タイガー・ウッズ 親子3代の父と息子の素晴らしい瞬間
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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、14日の米男子ゴルフ、マスターズ・トーナメントで、14年ぶり5度目の復活勝利を挙げた、タイガー・ウッズ選手のエピソードを取り上げる。
「また第一線で優勝できるとは想像もしていなかった。本当にうれしい。カムバックを果たしてマスターズで優勝できるのは最高のこと」
14日、ゴルフの聖地、オーガスタ・ナショナルGCで行われたマスターズ。勝者の証し・グリーンジャケットを着たのは、赤いシャツに黒のズボンという、おなじみの勝負服に身を包んだタイガー・ウッズでした。
最終18番ホール、最後のパットを決めると、総立ちで祝福するギャラリーに向かって、右手で力強く、あおるようにガッツポーズをしてみせたウッズ。その瞬間、地鳴りのような大歓声と「タイガーコール」がオーガスタにこだましました。
ウッズがメジャータイトルを手にするのは、実に11年ぶりのこと。マスターズは過去4回制覇していますが、2005年以来優勝からは遠ざかり、14年ぶりの勝利は、帝王ジャック・ニクラウスの11年を上回る最長ブランク記録です。
スーパースターの復活劇に、全米は大騒ぎ。ゴルフ好きで知られるトランプ米大統領も、ツイッターでウッズを祝福しました。
「プレッシャーの中で偉大なことができる人が好きだ。なんてファンタスティックな復活だろう!」
過去、ウッズはメジャーを14度制覇していますが、すべて最終日、首位スタートから逃げ切ったもので、2位から逆転したのは、今回のマスターズが初めてです。
3日目を終えて首位の全英王者、フランチェスコ・モリナリは、ウッズと同じ最終組で回りましたが、マスターズ独特の雰囲気と、ウッズの復活勝利を願うギャラリーの熱気に気圧されたのか、別人のようにスコアを崩していきました。
対照的に、冷静にフェアウェイをキープして、6バーディー・4ボギーの「70」で回り、接戦を1打差で制したウッズ。かつてのようなパワーは失われましたが、その代わり、今の彼には「経験」という武器があります。オーガスタはウッズにとって、勝手知ったるコース。悪天候の影響でスタートが早まっても、平常心は揺らぎませんでした。
「このコースでプレーするために、頭に小さな図書館を持っているんだ」
腰痛の悪化で4度の手術を経験。不倫発覚、離婚によるイメージダウンでスポンサーは離れ、スタッフも去り、一時は引退も考えたというウッズ。
しかし、どん底からもう一度這い上がろうという原動力になったのは、低迷期の自分しか知らない11歳の長女と、10歳の長男に「勝つ姿」を見せてあげたい……力で押すゴルフから、技のゴルフへの転換を図り、再び戦いの場に戻ってきたウッズ。
4度目の腰の手術明けで、戦線に復帰したのは、昨年1月のことでした。7月の全英オープン(最終日首位に立つも、6位)、8月の全米プロ選手権(2位)と、メジャーで優勝争いに加わって自信を取り戻し、9月に米ツアー最終戦で勝利。「強いウッズが戻ってきた!」とファンは大いに盛り上がりました。
完全復活が期待された今季、マスターズという最高の舞台で、久々のメジャー勝利を成し遂げたウッズ。
「家族は諦めずに戦った僕を、きっと誇りに思ってくれる」
そんなウッズの勝利を讃え、マスターズの公式インスタグラムは、粋な演出をしました。
今回、優勝を決めた直後、同じ赤黒の勝負服を着た長男・チャーリー君がウッズの胸に飛び込むシーンの映像をアップ。これにオーバーラップさせる形で、22年前、ウッズがマスターズを初めて制したとき、父のアールさん(故人)と抱き合ったシーンを同時にアップ。「父と息子の素晴らしい瞬間」というタイトルを付け、公開したのです。
親子3代の抱擁シーンに「涙が出た!」という声が世界中から殺到。そんなウッズの復活劇は、まだ始まったばかりです。もう届かないと思われた、ニクラウスの持つメジャー通算18勝まであと3勝。米ツアー81勝は、82勝のサム・スニードにあと1勝。
新生ウッズが、これからどんな伝説を作ってくれるのか、注目です。