広島といえば吉田拓郎【GO!GO!ドーナツ盤ハンター】
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昨今のアナログ盤ブームで、改めて注目されているのが歌謡曲のレコード(ドーナツ盤)。
デジタル音源より音に厚みがあり、またCDでは味わえないジャケットの大きさも魅力の一つ。
あえて「当時の盤で聴きたい」と中古盤店を巡りレコードを集めている平成世代も増えているようです。そんなアナタのために、ドーナツ盤ハンター・チャッピー加藤が「ぜひ手元に置きたい一枚」をアーティスト別・ジャンル別にご紹介していきます。
いよいよ今日22日から、日本シリーズが開幕します。25年ぶりのリーグ優勝に続いては、32年ぶりの日本一を目指す広島カープ。引退を表明した黒田投手のラスト登板、二刀流・大谷との対決もあって、広島の街は大いに盛り上がると思いますが、広島出身といえばこの人を忘れてはいけません。吉田拓郎です。エレック→CBSソニー→フォーライフと、アナログ時代は3つのレーベルを渡り歩いた拓郎。是非持っておきたい一枚をご紹介していきましょう。
【ビギナー向け】・・・『結婚しようよ』(1972)
拓郎のシングルで最も売れたのは『旅の宿』(1972)ですが、いろんな意味で持っておきたいのが、その前作『結婚しようよ』です。CBSソニー移籍第2弾で、まだディラン臭が抜けていなかった第1弾の『今日までそして明日から』に比べ、詞曲とも実にポップで軽やかです。
この曲は「フォークをメジャーにした」とよく言われますが、拓郎はそもそも、そんなカテゴライズなどどうでも良く、自分がメジャーになりたいから、敢えて売れ線の曲を書き、それを達成しただけのことです。まだメッセージ性がどうのこうのと言っていた時代に、「いつまでそんなコト言っとるんじゃワレ!」と堂々と宣言したこと、それがこの曲の最大の意義でしょう。
大ヒットをアシストしたのが、編曲を担当した加藤和彦。そういえば彼がいたザ・フォーク・クルセダーズも、フォークの範疇を超越したグループでした。天才トノヴァンの素晴らしいポップセンスを味わう意味でも、持っておきたい一枚です。入手は非常に容易で、100円コーナーでもよく見掛けます。
【上級者向け】・・・『イメージの詩』(1970)
大阪万博の年にエレックレコードから発売された、記念すべき拓郎のデビューシングルです。元々は拓郎が参加していた「広島フォーク村」のオムニバス盤に入っていた曲ですが、エレックははじめこの曲を、拓郎本人に断りなくシングルカット。それも凄い話ですが、しかも6分半近くあるオリジナル音源を勝手に4分弱に縮めるなど、編集も雑だったため拓郎は回収を要求。さらにレコーディング自体をやり直し、再リリースしています。つまり、このデビューシングルには無許可盤、再録盤と、ヴァージョンが二つあるわけです。一番の違いは、再録盤にはドラムが入っています。
無許可盤はそもそも売れていない上に、途中で回収されたので、かなりレア。ン万円の価値があります。私が持っているのは再録盤ですが、こちらは1,000円〜2,000円ぐらいで入手可能です。
【その他、押さえておきたい一枚】
『シンシア』(1974)
かまやつひろしとのコラボ曲。南沙織をモデルに『早春の港』へのアンサーソングとして発表。イラストのジャケットも貴重。
『となりの町のお嬢さん』(1975)
フォーライフ移籍第1弾シングル。この曲から名前の表記を「吉田拓郎」と漢字に変更。
【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5,000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。