他の国の選手たちとでは目の病気が全く違うんです。日本は小さい時から子供の検診もあるし、遠視のめがねをかけて視力を矯正して、大きくなって弱視にならないようにしますが、国によってはそういうことがないところもあるようです。そういう方はだいたいB3に入ってきます。国によってはそういう方がたくさんいらっしゃいます。

―時には判定に納得がいかない選手サイドからプロテスト、講義を受けることもある。特に競技に出られるB3なのか、出場できないNEなのか、その判定はボーダーライン上にいる選手にとって死活問題だ。

清水 ブラインドサッカーのようにチームでやるようなスポーツでは、一人がNEで出られなくなるとチームが組めなくて困るということはあります。そのプロテストというのはお金を払ってもう一度検査をしてもらうというシステムなんです。だけど、クラシファイヤーの立場からするとプロテストというのはないほうがいいです。NEと診断したことは何度もありますが、NEは選手も泣いてしまうし、関係者の方々もがっかりするのですが私たちは決められたとおりにやるだけなのでどうしようもないのです。NEだけは避けたいですね。

―会場に来てからNEの判定を受ける選手を出さないために清水はこんな提案をしている。

清水 競技団体の関係者に言うのですが、現地まで行ってNEと判断されてしまったら、みんなが悲劇になるから日本代表で選ぶ前にその人がNEじゃないか一回チェックしてから鍛えたほうがいいですよとよく言います。

―清水はクラス分けが出来る眼科医を増やすための活動にも取り組んでいる。

清水 国際クラシファイヤーにならなくてもいいのですが、眼科医の中で視覚障がい者のスポーツをご存じの方ってまだまだ少ない。眼科の中でもロービジョンケアという領域があって、いよいよ見え辛い方がいろいろな道具などを使って見えやすく生活できるかなどと全体的にケアするのがロービジョンケアなのですが、そういうロービジョンケアをやっている眼科医の方々もまだ視覚障がい者スポーツのことを知っていらっしゃらない方が多いです。もし、眼科の先生方が知っていただければ必ず視覚障がいの方はどこかの眼科には絶対に行っているはずなので、こういうスポーツありますよと教えてあげればそれがきっかけでその方の生きがいになって、変わっていくということもあると思うのです。

(2016年8月8日~8月12日放送分より)

ニッポンチャレンジドアスリート
ニッポン放送 毎週月曜~金曜 13:42~放送中
(月曜~木曜は「土屋礼央 レオなるど」内、金曜は「金曜ブラボー。」内)
番組ホームページでは、今回のインタビューの模様を音声でお聴き頂けます。

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