声優で女優の戸田恵子がパーソナリティを務めるラジオ番組「三菱電機プレゼンツ 戸田恵子 オトナクオリティ」(ニッポン放送・毎週日曜14時~14時30分)に、声優の増岡弘がゲスト出演。昨年2019年まで、テレビアニメ「それいけ!アンパンマン」でジャムおじさん役を、「サザエさん」のマスオさん役を長らく担当していた増岡が、両作品の収録現場の違いを語った。
増岡は、「それいけ!アンパンマン」でアンパンマン役を務めている戸田と長らく共演。しかし昨年、高齢のため本人の希望で、ジャムおじさん役とマスオさん役を卒業。ジャムおじさんは約30年、マスオさんは約40年と、どちらも長きにわたって国民的アニメの人気キャラクターを演じた。そんな増岡が、両作品の収録現場の様子を語った。
戸田:増岡さんといえば、『アンパンマン』のジャムおじさんと、『サザエさん』のマスオさん役を、みなさん想像されると思うんですけど、『アンパンマン』と『サザエさん』のそれぞれの役で、収録の雰囲気とか、録り方とかの違いはありますか?
増岡:そうですね、大げさにはっきり言うと、まるで二つの番組は違うという感じがします。
戸田:ほう!
増岡:『サザエさん』というのはアニメーションでありながらホームドラマなので、いきなり(収録現場に)行って、それから本番みたいな形で進みますので、キャラクターをどうするということではなくて、寸法を合わせるだけのことですから。改めてあいさつをしないで、『ほら、あれ』、『あ~あれね』って……、話が一週間、まるで他の時間が抜けちゃって、日常生活の中を連続しているので、仕事をしたという実感が全くしない。何か、そこにいて、いつのまにか帰ったというか、何でもない時間が過ぎていくんです。仕事を『さあ、がんばるぞ』とか、そういう感じにならないんですよね。
戸田:なるほど。
増岡:充実感みたいなものはないんです。でも、そこがまた良さでもあるんですが。
戸田:日常がそのまま流れている感じなんですね。
増岡:そうなんです。だからそこで生活をして、みんながそこで生きていて。『アンパンマン』はキャラクターをちゃんと作って、一生懸命それを子供達に分かってもらえるように、言葉の温度を変えてみたりして。子供達って言葉の温度をとても気にするんです。冷たい言い方とか、そういうものを受け取らないんですよね。『アンパンマン』の番組では、みなさんの優しさがちゃんと言葉の温度になっていて、あれは子供たちに受け入れやすいと思うんですよね。特に、アンパンマン役の戸田さんの声は適温です!
戸田:いやいや(笑)
増岡:すごいなあ、って思うんです。
戸田:ふふふ、そうでしょうか?
増岡:熱すぎるカレーパンマンとかもいますけどねえ(笑)
戸田:確かに(笑)
増岡:だから『アンパンマン』は満足感があって、いい作品だなーって。いつまでも世界の子供達に見てもらいたいと思い続けている作品です。
「サザエさん」の現場では何も加工せず、日常のままを過ごし、「それいけ!アンパンマン」では視聴者である子供のことを考え、声の温度感に気を使っていたと明かした増岡。
現在、83歳の増岡。番組後半、戸田から「これから先、何かやってみたいことはありますか」という質問に、「いやもう、私はそういう先の話よりも、今自分で感じられることを大事にしたい」と回答。
「アンパンマン」の原作者・やなせたかしさんや、戸田がよく語っていたという「どれだけ人を喜ばせたかが人間の価値なんだよ」という言葉を、増岡は最近しみじみと感じているといい、「命は毎日細くなって小さくなるけれど、うれしさとか努力、想い、愛は足し算なんだな、ってつくづく思います。多くの足し算をした人が、引き算に勝つわけです。だから、なんでもない日お大事にしていきたいなと思い続けています」と、日々を大切に感じながら生きているのだと語った。
番組情報
女優・戸田恵子が大人のクオリティ・オブ・ライフ(上質で豊な生活)をエンジョイするための「人・モノ・コト」にフォーカスする番組です。
大人の会話が弾むプチトリビア、大人が生活に取り入れたくなる情報をお届けする30分。ぜひお付き合いください。