3/2(木)ニッポン放送イマジンスタジオで音のバリアフリースピーカー「ミライスピーカー®」を試聴しながら、、高齢者、難聴者、そして健聴者にも聞こえやすい “音のバリアフリー社会の実現”について考えるイベントを実施しました。
「ミライスピーカー®」は「蓄音機の音は聞きやすい」という高齢者の声をヒントに㈱サウンドファンが開発。
一点の音源から発せられる従来のスピーカーとは異なり、曲面の振動板全体で音を発生させる『曲面サウンド』という技術(特許取得)により音波が拡散しないで耳元まで届き、遠く離れた場所まで明瞭に聞こえる新しい音が実現し、多くの方の「聞こえ」をサポートします。
老人ホームにおいて実施した実証実験でも8割の方が「聞こえやすい」と回答しています。
すでに介護施設のほか、金融機関や空港、地方自治体などでも導入されています。
一方、日本人の約11%が難聴またはおそらく難聴だと感じ、74歳以上ではその割合が42%まで上がり(2015年一般社団法人日本補聴器工業会調べ)、高齢化社会により加齢性難聴者はさらに増えると予測されます。
また、2016年4月施行の障害者差別解消法により「音のバリアフリー」への対応が官民共に急がれ、まもなく6年が経過する東日本大震災の教訓からも、災害時に音の障壁を取り除くことは、社会全体で考えるべきテーマとなっています。
こうした背景から今年1月、㈱産経新聞社と㈱ニッポン放送が㈱サウンドファン(「ミライスピーカー®」開発元)と「音のバリアフリー社会実現プロジェクト」を発足。
最初の取り組みとして「ミライスピーカー®」を活用した今回のイベントを開催しました。
司会は上柳昌彦ニッポン放送アナウンサー。
「音のバリアフリー社会を考えるトークショー」には、佐藤和則サウンドファン社長、河合雅司産経新聞論説委員、会社員で聴覚障害をお持ちの熊谷朱美さんが出演。
河合氏からは、難聴者の現状の紹介がありました。
難聴者の数は、実態が把握されておらず、自己申告では1400万人と言われており、国民の10人に一人が難聴者となります。補聴器は200万人利用しており、聴覚障害認定が45万人となっています。年齢別では、75歳以上が多く、高齢化問題の一つとして難聴問題あります。聴覚障害には、いろいろな原因があり、さらに、障害の程度より軽度難聴から重度難聴まであります。このような聴覚障害には、いろいろなツールが必要となっており、特に、災害時が音が重要にななります。危険を早く察知することで、被害を防ぐことができるからです。聴覚障害に関しては、日常だけでなく、非日常の災害時も考えるべきです。
熊谷氏からは、聴覚障害者として困る点などお話していただきました。
現在、左耳はまったく聞こえない状態で、右耳に補聴器を付けていますが、補聴器がないと聞こえない状態です。人と会話する場合、一人がしゃべっている場合は聞こえますが、複数人数の会議だと聞こえなくなります。利用している補聴器は、乾電池で2週間持ちます。充電式もありますが、補助で購入できる補聴器の種類が限られています。補聴器の問題としては、人間の耳は集中すると一つの音に集中できますが、補聴器は全て聞こえてしまうため、複数の会話や、雑踏などノイズのあるシーンでは聴きにくいということがあります。例えば、電車のアナウンスが聞こえなかったり、駅員さんの説明する遅延情報など聴こえににくくなります。また、最近のエンジン音が小さいハイブリッドカーは車が近づいても聞こえません。
河合氏からは東日本大震災の際の聴覚障害者のエピソードの紹介がありました。
東日本大震災に聴覚障害者の被災者にお話をお伺いしました。地震発生時、津波警報が聞こえず、津波がくると思わなかったそうです。健常者に津波警報のことを教えてもらい、逃げたら、家が流されました。
また、避難所は雑音が多く、配給品など情報がわからりませんでした。被災地では、他の被災者の方も余裕がないため、障害者をカバーしてくれる人がいないそうです。また、健常者に助けを言い出せないこともあり、バリアがありました。避難所では、補聴器の電池が切れたり、充電式補聴器ではコンセントがなく充電できないそうです。補聴器は、寝ているときに使うと壊れやすいが、情報入手のためには寝ている間につける必要があります。災害対策は一般の方対応になってしまいますが、障害者対応が必要なです。
佐藤氏からは、今回の「ミライスピーカー®」のメリットの説明がありました。
「ミライスピーカーR」は、電車の中のスピーカーとして利用することで、アナウンス聴きやすくなる。距離減衰が少ないく、遠くに音が届くためです。スピーカーはウーハーで振動して伝えるため、距離で減ってしまい、音が聞こえなくなります。特に高音が減衰します。小さな音で遠くまで伝える。「ミライスピーカーR」の特徴です。災害時のアナウンス、病院の待合室のアナウンス、電車中のアナウンスで音が伝わります。
