「新行市佳のパラスポヒーロー列伝」
ニッポン放送アナウンサー・新行市佳が、注目選手や大会の取材などを通して、パラスポーツの魅力をあなたと一緒に発見していきます
今年初の「パラスポヒーロー列伝」です!
年が明けてからより一層スポーツに関する話題が多くなり、いよいよ東京オリンピックパラリンピックが間近に迫っていることを実感します。楽しむ準備はできていますか?
今年も「新行市佳のパラスポヒーロー列伝」では、東京パラリンピックの観戦が楽しみになるような記事を書いていきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いします。
さて、2020年最初の記事ですが「2019 IBSAゴールボール アジアパシフィック選手権大会」について紹介しようと思います。本来ならば去年のうちに掲載したかったのですが……遅ればせながらここでお伝えします。
<ゴールボールとは、視覚障がいの選手たちが行う対戦型のチームスポーツ。1チーム3名で、攻撃側は鈴の入ったボール(1.25kg)を相手ゴール(高さ 1.3m、幅9m)に向かって投球し、守備側は全身を使ってボールをセービングする。選手たちはボールから鳴る鈴の音や相手選手の足音、動く際に生じる床のわずかな振動などを頼りに、攻撃と守備を攻守を交互に入れ替えて得点を競う。試合は前後半12分 ずつの計24分、ハーフタイムは3分で行われる。選手は視力の程度に関係なく、アイシェード(目隠し)を装着してプレーする。もともとは、第二次世界大戦 で視力に障がいを受けた軍人のリハビリテーションプログラムとして考案された。>
~日本パラリンピック委員会HP「ゴールボール」競技概要より引用
「2019 IBSAゴールボール アジアパシフィック選手権大会」は、去年2019年12月5日から10日まで千葉ポートアリーナで開催されたアジア・オセアニア地域の国が出場する国際大会で、男子はオーストラリア、中国、インドネシア、イラン、日本、韓国、タイの7カ国が出場。女子はオーストラリア、中国、インドネシア、日本、韓国、タイの6カ国が出場しました。男女日本代表選手の選考も兼ねた大会でした。
注目の試合は強豪中国との一戦。
大会前に発表されていた世界ランキング(2019年10月時点のもの)では、男子中国代表は4位、対して男子日本代表は12位。女子中国代表は2位、女子日本代表は4位という状況でした。
大会2日目の12月6日に男子代表と中国は対戦。試合の入り方が堅かった日本は、中国のバウンドボールに対応できず6-1で前半戦は大幅なリードを許してしまいます。
後半戦が始まると日本は積極的なプレーを展開するものの、連続でペナルティをとられてしまいます。ペナルティを取られるギリギリを狙いに行かないと勝てない相手だけに、取られたならば全力で阻止しなくてはいけませんでした。
この重要な場面でペナルティスロー2本を宮食行次選手が止め、良い流れを作ります。中国のペナルティを誘い、山口選手が1点を奪取、続けて速攻で2点目を掴みますが、中国に2点を返され8-3という結果に。
宮食選手は攻撃力のレベルの違いを見せつけられたと語りました。男子代表が投げるバウンドボールは回転量が多いため、ボールがバウンドして空中にある時、遠心力でボールの中に入っている鈴が一緒に回ってしまうために音が聞こえず、軌道を予測しづらいそうです。
その後、男子日本代表は3位決定戦に進み、韓国と対戦。11-5で勝利して3位に輝きました。
日本のポイントゲッターである金子和也選手は、攻撃面における自分の平均値を高めていく必要性を挙げ、「メダルをとれたことは良かったが、目標にしていたことは達成できなかった」と悔しさを滲ませました。
アジアパシフィック大会3連覇が懸かっていた女子日本代表は予選で中国代表に2-0で敗北しましたが、再び決勝戦で中国と激突しました。
開始早々、天摩由貴選手が先制し、欠端瑛子選手のパワーのあるボールで2点目を追加。残り3分で中国が取り返し、2-1で前半を終えます。続く後半戦で日本は最後まで守り抜き、3連覇を果たしました。
「どちらがチャンピオンか教えてやれ!」試合の最中に市川ヘッドコーチがチームを鼓舞する場面もあり、その差1点という緊迫した試合でした。
試合を終えた市川ヘッドコーチは「情報班が夜中まで細かい情報分析をしてくれたことが選手たちの勝利につながったと思います」と振り返り、データをもとに対中国の新プランを立て、予選とは違う戦いをするようにしたことを明かしました。
大会を通して抜群のコントロールで得点するシーンが目立った若杉遥選手は、リオでの無念を忘れてはいませんでした。
「中国は対戦経験も多いですし、ランキングも同じような位置にいるのでいつも拮抗した試合になります。リオでは準々決勝で当たって負けてしまったので、もうあんな思いはしたくないという気持ちで戦っています」
センターとウイングの間が抜かれやすかった女子日本代表は、今大会ではディフェンスの位置を調整。この強化ポイントが功を奏し、中国の猛攻を耐えることに繫がりました。
2012年ロンドン大会で優勝した女子日本代表は、2016年リオ大会で中国に準々決勝で敗れメダルを逃しました。あの雪辱から4年、強化指定に若手選手も加わり、チーム力が向上している真っただ中です。
今大会を経て、東京大会への第1次推薦の内定が発表されました。男子代表は、田口侑治選手、山口凌河選手、金子和也選手、宮食行次選手の4人。女子代表は、欠端瑛子選手、若杉遥選手、天摩由貴選手の3人。ゴールボールは1チーム6人で構成されるので、残りは男子2枠、女子3枠となりました。
今後は今年の合宿や遠征などを経て、最終的なメンバーの内定を3月頃に出す見込みとなっています。