ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（1月31日放送）に中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が出演。東京都の病床使用率が48.5%となり、緊急事態宣言の要請を検討するとした50%に迫っているというニュースについて解説した。

東京都内で確認された「オミクロン株」の市中感染事例について説明する小池百合子知事＝2021年12月24日午後、東京都庁　写真提供：共同通信社

東京都の病床使用率48.5％、政府は緊急事態宣言発令を慎重に判断

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各地で病床使用率が上昇している。東京都では1月30日に使用率が48.5%となり、緊急事態宣言の要請を検討するとした50%に迫っている。政府は重症者数なども含めて慎重に対応を判断する方針で、医療提供体制の確保などの対策に努める。

「緊急事態宣言」を発令したのちに感染者が増えれば、次に打つ手がなくなる　～緊急事態宣言を出す時期かどうかを真剣に考える必要がある

飯田）都知事ご自身は「病床使用率もありますが、総合的に判断する」とおっしゃっています。どうご覧になりますか？

野村）病床使用率が間もなく、示していた50％という数字になりそうですし、大阪の吉村知事は40％という数字を出していますので、おそらく早晩、それらの数字は超えるだろうと思います。ただ、「いまの状況が緊急事態宣言を出す時期か」ということを真剣に考えなければならないと思います。緊急事態宣言は最後のカードですから、例えば感染者が減り始めている状態で出すことになると、次にまた感染者が増え始めたときには、もう打つ手がなくなってしまいます。

飯田）次の手が。

野村）いま、オミクロン株の感染の山がどういう状況になっているのか。ここを見定めた上でなければ、安易には出せないだろうと思います。

「緊急事態宣言」をどこで出すかということは重要な判断になる

飯田）いろいろな予測が出ていますし、一方では「さらなる変異株があるのではないか」とも言われています。専門家の方々には、「今週でピークアウトか」ということをおっしゃる方もいらっしゃいます。

野村）そうですね。従来のものは今週辺り、または来週辺りがピークアウトではないかと言われて来ました。これに対して、「ステルスオミクロン」と呼ばれる新しいウイルス、亜種のウイルスは、感染力が現在主流となっているオミクロン株と比べ、18%ぐらい高いのではないかと言われています。そうすると、いまよりもたくさんの人が感染する可能性があるわけです。

飯田）現在のオミクロン株よりも。

野村）これが重症化するものなのかという見極めはまだできていませんので、しっかり見極めないといけません。もし現段階で緊急事態宣言を出したあとに、亜種の感染が急拡大して危ない状況になったとしたら、政府には打つ手がなくなってしまいます。ここは、しっかり見定めないといけない。緊急事態宣言は、アナウンスメント効果がいちばん大きいわけです。

飯田）アナウンスメント効果が。

野村）「緊急事態宣言が出た」ということで、みんなが一瞬でも緊張を高める。この効果をどこで打つかということは、とても大事な判断だと思います。

まん延防止等重点措置はオミクロン株に対しての適切な対処ではない　～子どもへの感染から家庭に拡がっている

飯田）諸外国と違って強制力があるものではないので、アナウンスメント効果に期待する。それしか期待できるものはない、ということでもありますね。

野村）日本人は慎重で、まん延防止等重点措置あるいは緊急事態宣言が出る、出ないにかかわらず、感染者数が増えれば、きちんと行動を律しているのです。その効果が現れているからピークアウトが見えているという状況ですので、日本人の行動に対する信頼感がある以上は、下手な手を打つよりも、考えなければならないことがあると思います。

飯田）なるほど。

野村）さらに言うと、いま出されているまん延防止等重点措置は、どうもオミクロン株に合っていない可能性があります。基本的対処方針では、どちらかと言うと飲食店の時短営業や酒類の提供禁止が重視されています。しかし、現在のオミクロン株は子どもたちの間で感染が拡がり、そこから家庭内感染に拡がっています。この割合がいちばん多い。子どもたちはお酒を飲みに行きませんから、ずれているのですよ。

飯田）そうですね。

野村）そこが問題ですね。それから、従来のデルタ株だと肺炎を基準にして、「肺の炎症があれば中等症、重症」と言っていました。しかしオミクロン株の場合、肺には炎症が生じにくいけれど、他方で持病が悪化している人もいます。とにかく命を守ることが最優先なので、いまの守り方でいいのかどうかを真剣に考えないといけない。そこを考えないまま、単に「今度は緊急事態宣言か」ということを議論しても意味がないと思います。