黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」（ニッポン放送）に、歴史ナビゲーター・歴史作家のれきしクンが出演。歴史に輝く、愛すべき“ポンコツ武将”について語った。

ニッポン放送「あさナビ」

黒木）今週のゲストは歴史ナビゲーターで歴史作家のれきしクンです。れきしクンは、歴史を20歳のときから趣味として勉強し出したということです。ここにれきしクンの著書がありますが、かっこいい武将が多いですよね。そのなかにポンコツがいる。

れきし）いますね、たくさん。

黒木）たくさん。

れきし）この本には武将が38人くらい入っていますが、武将というと偉人のイメージが強いではないですか。自分と同じようにダメな人もたくさんいるのだろうと思い、調べてみて『ポンコツ武将列伝』という本を書かせていただきました。

黒木）きょうはれきしクンが選ぶポンコツ武将について、何人か紹介していただきたいと思います。

れきし）まずは、何度もお城を落とされているのに、不死鳥のように蘇る、小田氏治さんという戦国最弱の武将がいます。この氏治さんを書きたくて企画書を出しました。小田城というお城がありますが、そのお城はトータルで9回落とされているのです。それだけ落とされている人はいないので、それをもって戦国最弱としました。何回も落とされているのに、なくならないのですよ。討ち死にはしないで、家臣の家に逃げ込むのです。それで家臣が協力して、また小田城を取り返してくれた。逃げるのは得意なのですよね。それで生き残った。戦国時代というのは、家臣も裏切っていいのですよ。別に主君はこの人だけでなくてもいい。自分が生き残るために変えていいのですが、この方は家臣に裏切られないのです。

黒木）信頼が厚かったけれども、戦い方が下手だった。

れきし）仕事ができない。家臣のアドバイスも全然聞かないのです。ある合戦のときに、相手の兵が少ないから、家臣が「小田さん、相手は隠れています。隠れていますから行かないでください」と言うのですが、それを無視して行ってしまう。案の定、両サイドに敵がいて、惨敗して帰って来る。それで家臣の家に逃げるという人なので、ネット界隈の戦国好きでは、この人は大人気です。一般的には知られていませんが、ホントに可愛いのですよ。

黒木）この小田氏治さんから、れきしクンは何を学んだのですか？

れきし）生き残ることです。簡単にあきらめない、討ち死にしない。小田氏治さんは名門の家柄で、15代続いているのですよ。鎌倉時代の最初から戦国時代のなかで、400年続いている名族中の名族なのですが、小田城は先祖代々受け継がれているので、そこは譲れない。何回も取り返し、それで名を残す。この人は最期、畳の上で天寿を全うしています。娘さんの1人が、結城秀康という徳川家康のお子さんに側室で嫁いでいるので、福井県の方でお亡くなりになっていますが、その後も小田家は末裔がいます。諦めずに、討ち死にしてはいけないし、名を残すよりも命を残すということが大切なのだなと思います。

黒木）そのポンコツから「生きる」ということを感じるわけですね。他には？

れきし）あとは、兵主源六という人がいます。

黒木）「同じポンコツなら踊らにゃ損」と書いてありますけれど。

れきし）この方は鳥取県の武将ですが、けっこう強いのですよ。金剛城というお城に籠城して、秀吉軍と戦っても撃退するくらい強かったのですが、この兵主源六さんは大好きなものがありまして、それがお祭りだったのです。お祭りで踊るのが大好きでした。家臣たちもみんな好きだったみたいです。ある日、金剛城の城下町で、嘘のお祭りが開催されたのです。みんなで踊っている。山の上にあるお城で、パッと見たらお祭りをやっているので、兵主源六さんは家臣たちと一緒に山を下ってお祭りに参加した。そして、参加している間にお城を落とされてしまった。可愛くないですか？　そこから消息不明です。

黒木）消息不明なんだ。そこから、れきしクンは何を学んだのですか？

れきし）自分の好きなことをやっていると、こうやって、いまも笑ってくれるのだなということです。武将としてではなく、人として愛せるではないですか。

ニッポン放送「あさナビ」

れきしクン（長谷川ヨシテル）／歴史ナビゲーター・歴史作家

■1986年生まれ。埼玉県出身。本名：長谷川ヨシテル
■大学卒業後、ワタナベコメディスクールに入学。漫才師としてデビュー。
■解散後、「歴史好き」であることから、歴史ナビゲーター・歴史作家として活動。
■歴史に関するクイズ番組で優勝するなど、豊富な知識を有する。
■現在は、日本全国でのイベントや講演会、また歴史に関する番組・演劇の作家や歴史ゲームのリサーチャーも務めるなど、芸人として培った経験を生かし、明るくわかりやすいトークで歴史の魅力を伝えている。
■中高地理歴史教員免許・歴史能力検定2級（日本史）・日本城郭検定準1級を所持。
■著書に『ポンコツ武将列伝』『あの方を斬ったの…それがしです』など。