深みのある歌声は健在。復活!中森明菜【GO!GO!ドーナツ盤ハンター】

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昨今のアナログ盤ブームで、改めて注目されているのが歌謡曲のレコード(ドーナツ盤)。
デジタル音源より音に厚みがあり、またCDでは味わえないジャケットの大きさも魅力の一つ。
あえて「当時の盤で聴きたい」と中古盤店を巡りレコードを集めている平成世代も増えているようです。

12月はディナーショーの季節ですが、今年の話題は何と言っても、久々のライブ復帰を果たした中森明菜です。高額のチケットが即日完売。彼女の歌声を待ち望んでいた人たちがいかに多いか、改めてその人気の高さを再認識しましたが、その深みのある歌声は、ぜひレコードで聴いてほしいものです。きょうはアナログ盤時代の、ぜひ持っておきたいシングルをご紹介しましょう。

【ビギナー向け】・・・『スローモーション』(1982)

スローモーション,中森明菜

記念すべきデビューシングルですが、最初から来生えつこ・たかお姉弟の曲をアテたところに、レコード会社(ワーナーパイオニア)側の期待度の高さを感じます。さらにディレクターからは「歌の上手い子なので、難しい曲でも大丈夫ですから」という発注があったそうですが、姉弟ともに遠慮なく難曲、かつ名曲を創ってくれました。
だけどその「無茶振り」に応え、サラッと歌いこなした明菜は当時まだ16歳。何なんですかね、初っぱなからこの風格は?やはり1982年デビュー組の中では、頭5つぐらい図抜けてました。
大橋純子が好きだった明菜にしてみれば『シルエット・ロマンス』を書いたコンビにデビュー曲を書いてもらったことは望外の喜びだったと思いますし、当然第2弾も来生姉弟…と思いきや、ご存じの通り実際出たのは『少女A』
先にいわゆる「ツッパリ路線」で売れてしまったのは、果たして本人にとって幸せなことだったのかどうか、それは分かりませんが、本来の資質に沿っているのは絶対に『スローモーション』であり、この曲が出発点だったからこそ、同じ来生コンビによる不朽の名曲『セカンド・ラブ』が生まれたのは、疑いのない事実です。
なお本作、実はジャケットがもう1種類あり、通常盤(写真のもの)は200円前後で割と楽に手に入りますが、たまにオークションで見掛ける別ジャケは出物が少なく、1万円以上で落札されていたりします。

【上級者向け】・・・『赤い鳥逃げた』(1985)

赤い鳥逃げた,中森明菜

このシングル、実は12インチ盤で、ドーナツ盤は出ていないレアアイテムです。松岡直也によるこの曲、一度聴いてもらえればすぐ分かりますが、レコ大受賞曲『ミ・アモーレ』とまったく同じ。歌詞とタイトルが違う別ヴァージョンで「異名同曲」なのです。
作詞はどちらも康珍化。先に書いたのは『赤い鳥逃げた』の方で、つまり本作の詞は一回ボツになったものです。その理由は定かではありませんが、ちょうどその頃ブームになっていた12インチ盤リリースの話が来た際、「そっちに元の歌詞を使おう」ということになり、無事陽の目をみました。明菜本人もよくライヴで歌ったりしていますが、もし『ミ・アモーレ』と両A面扱いでリリースしていたら果たしてどうなったんでしょう?意外とこちらの方がレコ大を獲っていたかもしれませんよ。
割と出物は多いので、入手はそんなに困難ではないと思います。500円〜状態のいいもので1,000円ぐらい。これも別ジャケがあり、そちらは少し値が上がります。

【その他、押さえておきたい一枚】

『セカンド・ラブ』(1982)

セカンド・ラブ,中森明菜

初のオリコン1位曲。その後もライヴで歌い継いだ初期明菜の金字塔であり、来生姉弟のマスターピース。17歳でこの歌唱力には驚嘆。

『難破船』(1987)

難破船,中森明菜

元々加藤登紀子のアルバムの曲だったが、おトキさんが明菜に「これはあなたが歌うべき」とプレゼント。紅白でも熱唱。

※なお来週12/17(土)FM93・AM1242 ニッポン放送『八木亜希子 LOVE & MELODY』(毎週土曜朝8:30〜)の『10時のグッとストーリー』のコーナーでは来生えつこさんに伺った『セカンド・ラブ』創作秘話をご紹介します。ご本人から貴重なお話が聞けましたので、ぜひお聴きになってください。

【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5,000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。

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