さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、7月15日に公開された『ハローグッバイ』を掘り起こします。
孤独と秘密を抱える少女たちが見つける、本当の“絆”
クラスの中で目立つ存在だが、元カレとの間に子どもが出来てしまったのではないかと一人悩むはづき。
「委員長」と呼ばれる優等生だが、両親が仕事で忙しく、その寂しさを紛らわすために万引きを繰り返している葵。
高校二年生の二人は、同じクラスにいながらも“友達ではない”関係だった。ある日の学校帰り、葵は認知症のおばあさんとぶつかってしまう。
そこへ偶然通りかかったはづきと共に、道に迷ったおばあさんを自宅まで送りとどけることに。
それがきっかけで、世代を超えた不思議な“友達関係”が始まる。二人は想いを伝えきれなかった初恋の人にラブレターを渡したいというおばあさんのために、一緒に初恋の相手を探すことになるが…。
思春期の女子高校生の繊細な心模様を透明感あふれる世界観で綴った『ハローグッバイ』。
昨年の東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門で一足早く上映された青春ムービーが、この夏から全国順次公開となります。
監督を務めたのは、これが2作目となる菊地健雄。
細やかな人物描写には定評のある菊地監督。
女子高生ヒエラルキーの中で決して交わることのない葵とはづきが、認知症のおばあさんを通じて絆を深めていく様子は実に繊細。
シーンごとに見せる二人の距離感が素晴らしく、その関係性が時に生々しくスクリーンから伝わってきます。
まったく正反対な性格の主人公たちを演じるのは、ネクストブレイク必至の若手女優。
『昼顔』『心が叫びたがってるんだ。』と話題作への出演が続く萩原みのりと、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』で注目を集めた久保田紗友。
瑞々しさの中にも芯が通った存在感で観客を魅了します。
そして共演には、二人をつなぐおばあさん役をベテランもたいまさこ、おばあさんの旧友役に木野花、認知症の母に悩まされる娘役に渡辺真起子と実力派の女優が物語を支えます。
また人気グループ“超特急”の小笠原海やモデルとしても人気の岡本夏美をはじめ、若手女優・俳優たちが多数出演しているのも本作の魅力。
あなたが気になった“あの子”が近い将来人気者になる可能性大!です。
女子高生と、おばあさん。
SNSと、手書きの手紙。
お調子者と、優等生。
生と、死。
世代やツールは違っても、誰かとコミュニケーションを取りたいという思いは同じ。
そしていくつになっても答えが出ない「友達ってなんだろう」というテーマ。
「私たち友達だよね」と確かめ合うことが友達?
ひとりで過ごすのは“友達がいない”ということ???
本作が持つほろ苦さときらめきを通じて、改めて立ち止まって考えてみたいテーマです。
ハローグッバイ
2017年7月15日からユーロスペースほか全国順次公開
監督:菊地健雄
出演:萩原みのり、久保田紗友、渡辺シュンスケ、渡辺真起子、小笠原海(超特急)、岡本夏美、松永ミチル、望月瑠菜、桐生コウジ、池田良、川瀬陽太、木野花、もたいまさこ
©2016 Sony Music Artists Inc.
公式サイト http://hello-goodbye.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/