ミュンヘン・オリンピックで初めて「月面宙返り」を成功させた塚原光男の有名なひとこと

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偉人の歴史に残る場面での名言を取り上げる 「高嶋ひでたけと里崎智也サタデーバッテリートーク」の“名言名場面プレイバック”。2月9日放送ではスポーツ史のなかで圧倒的なインパクトを残したアスリートたちの名言を紹介した

1972年ミュンヘンオリンピック - Wikipediaより

まずは、 世界で初めて「月面宙返り」を成功させたニッポン体操界の英雄。
塚原光男さんの名言です。

「今日は、絶対に成功できる」(塚原光男)

この呪文のような言葉の意味は、あとで改めて説明いたしましょう。
さて… 1972年のミュンヘン大会「男子体操団体・自由演技」で塚原さんが初披露、世界中が腰を抜かした「月面宙返り」、またの名を「ムーンサルト」。ちなみにこのワザを、体操用語を用いまして、キチンと紹介しますと、
「後方抱え込み、宙返り二分の一ひねり、前方抱え込み宙返り、二分の一ひねり下り(おり)」となります。

これだけで、いかに物凄い大技なのかお分かりでしょう。塚原さんは、最終種目、鉄棒の最後の演技者…つまり「大トリ」として登場しました。フィニッシュの直後には、世界中のプレスが「なんだ、あれは?」と総立ちに! 審判団がスローVTRを食い入るように見つめるシーンも話題となりました。まさに、このワザこそが、男子体操・4連覇の決め手となったのです。

さて、この衝撃の「月面宙返り」を、塚原さんは、いかにして編み出したのか。
塚原さんがこの技の開発に着手したのは、ミュンヘン大会の、わずか1年半前のことでした。空中の感覚を研ぎ澄まさせるために、トランポリンをやってみた。そしたら突然、天啓のように、大ワザのイメージが舞い降りて来たと言います。ところが、いざ練習してみますと、ワザの前半部分をやったところで、突然、「天と地の方向が分からなくなる」という事態に見舞われた! 体操選手は、この状態のことを「魔界」と呼びます。
空中で、「いかん。魔界に入った… 」そう思った瞬間、彼らは、とにかくカラダを丸めて、クビの骨折だけは防ごうとします。

塚原さんも、月面宙返りの練習中に、何度となく「魔界」に入ってしまいました。この「魔界」──まさに「全身の毛穴が開く恐怖」だそうです。塚原さんは、練習中に何度も落下して両手首を捻挫、さらに右膝も故障してしまいました。

意外と知られていない話というのは、ここからです。実は塚原さんは、ミュンヘンの本番まで、ただの1度たりとも、「月面宙返り」を成功させていなかったというのです! ところが、ミュンヘンの本番当日、突然、こんな言葉が舞い降りて来ました。

「いけるぞ。今日は、絶対に成功できる」──。

これはもう、理屈ではありません。天才アスリートしての勘だったとしか言いようがない。
塚原さんは、断固として試みた…そして、成功した──。そして、あの「ムーンサルト伝説」が誕生したのです。

続いては、走高跳の世界に革命を起こした天才ジャンパー。陸上界20世紀最大の天才と呼ばれた、アメリカ・ディック・フォスベリーの名言です。

「別に、世界を変えようと思ったわけじゃない。ボクは、走高跳を少しでも長く続けたかっただけなんだ」(ディック・フォスベリー)

ほんの50年くらい前まで、走高跳の世界では「正面跳び」「はさみ跳び」「ベリーロール」の3種類しかありませんでした。実際、東京五輪では、全員がベリーロールでした。ところが、東京大会の次、1968年のメキシコ大会に、とんでもない男が現れた! その男こそ誰あろう… 世界で初めて「背面跳び」を取り入れた、アメリカのディック・フォスベリーだったのです。

この革命的な跳び方「背面跳び」が生まれたきっかけというのが面白い。
最初はベリーロールで飛んでいたのですが、ある日の練習中ちょっと気分を変えて、はさみ跳びにチャレンジしてみた。そしたら、自分が思ったよりも、バーが高すぎた! そこで、走っている途中、瞬間的に腰をグーッと持ち上げてみたら、偶然、仰向けで飛べちゃった!

「何やってんだアイツ~!」ってんで、周囲は大笑いです。ところが、フォスベリーだけは、こう思った! “これをマスターすれば、こんなボクでも、大好きな走高跳を続けられるかもしれない!”

迎えたメキシコ五輪。フォスベリーは、陸上の世界大会初となる「背面飛び」を披露! 記録は、2メートル24センチという圧倒的なものでしたが、驚いたのは審判団です。この奇妙奇天烈な跳び方が技術規定に反していないか、緊急的に協議が開かれました。

そして、実際にフォスベリーの優勝が決まるまでには、かなりの時間がかかったのですが、「金メダル確定」の瞬間、スタジアムに轟いた大歓声というのは、いまも語り草です。

そして──「世界を変えましたね!」と興奮冷めやらぬ記者に対し、フォスベリーは、こう答えました。

「別に世界を変えたかったわけじゃない。ボクは大好きな走高跳を、続けたかっただけなんだ」

これぞまさに、二流の男が、超一流に変身した瞬間だったのです。

高嶋ひでたけと里崎智也 サタデーバッテリートーク
FM93AM1242ニッポン放送 土曜18:00-20:30

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