ヤクルト・村上に高津監督が言い聞かせて来たこと

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、7月2日の広島戦でサヨナラ満塁本塁打を放ち、チームを勝利に導いた東京ヤクルトスワローズの若き主砲・村上宗隆選手にまつわるエピソードを取り上げる。

プロ野球 ヤクルト対広島 サヨナラ満塁本塁打を放ち生還したヤクルト・村上宗隆=2020年7月2日神宮球場 写真提供:産経新聞社

「(打った瞬間)『勝った!』と思いました」(村上)

2日、神宮球場で行われたヤクルト-広島戦。5-5の同点で迎えた9回裏、ヤクルトは広島の新守護神・スコットに襲いかかります。先頭の坂口が四球で歩き、山田哲人が内野安打、さらに青木も右前打で無死満塁。一打サヨナラの絶好機で、弱冠20歳の4番・村上に打順が回って来ました。

「1点を取ろうと思って」打席に立った村上。スコットが2球連続で投じたスライダーを見逃し、空振りでカウント0-2と追い込まれましたが、3球目のツーシームを思い切って振り抜くと、打球は大きな弧を描いてレフトスタンドへ! 打った瞬間、スタンドインを確信した村上は、右手でバットを高々と掲げると、悠然と一塁へ歩き始めました。

「追い込まれていたので、前に飛ばそうという意識だった」と言う主砲が放った劇的なサヨナラ満塁本塁打で、ヤクルトは広島に連勝。昨年(2019年)5月以来の「貯金1」で3位に浮上しました。これぞ“4番の仕事”です。

「開幕戦で、満塁で回って来たときに三振してしまったので、その借りを返せたのかなと思います」(村上)

6月19日、高津新監督は初陣となった中日との開幕戦で、村上を球団最年少の20歳4ヵ月で開幕4番に抜擢しました。これは「国鉄スワローズ」時代の1956年、22歳0ヵ月で4番を務めた町田行彦の球団記録を64年ぶりに塗り替える快挙でした。昨年まで長年主砲を務めていたバレンティンがソフトバンクへ移籍。得点力の低下が懸念されるなか、高津監督は村上に、新主砲の座を託したのです。

熊本の九州学院高からドラフト1位で入団した村上。プロ1年目の2018年、2軍監督を務めていたのが高津監督でした。

「打てないときでも、相手にプレッシャーのかかるスイングをするように」

村上にそう言い聞かせて来た高津監督。2軍戦で村上を常に4番で起用して来たのは、「どんなことがあろうと、重圧から逃げず、そこで成長して行け」というメッセージでもありました。1軍監督に昇格した今シーズンも、村上を4番に据えた高津監督。

そんな指揮官の思いに、村上も応えます。開幕戦でいきなり2安打。いずれもタイムリーでしたが、中継ぎ陣がリードを守れず、中日に逆転を許します。7-9と2点差を追う9回裏、粘るヤクルト打線は2死満塁のチャンスをつくり、バッターは村上。本塁打が出れば「開幕戦逆転サヨナラ満塁アーチ」という最高の場面でしたが、中日のクローザー・岡田の前に空振り三振……。

いくらタイムリーを2本打とうが、チームを勝ちに導かなければ意味がない。そのことを実感させられる苦い経験となりました。2日の「サヨナラ満塁弾」は、本人がヒーローインタビューで語ったように、開幕戦の借りを返す1発となったのです。

開幕前、「チャンスで回って来ることが多い4番は、チームの勝ち負けに直結する打順。チームを引っ張り、勝ちに導ける4番として頑張りたい」と抱負を語っていた村上。そのために設定した今シーズンの目標が「3割・30本塁打・100打点」でした。

昨シーズンの成績は「打率.231・36本塁打・96打点」。本塁打と打点はいずれもリーグ3位で新人王に輝きましたが、打率は規定打席到達者中、最下位でした。184三振もリーグワースト。この低打率は、それだけ積極的に振って行った結果なのです。

ただし、2年目ならそれで許されても、主砲がただ振り回すばかりでは困ります。三振を減らし、打率も上げるのが4番の務め。もともと村上は入団以来「選球眼が抜群」と言われて来たバッターです。ボール球を見逃せば、四球も増え、打率も自然と上がるはず。

そのことを自覚した村上は昨年、シーズンが終わるとすぐ秋季練習に参加。宮崎で行われたフェニックスリーグにも参加しました。さらにオフには、2年連続でチームの先輩・青木の自主トレに同行。ロサンゼルスで一緒にトレーニングを積み、打率を上げる極意も学びました。

ハードな練習が祟ったのか、今春のキャンプ中、下半身のコンディション不良で離脱。本来なら開幕には間に合わないはずでした。ところが、開幕が6月に延期となり、万全の状態で初戦から4番を務めることができたのも、やはり村上は何か持っています。

「チームを勢いづけ、勝ちにつなげるのが(4番の)仕事」(村上)

今シーズンから、故郷のシンボル・熊本城復旧のために、ホームランを1本打つごとに一定額を寄付することも表明しています。20歳とは思えない風格すら感じるようになりましたが、「最下位予想を覆したい」と意気込む新主砲が大活躍すれば、5年ぶりのV奪還も決して夢ではありません。

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