なぜ今『銀河鉄道の夜』を題材に? 音楽劇『たぶんこれ銀河鉄道の夜』久保田紗友・岩崎う大・上田誠インタビュー

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京都を拠点に活動する劇団・ヨーロッパ企画がニッポン放送とタッグを組んで手掛ける次なる舞台の題材は『銀河鉄道の夜』。舞台を現代へと置き換えた音楽劇『たぶんこれ銀河鉄道の夜』が、2023年3月17日(金)より紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演される。

この度、主人公・ナオ役の久保田紗友、ヤザワ役の岩崎う大(かもめんたる)、そして脚本・演出を手掛ける上田誠にインタビュー。なぜ今『銀河鉄道の夜』を題材にしようと思ったのか、プロットを読んだ印象のほか、作品にかける意気込みを聞いた。

なぜ今『銀河鉄道の夜』を題材に? 音楽劇『たぶんこれ銀河鉄道の夜』久保田紗友・岩崎う大・上田誠インタビュー

脚本・演出を手掛ける上田誠、主人公・ナオ役の久保田紗友、ヤザワ役の岩崎う大(かもめんたる)

——久保田さんと岩崎さんは、本作のプロットを読んでどんな印象を受けましたか?

久保田:タイトルにある『銀河鉄道の夜』の原作は、多くの方が色々な解釈を持っている作品です。それがまた新しい上田さんなりの現代の解釈で舞台化することが、本当に楽しみです! しかも音楽劇になるので「一体どんな舞台になるんだろう?」と私もワクワクしています。

岩崎:え、ちょっと待ってください。音楽劇なんですか?

上田:プロットにちゃんと書きましたよ(笑)

岩崎:見落としちゃってたな~! びっくりしました(笑)

——(笑)。そんな岩崎さんは、プロットを読んで抱いた印象は?

なぜ今『銀河鉄道の夜』を題材に? 音楽劇『たぶんこれ銀河鉄道の夜』久保田紗友・岩崎う大・上田誠インタビュー

岩崎:「音楽劇」と知って、たった今すごいプレッシャーを感じ始めています(笑)。『銀河鉄道の夜』は、生きづらい人たちのお話。現代も生きづらい人たちが多い世の中ですよね。上田さんが今この物語を現代風の舞台にすることは、銀河鉄道が上田さんという駅に到着したということなんだなぁ~……と感じますね(しみじみ)

上田:そんな上手いこと言わなくて大丈夫ですよ(笑)

——上田さんはなぜ今『銀河鉄道の夜』を題材にしようと?

上田:ニッポン放送さんとはこれまでも『続・時をかける少女』だったり、コロナで中止になってはしまったのですが『たけしの挑戦状 ビヨンド』だったり、オールドスタンダードな作品を新解釈する形で一緒に舞台を作ってきました。僕がファンタジーやSFを主戦場にしているので、いつか『銀河鉄道の夜』を題材にしてみたいと思っていたことも大きな理由です。解釈が難解で、かつ久保田さんが言ったように色んな人がそれぞれの解釈を持った作品だからこそ、舞台化することによって新鮮な気持ちで観ていただけるのではないかと思います。

——舞台を“現代”にする上でこだわった部分はありますか?

上田:『夜は短し歩けよ乙女』など“夜”を題材にした作品が増えていて、個人的には最近「夜が熱い!」と思っています(笑)。『銀河鉄道の夜』の原作中に「桔梗色の空」という言葉が出てくるのですが、それを現代の“映え”だったり“チル”な夜だったりとリンクできたら良いなとは考えていますね。

——主人公を女性にしたところも現代的だと感じました。ストーリーに関してはいかがですか?

上田:原作を掘っていくと、タイタニック号の海難事故やラッコの乱獲事件など、当時の時代性がすごく反映されているんです。「これを現代に置き換えるとどうなるのか?」と構想を練っていったら、デスゲームの話になりました(笑)。もともと原作が気軽にコメディにできる作品ではないのですが……劇場空間で楽しめる作品にするために、コメディ作家として現在掘り起し中です。

なぜ今『銀河鉄道の夜』を題材に? 音楽劇『たぶんこれ銀河鉄道の夜』久保田紗友・岩崎う大・上田誠インタビュー

——キャスティングについても聞かせてください。まず、主人公役に久保田さんを置いた理由は?

上田:仕事への取り組み方がとても真摯で、また何かのインタビューで「辛い事があっても表に出さない」と語っているのを見て、「まさに(原作の)ジョバンニの人生のようだ」と感じたからです。久保田さんが自分の運命にひたすら向き合っている様子が、ジョバンニのもとに銀河鉄道がやってくる情景に重なって「この人のところになら、銀河鉄道が来そう」と思いました。

久保田:嬉しいです! ありがとうございます。

——岩崎さんとは、以前の作品でも共演している間柄ではありますね。

上田:そうですね。かもめんたるのライブの構成協力をさせていただいたり、ドラマ『雨天中止ナイン』(テレビ東京)でタッグを組んでいたり、かなり付き合いが長い関係にはなります。だからこそ知っている、う大さんが育てている“闇の力”が、この奥行きが深い『銀河鉄道の夜』を題材にした作品に必要だと感じました。

岩崎:“闇の力”なんて育ててないですよ!?(笑)

上田:原作でいう「石炭袋」を隠していると思ったので(笑)。また、う大さんは「これ笑っていいっけ?」という題材も笑いに変えられる役者さん。この作品に必要不可欠な存在だと思い、オファーさせていただきました。

——それを聞いて、岩崎さんはどう感じますか?

