ヤクルト・寺原 移籍初勝利を引き寄せた2人の存在
公開: 更新:
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、4月11日の広島戦で704日ぶりの勝利を挙げ、チームの3連勝に貢献した、ヤクルト・寺原隼人投手のエピソードを取り上げる。
「正直、うれしいです。戦力外になって、こういうのは想像していなかった」
4月11日にマツダスタジアムで行われた、広島-ヤクルト戦。この日、ヤクルトの先発マウンドに上がったのは、昨年(2018年)オフにソフトバンクを戦力外となった35歳のベテラン・寺原隼人でした。
かつては速球派として鳴らした寺原ですが、ストレートの球速は140キロ台前半止まり。この直球と変化球を低めに集め、打たせて取るピッチングに徹しました。三振は、ピッチャーの矢崎から奪った1つだけ。
6回、松山に2ランを浴び、その後連打を浴びたところで途中降板となりましたが、5回2/3を2失点と好投。後はマクガフ、近藤、石山とつないでヤクルトが逃げ切り、寺原はソフトバンク時代以来、704日ぶりの白星を挙げました。
セ・リーグでの勝利は、横浜時代以来9年ぶりで、オリックスでの勝利も加えると、在籍4球団目の白星となります。
「中村がいいところを引き出してくれた」
と、女房役に感謝した寺原。一方の中村も、
「守りに入らず、ゲームを作ってくれた。新天地で、なんとか勝たせてあげたいという一心だった」
とベテランを讃えました。これでチームも、広島を相手に敵地で3連勝。この日試合のなかった巨人を抜いて、優勝した2015年以来、4年ぶりの単独首位に浮上しました。
序盤にヤクルト打線が6点を取ってくれたことも、寺原にとっては大きな援護となりましたが、ヤクルトには寺原にとって心強い味方が2人いました。
1人は、同じ宮崎出身の青木宣親です。2回のタイムリーを含む2安打で、同郷の後輩をバックアップ。試合後のロッカールームでは、寺原を「よく粘った!」と大声で祝福しました。去年はチームを引っ張り、2位躍進の原動力になった青木ですが、今年は確かな手応えを感じているようです。
「去年に引き続きという感じ。自分たちの形、方向性が見えている。チームが自信を持てるようになってきた」(青木)
そしてもう1人の強い味方は、同い年の近藤一樹です。2011年・12年と、オリックスで2年間同じユニフォームを着た寺原と近藤。2001年の夏の甲子園で、寺原は日南学園のエースとして活躍。150キロ台の豪速球を連発してスターとなりましたが、この大会で優勝投手に輝いたのが、日大三高のエース・近藤だったのです。寺原の入団を聞いた際、
「自分たちの代は、ずっと『寺原世代』と言われて、やってきているので。また同じチームでできることは嬉しい」
同世代のシンボルだった寺原と、また同じチームで戦える喜び。
「昨シーズン2位になった、このタイミングで加入してくれるのは心強い。さらに上を目指して、一緒に喜びたい」
セットアッパーとして大車輪の活躍を見せた近藤が目指すのはただ1つ、優勝しかありません。寺原~近藤の同世代リレーが今年はたくさん見られそうです。