広島・新井 不振でも首脳陣が1軍に置き続けた理由

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今日の「スポーツアナザーストーリー」は、一昨日、今シーズン限りでの現役引退を発表した、広島東洋カープ・新井貴浩選手のエピソードを取り上げる。

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【プロ野球広島】今シーズンでの引退を表明した広島・新井貴浩=2018年9月5日 広島市のマツダスタジアム 写真提供:産経新聞社

「新井さん、やめないで!」「いつまでもカープでプレーしてください!」

ネットには、そんな声があふれました。チームがリーグ3連覇に向けて突き進むなか、一昨日、マツダスタジアムで記者会見を開き、今シーズンを最後に現役を引退すると発表した新井。シーズン中の突然の発表に、ファンはもちろん、チームメイトたちも動揺を隠せませんでした。

会見で、引退を決めた理由について、

「若手が凄く力を付けていまして、これからの2年後、3年後、5年後のカープの事を考えるときに、今年がいいんじゃないかなと考えました」

と語った。

地元・広島で育ち、駒澤大学を経て98年、ドラフト6位でカープに入団。ほとんど期待されていないなか、叩き上げでレギュラーの座を獲得。2005年には43本塁打を放ち、ホームラン王に輝きました。

07年オフ、悩み抜いた末、兄貴分と慕う金本(現監督)を追って阪神にFA移籍しますが、15年、古巣カープに復帰。翌16年、メジャーからカープに戻った黒田と両輪で、25年ぶりのリーグ優勝に貢献。通算2,000安打も達成し、MVPに輝きました。

しかし、プロ20年目の今年は、開幕から故障で出遅れて出場機会が減り、今回の決断となりました。しかし、首脳陣は新井を1軍に置き続けました。なぜか? チームメイトたちは、口をそろえて言います。

「新井さんが、いつも声を掛けてくれた」。

不調の選手を見ると相談に乗り、伸び悩んでいる若手を叱咤激励しアドバイス、しかも上から目線ではなく、

「自分も偉そうに言える状況じゃないけどね(笑)」

と、笑いを取ることも忘れない。前面に立ってチームを引っ張るのではなく、後方支援に徹し、出番が来れば、しっかり結果を残す。まさに、チームに欠かせない存在なのです。

8月29日の巨人戦では約1ヵ月ぶりにスタメン出場。4号ホームランを放つなど、存在感を示したばかり。「まだまだやれる!」という声も多いのですが、あえて、若手に道を譲る選択をしたのです。

引退を決めたとはいえ、残り試合、新井が引き続き戦力であることに変わりはありません。黒田の引退の際も、日本シリーズ前に発表されましたが、球団フロントは特に引退試合を設定せず「残り試合が、すべて新井の引退試合」という形で観てほしい、とコメントしています。新井も、引退会見でこうコメントしました。

「日本一になって、みんなとうれし涙で終われれば、最高と思う」

一昨年、去年と2年続けて逃した日本一の座。34年ぶりの歓喜の涙で、「新井さん」を送りだそうと、カープナインは燃えています!

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