さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、7月22日から公開の『心が叫びたがってるんだ。』を掘り起こします。
言いたいことが言えない、伝えられないもどかしさを描いた青春群像ストーリー
人と本音で向き合うことが苦手な坂上拓実は、高校3年生。
ある日、クラスの担任から地域ふれあい交流会の実行委員に任命されてしまう。
一緒に任命されたのは、おしゃべりができない少女・成瀬順。
彼女は幼い頃に何気なく口にした一言が原因で家族がバラバラになってしまったことから、誰にも心を開かなくなってしまっていた。担任の思惑で、交流会の出し物はミュージカルに決定。
順と交流するうちに彼女の秘密を知った拓実は、歌なら自分の思いを伝えられるのでは、と提案。
順も拓実の言葉に勇気をもらい、幼い頃から心に閉じ込めてきた思いを歌に乗せて伝えようと、ミュージカルの作詞を手がけると同時に、ヒロインを演じる決意をする。同じく“ふれ交”の実行委員に選ばれた優等生の仁藤菜月、野球部の元エース田崎大樹と力を合わせ、本番に向けて準備をすすめていく4人。
しかし舞台当日、「やっぱり歌えない」と順が姿を消してしまい…。
2015年に公開された劇場版オリジナルアニメ「心が叫びたがってるんだ」、通称「ここさけ」が、ついに実写映画化となりました。
主人公の坂上拓実役には、人気アイドルグループ Sexy Zoneの中島健人。
いつもの王子様キャラを封印し、心に傷を抱える素朴な少年を繊細に体現。
一方、ヒロイン成瀬順役には芳根京子。
順の持つ葛藤や不安、もどかしさを表情豊かに表現した“黙する”演技が光ります。
さらに仁藤菜月役に石井杏奈、田崎大樹役に寛一郎と、若手実力派キャストが共演。
また荒川良々、大塚寧々といった大人キャストがしっかりと脇を固め、ストーリーに深みを与えています。
メガホンを取ったのは、『君に届け』や『虹の女神 Rainbow Song』など青春映画を得意とする、熊澤尚人監督。
実写ならではの生身の俳優が演じる躍動感を生かしながら、原作への愛情が随所に垣間見える、真摯な作風となっています。
俳優が演じることで生まれる“生身の躍動”。
これをいちばん体感出来るのが、クライマックスのミュージカルシーン。
本作のテーマである“伝えたい思い”がスクリーン狭しと溢れ出し、劇中ミュージカルのストーリーが進むとともにその“思い”がしっかりと観る者の心に響き、気がつくと頬に涙が…。
映画のキャラクターたちと同世代の若者はもちろんですが、実は数々の経験を経た大人世代ほど、本作が描くもどかしさや切なさにジワジワとくるのでは!?
他人に自分の思いを伝える大切さ。
時に相手を傷つけてしまうこともある、言葉の重み。
言いたいことが言えない、そのもどかしさを感じたことは誰にもあることではないでしょうか。
でも、「思ったことは声に出さないと伝わらない」。
このシンプルな事実と向き合った瞬間、あなたの“心が叫びたがっている”言葉は、なんですか?
心が叫びたがっているんだ。
2017年7月22日から全国ロードショー
監督:熊澤尚人
原作:超平和バスターズ
出演:中島健人、芳根京子、石井杏奈、寛一郎、荒川良々、大塚寧々 ほか
©2017映画「心が叫びたがってるんだ。」製作委員会 ©超平和バスターズ
公式サイト http://kokosake-movie.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/