この人もデビュー40周年“世良公則”【GO!GO!ドーナツ盤ハンター】

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昨今のアナログ盤ブームで、改めて注目されているのが歌謡曲のレコード(ドーナツ盤)。
デジタル音源より音に厚みがあり、またCDでは味わえないジャケットの大きさも魅力の一つ。
あえて「当時の盤で聴きたい」と中古盤店を巡りレコードを集めている平成世代も増えているようです。
そんなアナタのためにドーナツ盤ハンター・チャッピー加藤が「ぜひ手元に置きたい一枚」をアーティスト別・ジャンル別にご紹介していきます。

アーティストにとって「周年」は大事な節目。今年はジュリーのデビュー50周年というメモリアルイヤーだったりしますが(また改めて特集します)、そうか、この人もデビュー40周年か…と思ったのが、世良公則です。
ツイストのリードヴォーカルとして、激しいアクションと共に“ロック演歌”と呼ばれた曲をシャウトしながら歌う世良。その姿に魅了されたのは、なにも女性だけではありません。実際、私の同級生にもいたのですが、ツイストを見てバンドを始めた少年たちも実は多く、テレビ出演を厭わなかった彼らは、ロックを世に広め、その一般化に大きく貢献しました。その割に、ロックシーンを語る際、彼らの功績が軽視されがちなのはどうしたことでしょうか?
そんな意味でも、デビュー40周年で、再びツイストの楽曲に光が当たるのはたいへん喜ばしいことです。きょうは彼らのシングル曲の中から、ぜひ当時のレコジャケ込みで手元に置きたい名曲をピックアップしてみましょう

【ビギナー向け】・・・『性』(1978)

性

ツイストの初期シングルは、私に言わせればすべて必携の一枚ですが、どうしても一枚選べと言われたら、迷いなく本作を挙げます。『あんたのバラード』(1977)『宿無し』『銃爪(ひきがね)』(以上1978)に次ぐ第4弾シングルで、前3作は「世良公則&ツイスト」名義でしたが、この曲から単に「ツイスト」に改名。このユニット名変更は、自分のワンマン色を薄めつつ、よりバンドの色を濃くしようという、世良の強い意志によるものです。
世良の詞世界が独特なのは、一人称&二人称が「あなた」と「私」ではなく、「あんた」と「あたい」であること。これは『あんたのバラード』から一貫しているのですが、「成人(おとな)」のあんたと「小娘(おんな)」のあたいが織りなす激しい一夜の恋。でも本気で惚れちまうのが女の性(さが)…漢字の当て方含め、この辺の言葉遣いはまさに世良流で、演歌的というよりブルースの匂いを強く感じます。いずれも大ヒットした前3作のエッセンスを煮詰めて、よりブルース色を濃くしたのが本作と言えるでしょう。サビの「ボウウォウ!ボウウォウ!ボウウォウ!」の叫びは、ぜひアナログ盤で味わっていただきたいと思います。200円前後で入手可能。

【上級者向け】・・・『LOVE SONG -Please listen to my song-』(1980)

LOVE SONG

世良の名前を外し「ツイスト」に改名後、人気は徐々に下降線を辿っていった彼らですが、これは7枚目のシングル。ベストテン番組に登場するのは、結果的にこの曲が最後になりました。しかしセールスはともかく、後期ツイストを代表するバラードの傑作です。
ロックスターは売れると、長年付き合っていた女性をボロ雑巾のように捨て、若い美女のもとに走る…そんな方程式がありますが、硬派で鳴らした世良は違います。恐らく数え切れないほどの美女が寄ってきたと思いますが、高校時代から交際していた女性を愛し続け、そのままゴールイン。当時まだ彼女だった愛妻に、プロポーズの言葉代わりに捧げたのが本曲です。
離れ離れの体でいても、心はひとつ。忙しくて、大っぴらに逢えないもどかしさはあるけれど、俺のラブソングを聴いてくれ…一つ間違うと「なにクサいこと言ってんだ?」ですが、常に真っ直ぐをド真ん中に投げ込んできたエースの矜恃が、世良のヴォーカルには感じられます。(ちなみに世良は広島出身、熱狂的カープファンです。)
同じ80年にリリースされた9枚目のシングル『レイディ』と双璧を成すこのレコード、ぜひセットで持っておきたいところです。初期作品より若干手に入れづらいですが、それでも500円前後で入手できるかと。

【その他、押さえておきたい一枚】

『あんたのバラード』(1977)

あんたのバラード

記念すべきメジャーデビュー曲。ポプコングランプリ受賞メンバーと実際デビューしたメンバーは異なるが、レコードの演奏は旧メンバー。

『銃爪(ひきがね)』(1978)

銃爪
ツイスト最大のヒット曲。『ザ・ベストテン』で10週連続1位の金字塔。これで「ひきがね」と読ませるところが世良流。チュナイチュナイ!

【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5,000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。

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