【大人のMusic Calendar】
1968年9月~10月にかけて太平洋ツアーを敢行したモンキーズは、オーストラリア公演終了後に来日。今から49年前の今日10月3日・4日は、モンキーズ初の日本公演が日本武道館で行なわれた日である。武道館公演の後、モンキーズ御一行は関西に移動し、京都会館(5日)と大阪フェスティバルホール(7日・8日)で公演。9日に帰国という日程だった。
この来日公演の際にオープニング・アクトを務めたのが、68年2月に結成され、のちにエイプリル・フール(細野晴臣、松本隆が在籍)の母体となったフローラル(小坂忠、柳田ヒロが在籍)と、「太陽の剣」でレコード・デビュー直前だったブルーインパルス、フローラルと同じ68年8月に「ブルー・エンジェル」でレコード・デビューしたポニーズの3グループ。
特にモンキーズ・ファンクラブ日本支部のマスコット的存在だったフローラルはオープニング・アクトだけではなく、3曲ほどモンキーズのバッキングも手がけている。このエピソードが針小棒大に膨らみ、いつしかモンキーズ来日公演でメンバーたちは楽器を弾くパントマイムを演じただけで、すべてステージ裏でフローラルが演奏していたという都市伝説が生まれるに至っている(今でもこの説を信じている人は意外に多いようだ)。
フローラルのキーボード奏者だった柳田ヒロ氏の証言によると、たしかにミッキー・ドレンツはスネアを叩きながらバスドラを踏めないという演奏技量だったらしいが、他のメンバーたちはミュージシャンとしてしっかりとした力量を持っていたそうだ。そういえば、ミッキーがセンターに立って歌い、デイヴィ・ジョーンズがドラムを叩いてるシーンを何度か観たことがあるが、あれはそんな裏事情があったのかもしれない。
筆者はモンキーズ公演を実際には体験していないが、武道館公演の模様はTV『ザ・モンキーズ』(TBS系)のスペシャル版『モンキーズ・イン・ジャパン』として、68年10月11日・18日の2週に亘り放送されており、当時筆者も観ている。しかし、女の子たちの凄まじい嬌声と泣きわめく姿に圧倒されて、肝心のモンキーズの演奏に関しては、あまり記憶が無い。そんなわけで、実際に生で公演を体験した人や関係者たちからいろいろ話を聞いた調査結果をまとめると、モンキーズ来日公演のセットリストは、大よそ下記のようなものだったらしい。
1.恋の終列車
2.サニー・ガールフレンド
3.自由になりたい
4.D.W.ウォッシュバーン
5.デイドリーム
6.セールスマン
7.カドリー・トイ
8.スィート・ヤング・シング
9.メリー・メリー
10.<ソロ・コーナー>
1)ジョニー・B・グッド/マイク・ネスミス withフローラル
2)アイム・ゴナ・ビルド・ア・マウンテン/デイヴィ・ジョーンズwithフローラル
3)曲名不明/ピーター・トーク(バンジョー弾き語り)
4)アイヴ・ガッタ・ウーマン/ミッキー・ドレンツwithフローラル
11.君と一緒に
12.アイム・ア・ビリーヴァー
13.ステッピン・ストーン
ところで、モンキーズ日本公演の前だったか後だったか記憶は曖昧なのだが、たまたま聴いていたラジオのGS番組にゲストで出演したブルーインパルスが、デビュー曲「太陽の剣」やモンキーズ来日公演の話題と共に、自分たちが演奏する「君と一緒に(It's Nice To Be With You)」のカヴァーを披露したことがあるのだ。
ハッキリと覚えているのは、それがライヴやラジオ局でのスタジオ・ライヴ音源などではなく、きちんとしたレコーディング・スタジオ録音(と思う)で、ストリングスも入っていたこと。もちろん、ブルーインパルスが残した3枚のシングルにこの曲は収録されていない。今になって思うに、あれは何だったのだろう? ただの記憶違いか? はたまた幻か…?
【著者】中村俊夫(なかむら・としお):1954年東京都生まれ。音楽企画制作者/音楽著述家。駒澤大学経営学部卒。音楽雑誌編集者、レコード・ディレクターを経て、90年代からGS、日本ロック、昭和歌謡等のCD復刻制作監修を多数手がける。共著に『みんなGSが好きだった』(主婦と生活社)、『ミカのチャンス・ミーティング』(宝島社)、『日本ロック大系』(白夜書房)、『歌謡曲だよ、人生は』(シンコー・ミュージック)など。