佐藤氏から、「ミライスピーカー®」の開発経緯の説明がありました。
3年半、名古屋学院大学増田さんが、難聴者の方に、音楽療法をしているときに、通常のオーディオスピーカーは聞こえにくいことがありました。増田さんが蓄音機のコレクターということもあり、蓄音機による音楽再生をしたところ、よく聞こえたそうです。蓄音機のラッパから出る音が難聴者が聞きやすいことがわかりました。電気はなしで振動だけで伝える仕組みで楽器と同じです。楽器の中で、昔のラッパは、まっすぐな板を曲げていましたので、それに着目して、曲げた板を利用することにしました。
実際に難聴者である自分の父に使ってもらったところ、テレビの音量を大音量にしなくても、聞こえるようなりました。
この曲げた板により、音が聞こえやすくなることは、今まで理由が解明されておらず、特許申請もされていませんでした。2年間の開発期間でデータを少しずつ集めると、7割の難聴の方が聞こえやすくなることがわかりました。
例えば、バイオリンはピアニシモなど小さな音でも届きます。これは、倍音で音に厚みができ、音の体積、エネルギーが大きくなるためです。電気を使わない楽器は全て形が丸くなっており、倍音が出ています。古くから、曲げた板により音が遠くに届くことは、楽器により実現されていましたが、その理由が研究されていませんでした。「ミライスピーカー®」は、楽器スピーカーの要領で、音が聞こえやすくなっています。
ここで、イマジンスタジオで、「ミライスピーカー®」の技術デモが行われました。小さなオルゴールの音をそのまま再生すると、会場内では全く聞こえませんが、丸く折り曲げたプラスチック版を宛てるだけで、会場内隅々まで聞こえます。
また、上柳アナウンサーの声を、通常のスピーカーだけ流す方法と、「ミライスピーカー®」を一緒に組み合わせた方法にて、聴き比べを行いました。あきらかに「ミライスピーカー®」と一緒に再生した方が聞こえやすくなります。音量はアップしていませんので、音の届き方を実感することができました。
佐藤氏より、「ミライスピーカー®」の実際の利用例の説明がありました。
現在、実際に使われている場面としては、羽田空港JALカウンターがあります。最終案内のトラブルが激減。搭乗15分前アナウンスが良く聞こえるようになっています。
野村証券セミナールームでは全国で利用されています。通常のスピーカーと併用することで難聴者が聞きやすくなっています。
りそな銀行など受付システムの番号札の発券機のカウンター呼び出し用で使われています。利用客が早くカウンターに来るようになりました。
タイ警察病院の耳鼻咽喉科の受付に設置されて、呼び出し回数が少なく、受付カウンターに患者が来るようになったそうで、病院の時間の効率化に役立っています。
来場者からは、「ミライスピーカー®」を自宅で活用する方法や、聞こえやすさの数量化など、積極的な質問があり、関心度の高さを感じられました。
補聴器メーカーの方からも、テレビの音が聞こえにくい場合など、補聴器と「ミライスピーカー®」を組み合わせたい、という提案がありました。これに対し、佐藤氏から、以下の発言がありました。
「ミライスピーカー®」は、聞こえやすさを実現するツールになっていますが、聞こえやすい環境は、「ミライスピーカー®」だけで作るものではありません。いろいろなツールと組み合わせることで、音のバリアフリーの世界を実現したいと思っています。
最後に、河合氏より、将来の社会についてコメントがありました。
これから、どういう社会がくるのは考える必要があります。何年か先は、二人に一人が高齢者。みんなが支えあう社会にするために、このような技術が必要となります。
これからの高齢化社会に向けて、「ミライスピーカー®」のような技術が活用される社会になることの必要性が感じられたイベントでした。
■音のバリアフリー社会実現プロジェクト
㈱産経新聞社と㈱ニッポン放送は、オーディオメーカーの㈱サウンドファンと共同で、難聴者にも健聴者にも聞こえやすい環境づくり="音のバリアフリー社会"の実現について考えるプロジェクトを今年1月に発足しました。
難聴者、加齢性難聴者、そして健聴者、誰もが聞こえやすい環境を社会全体で考えていこうというもので、どんな場面で"音のバリア"が存在するのか、まずは検証します。
公共の場や家庭内でできる工夫、また災害時の対応などについて考え、今後はミライスピーカー®を搭載した「防災ラジオ」の開発などを3社共同で進める予定です。