みうらじゅんが「アウトドア般若心経」を始めたきっかけは井上陽水の声だった

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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、イラストレーターなど多方面で活躍中のみうらじゅんが出演。修行として行っている「アウトドア般若心経」について語った。

みうらじゅんが「アウトドア般若心経」を始めたきっかけは井上陽水の声だった

『みうらじゅん マイ遺品セレクション』発行:文藝春秋社

黒木)今週のゲストはイラストレーターなどをされているみうらじゅんさんです。
これまでになかった仕事を企画から営業まで、すべて1人でして、自分の仕事にしているということですが。

みうら)職業としての肩書はなかったですね。職業というカテゴリーになかったことをやって来ました。その年、その年でやっていることが違っていたりするので、説明が難しいのですよね。
もうけっこうな歳になりましたけれども、未だに道を歩いていると職質とか受けることがあるわけですよ。

黒木)そういうときは何とおっしゃるのですか?

みうら)面白い看板があって、それを撮っているときだったら、まだいいではないですか。そういうことはテレビでもやっているから。一時期、「アウトドア般若心経」というものをやっていたのですよ。

黒木)般若心経の言葉を集めるやつですね。

みうら)そうです。どこにあるかわかりませんから、むやみやたらに歩いて探すので、尋問を受けるのですよ。昼の日中にやっているもので。そのときに「何をやっているのですか?」と言われて、この説明をしたらたぶん、どこかへ連れて行かれると思うのですよね。「看板で般若心経の文字を集めています」と言ったら、「ちょっと来てもらえませんか」と言われそうなのですよ。概念がないから。そこはすごく苦労するところですね。

黒木)278文字。

みうら)集めましたね。

黒木)集めるとなったら、とことん集めなくてはダメなのですか?

みうら)はじめ、「空」という文字を駐車場で見つけたのですよ。よく「空あり」とあるではないですか。あれは仏教の真髄が書かれているのです。駐車場にこんな真髄が書かれていて、誰も気付いていないことが不思議だなと思っていたので、はじめは「空」だけを集めていたのですよ。「空なし」というものもあるのです。周りの人から「アキあり」と読むんだよとは教えられたけれど、それは心のない人が僕を注意したのですね。「ないことはない」と書かれているわけです。すごく深いことが書かれているのです。
ある日、そんなことを続けていたら、「何で、般若心経の文字を全部集めないのか」という声が夢のなかで聞こえて来たのですよ。なぜかわかりませんが、それは井上陽水さんの声でした。
それで、集めだしたのですが集まらないのですよ。それほどないのですよね。だから修行のように、毎日歩いては見つけるという作業を続けていました。

黒木)修行ですか。

みうら)はい。いまでもそれはやっています。「写真経」とこれを呼んでいたのですが、写経は何回も繰り返して般若心経を書くではないですか。この「写真経」もいま、2回りしています。違うところでまた集めているのですよ。
アウトドア般若心経を全部集め終わったときに、DPEに写真を出して事務所の床に全部並べてみたのです。並べてみたら、確かに読めるのです。読めるのだけれど、そもそも違う意味で使われていた漢字だったということに気が付いたのです。並べて見ると、一瞬、見えるだけのものだということを教えているのだと気が付いて、並んでいるけれど、これはないのですよね。あるのだけれど、ないのですよ。

黒木)深いですね。

みうらじゅんが「アウトドア般若心経」を始めたきっかけは井上陽水の声だった
みうらじゅん/イラストレーターなど

■1958年2月1日京都市生まれ 血液型AB型
■1980年 武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー
■1997年 「マイブーム」で新語・流行語大賞受賞
■2005年 日本映画批評家大賞功労賞受賞
■2018年 仏教伝道文化賞 沼田奨励賞を受賞

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