本日11月28日はあべ静江の誕生日~美人アイドル歌手の代名詞
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1973年5月、“フリージアの香り”のキャッチフレーズで、キャニオンレコード(現・ポニーキャニオン)から「コーヒーショップで」で歌手デビューした時は21歳。アイドルとしてはかなり遅いスタートとなったあべ静江は、東海ラジオの人気DJ(=ディスクジョッキー)だった。ベストテン入りしたデビュー曲に続いて第2弾「みずいろの手紙」も連続ヒットとなり、第15回日本レコード大賞新人賞を受賞。翌年の第25回NHK紅白歌合戦に初出場を果たす。女優としても活躍し、70年代末で一旦歌手活動を休止した後も、テレビドラマや映画に多数出演している。最近ではバラエティや同窓会コンサートなどで元気な姿を見せてくれる彼女は1951年11月28日生まれ。本日67歳の誕生日を迎えた。
あべ静江、本名・阿部静江は三重県松阪市生まれ。かつて母親が東海ラジオの専属歌手だった関係で、東海学園女子短大在学中に同局のDJとなって人気を得る。もともと小学校時代から子役として活動していた時代もあり、芸歴は長い。出産のタイミングで歌手デビューを断念したという母親の意志を継ぐように、娘のレコードデビューが決まったのは何よりの親孝行であったことだろう。既に成人していた彼女のデビュー曲は10代の少女が歌うような可愛らしいものではなく、哀愁を帯びたフォーク調のナンバーとなった。「コーヒーショップで」と題された詞のテーマには、当時巷で大流行していたガロの「学生街の喫茶店」の影響が少なからず感じられる。デビュー盤から4ヶ月後、1973年9月に出された2枚目のシングル「みずいろの手紙」も同じく阿久悠の作詞、三木たかしの作曲によるもので、メジャーな曲調のやわらかなメロディ。そしてなんといっても、冒頭の台詞のインパクトが絶大だった。
とにかく美人で、こんなに綺麗な女性が世の中にいたのかと思わせるくらいの美しさであったことに誰も異論はなかろう。原節子に吉永小百合に松坂慶子、いつの世にも美人の代名詞がいるが、あべ静江の美貌はこの頃の歌手では格別で、一際輝いていた。財津和夫の作詞・作曲による8枚目のシングル「私は小鳥」をリリースした1975年には、東映の人気シリーズ第2弾『トラック野郎 爆走一番星』のヒロインに抜擢されている。劇中で菅原文太演じる主人公の桃次郎に一目惚れされる女子大生の役であった。テレビドラマも深夜放送のDJを題材にした1974年の単発ドラマ『真夜中のあいさつ』(TBS)を皮切りに、1976年のホームドラマ『三男三女婿一匹』 第1シリーズ(TBS)では森繁久彌の娘役に。そして1978年には青春学園シリーズの1本、『青春ド真中!』(日本テレビ)でマドンナの女性教師・田坂萌子を演じて人気を集めた。同じ中村雅俊主演による続編『ゆうひが丘の総理大臣』も人気の作品で相手役は由美かおるが務めており、姉妹編ともいえる両作はマドンナの好みで支持が別れるところ。なお同番組終了後すぐに出された13枚目のシングル「椿姫」は、それまでのキャニオンからCBS・ソニー(現・ソニーミュージック)への移籍第1弾だった。
1980年代にはリリースがなく、1990年代以降は10年に1枚のペースで時折新曲を発表しており、今のところ一番新しいシングルは2010年の「いちばん、好きだから」。2014年には歌手デビュー40周年を記念したベストアルバム『あべ静江アンソロジー Memories for 40years』が編まれている。異色盤としては2000年に林寛子、大場久美子、沢田亜矢子との4人による熟女ユニット“女盛りゲザデレタ”で出した「Animal Blood / LOVE IS HERE」がある。TMネットワークの木根尚登が作曲を手がけ、ザ・ワイルドワンズの植田芳暁プロデュース。明石家さんまのバラエティ番組『明石家マンション物語』に4人がゲスト出演したことがきっかけで生まれたユニットで、その不思議な名前は、番組のマスコットだったセントバーナード犬がくわえて来たカードの文字を順に並べて決めるというユニークなものであった。歌手デビューから45年、そろそろまた新曲を聴かせてもらいたいものだ。
あべ静江「コーヒーショップで」「みずいろの手紙」「私は小鳥」ジャケット、女盛りゲザデレタ「Animal Blood / LOVE IS HERE」チラシ撮影協力:鈴木啓之
【著者】鈴木啓之 (すずき・ひろゆき):アーカイヴァー。テレビ番組制作会社を経て、ライター&プロデュース業。主に昭和の音楽、テレビ、映画などについて執筆活動を手がける。著書に『東京レコード散歩』『王様のレコード』『昭和歌謡レコード大全』など。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』(毎週日曜23時~)に出演中。