11/19は山口百恵・三浦友和夫妻の結婚記念日【GO!GO!ドーナツ盤ハンター】

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昨今のアナログ盤ブームで、改めて注目されているのが歌謡曲のレコード(ドーナツ盤)。
デジタル音源より音に厚みがあり、またCDでは味わえないジャケットの大きさも魅力の一つ。
あえて「当時の盤で聴きたい」と中古盤店を巡りレコードを集めている平成世代も増えているようです。

ジューンブライドという言葉がありますが、日本で一番結婚件数が多い月は、実は6月ではなく11月なのです。暑くもなく寒くもなく、祝日も2回あってちょうどいい、というのがその理由ですが、そういえば山口百恵・三浦友和夫妻の結婚式も1980年11月19日、ちょうど今頃でした。当時、山口百恵はまだ21歳。「そんな若かったっけ?」とつい思ってしまうのは、彼女が大人びた名曲ばかり歌っていたからでしょう。
今なお、引退を惜しむ声も多いですが、レコードならジャケットとともに当時の歌声が甦ります。1973年のデビュー曲『としごろ』から、挙式当日にリリースしたラストシングル『一恵』まで、32枚のシングル盤の中から、ぜひ持っておきたいレコードをピックアップしてみましょう。

【ビギナー向け】・・・『横須賀ストーリー』(1976)

横須賀ストーリー,山口百恵

初期の山口百恵を楽曲面で支えたのは千家和也・都倉俊一コンビでしたが、
まさに大人の階段を上っていった後半を支えたのは、阿木燿子・宇崎竜童の夫婦コンビです。二人は全32枚中、13枚のシングルを書き下ろし、そのすべてが百恵のキャリアにとって重要な曲になりました。中でも、最初の提供曲となったこの曲は、歌謡ファンなら必携、持っているべき一枚です。
阿木・宇崎コンビが百恵に初めて曲を提供したのは、本曲の発売に先立つこと2ヵ月前、76年4月発売のアルバム『17才のテーマ』に収録された3曲でしたが、このとき一緒に作られたのが『横須賀ストーリー』です。百恵の出身地でもある横須賀を舞台に織り込んだ本曲も、本来はこのアルバムに収録されるはずでしたが、出来が良かったため、別途シングル曲としてリリースされることに。そもそも二人が曲提供することになったのも、当時の楽曲に飽き足らないものを感じていた百恵自身の意向だそうで、『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』を聴いて「この人たちだ!」と思ったのだとすれば、そのセンスには脱帽するほかありません。しかも、当時まだ17歳ですよ…。
冒頭の「これっきり、これっきり…」のフレーズは、当時流行語にもなりましたが、『冬の色』以来1年半ぶり、通算2枚目のオリコン1位獲得曲となり、
80万枚を超す大ヒットを記録しました。まさにターニングポイントとなった本作から、山口百恵は大人の歌手へと脱皮していくのですが、そのパートナーを選んだのは、事務所でもレコード会社でもなく、百恵自身なのです。本曲、入手は非常に容易で、300円以内で手に入ると思います。

【上級者向け】・・・『夢先案内人』(1977)

夢先案内人,山口百恵

山口百恵のオリコン1位獲得曲は意外に少なく、先に挙げた『冬の色』『横須賀ストーリー』『パールカラーにゆれて』と、本作の4曲だけです。百恵の全盛期に当たる70年代後半は歌謡曲黄金時代、それだけ他にも名曲が多かったということですが、個人的にはこの曲が百恵のベスト1だと思いますし、実際今でもラジオへのリクエストが多い曲です。
好きな男性との、月夜のゴンドラでの逢瀬。そして迎えた朝は、ビロード製の幕を上げて、水の表面を鏡にしていく…なんて美し過ぎる風景描写。これをサラッと歌っていく百恵の歌声が、またいいのです。そんなウットリするような展開の後、「…そんな夢を見ました」って、結局夢オチかい!と言うなかれ。主人公の女性が夢の中で逢った男性は、憧れているけれど声を掛けられない存在なのか、さらに深読みすると、何らかの事情でもう二度と逢えなくなってしまった人のことなのか…明るく歌っていますが、そんな切なさがそこはかと漂ってくるあたりが、常に翳りを帯びた百恵らしいところです。
髪をかき上げるジャケットの表情がまた素晴らしく、『横須賀ストーリー』同様、撮影は篠山紀信です。中森明菜が『スタ誕』の決戦大会でこの曲を歌い、デビューを勝ち取ったのは有名な話ですが、彼女も翳りの似合う歌手。この曲を選んでスターになったのは、偶然ではなかった気がします。

【その他、押さえておきたい一枚】

『としごろ』(1977)

としごろ,山口百恵

記念すべきデビュー曲。当時のキャッチフレーズは「人にめざめる14才」。まだ少女のあどけなさを残したジャケ写は貴重。価格は1,000円以上。

『美・サイレント/曼珠沙華』(1979)

美・サイレント,山口百恵

阿木耀子の「伏せ字口パク」の過激な歌詞で話題に。B面の『曼珠沙華』も名曲の誉れ高く、持っておきたいおトクな一枚。

【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5,000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。

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