岩崎:闇は育てていないですが……(笑)。笑いに持っていくポジションとしては、お役に立てるかもしれないと思うことがあって。原作では「幸(しあわせ)」の字を「さいわい」と読ませるじゃないですか。このセリフって、僕からすると面白ワードなんですよ。「幸せのことを幸いって言っちゃうんだ(笑)」っていう。『銀河鉄道の夜』という話をコメディにした時に、その言葉を面白がる人間がいたら、より面白くするポテンシャルになるのではと思いました。

——共通している認識なのですね! まだ稽古に入っていないということですが、演じるキャラクターについてディスカッションはされたのですか?

上田:いえ、まだ何も。僕はインタビューのコメントとかで「こういうキャラクターにしようかな」と変えることも多いので(笑)、これからさらに肉付けしていきます。

——久保田さんは、ヨーロッパ企画の舞台に初出演。参加するにあたっての今のお気持ちを聞かせてください。

なぜ今『銀河鉄道の夜』を題材に? 音楽劇『たぶんこれ銀河鉄道の夜』久保田紗友・岩崎う大・上田誠インタビュー

久保田:前情報として「ここをコメディにする!? というところをコメディにしてしまう」と聞いていたのですが、過去作品を観て「なるほど、こういうことか~!」と一気に世界観に惹きこまれました。一方で今作に主演という立場で出演させて頂くことに、自分にやりきれるのか正直不安な気持ちもありますが、皆さんと一緒に舞台を作り上げられることが今からとても楽しみです。

——舞台には初参加ですが、以前、ヨーロッパ企画の酒井善史さんらが脚本を担当されたドラマ『ホリミヤ』に出演されていましたね。

久保田:そうなんですよ! そのドラマで鈴木仁くん(※)と共演していて、戸塚純貴さん(※)とも一緒にお仕事をしたばかりだったので、すごくご縁を感じています。初めての現場だけど、初めての感じがしない。実家に帰ってきた……みたいな。

(※鈴木さんはざきしょー役、戸塚さんはシゲフミ役で『たぶんこれ銀河鉄道の夜』に出演)

岩崎:実家? そこまで?(笑)

上田:戸塚くんや鈴木くんだけでなく、本当に濃いメンツをキャスティングしました。久保田さん演じるナオがデスゲームのような物語に入っていく上で、その状況にいたら楽しいだろうな~と思う人物設定になっています。

久保田:そうだ……デスゲームの物語なのに、実家に帰るとか言っちゃった(笑)。すみません!

岩崎:実家でのデスゲームが一番怖いからね(笑)

——どんな物語になるのか、今から楽しみでなりません。最後に是非、舞台にかける意気込みを聞かせてください。

岩崎:「幸(しあわせ)」を「幸(さいわい)」と読むなど、パワーワードが多い今作。どんな面白いセリフがあるのか、そしてどんな設定になるのか、僕自身も本当に楽しみです。是非劇場まで見に来てほしいですね。

久保田:ヨーロッパ企画の舞台は、スタッフ・キャスト全員が学生のように楽しんで作り上げていると風の噂で聞きしました。

上田:知らなかった。そんな噂があるんですか?(笑)

久保田:はい(笑)。主演のプレッシャーはもちろんありますが、上田さん、岩崎さんを始めとした面白いことが大好きな皆さんと一緒に、私も楽しみながら演じたいと思います。観劇して下さる皆さんにもその世界観を是非味わって頂けたらと思います!

なぜ今『銀河鉄道の夜』を題材に? 音楽劇『たぶんこれ銀河鉄道の夜』久保田紗友・岩崎う大・上田誠インタビュー

上田:深い闇の中から一筋の光を見出すように、探り探りで大きな『銀河鉄道の夜』というタイトルに向かって行かなければなりません。たくさんエネルギーを使って、苦労しての制作になるとは思いますが、このメンバーなら、この列車なら大丈夫! という謎の安心感がすでにあります。

——ちなみに『銀河鉄道の夜』を見たことない方も楽しめるものになりますか?

上田:それはもちろん。劇中で「『銀河鉄道の夜』とはこういう作品です」とフォローを入れて行くつもりなので、知らない方も楽しめるものにしたいと思っています。

——ありがとうございました!

オールナイトニッポン55周年記念公演
宮沢賢治「銀河鉄道の夜」より
『たぶんこれ銀河鉄道の夜』
〜The Night of the Milky Way Train(right?)〜

オールナイトニッポン 特別先行抽選受付(東京・愛知・高知・大阪公演)
受付期間:2022年12月1日(木)午前1時 ~ 12月8日(木)午前11時
受付URLhttps://w.pia.jp/t/tabun-gingatetsudo/ (全会場共通)
その他詳細は公式HP

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