さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、7月15日から公開となる『甘き人生』を掘り起こします。
イタリアの巨匠マルコ・ベオッキオが、近年のイタリアでもっとも売れた自伝小説を映画化
1969年、イタリアの古都トリノ。
9歳の少年マッシモの前から、突然母親がいなくなってしまった。
司祭からは母親は天国に召されたのだと諭されるも、マッシモはその事実を受け入れられず、喪失感に苛まれた。時を経て、90年代。
マッシモはジャーナリストとして成功を収めていたが、いまもなお母を失った過去の傷は癒えずにいた。
しかしサラエボでの紛争取材の影響でパニック傷害に起こし、駆け込んだ病院で精神科医のエリーザと運命の出会いを果たす。彼の苦悩を理解してくれるエリーザの愛情に触れることで、マッシモの心の氷は次第に溶け、自らの過去の傷と向き合っていくことに…。
イタリア映画界の巨匠、マルコ・ベロッキオの最新作は、イタリア人ジャーナリストのマッシモ・グラメッリーニによるベストセラー自伝小説の映画化。
第69回カンヌ国際映画祭の監督週間のオープニングを飾り、話題となった作品がいよいよ日本でも公開となります。
家族、母親、父親、そしてイタリア。
ベロッキオ監督が探求してきたテーマのすべてが本作中にあり、イタリア映画史に残る傑作とも呼ばれています。
主人公のマッシモを演じるのは、『おとなの事情』などイタリア映画界を代表する人気俳優ヴァレリオ・マスタンドレア。
エリーザ役には、その美貌と演技力が世界的に評価されているベレニス・ベジョ。
愛を失ってしまった男と愛情を捧げる女、二人が紡ぐ“愛の物語”からは芳醇な大人の香りが漂います。
同時に、希望に満ち溢れていた高度経済成長期の1960年代と先行きが不透明な1990年代を往来することで、戦後のイタリアの光と影を浮き彫りにしているのもベロッキオ監督ならでは。
熟練した演出力に、匠の技を感じざるを得ません。
邦題は『甘き人生』ですが、かなりビターテイストな本作。
しかし主人公が長い夢から覚め、自らの心の傷と向き合い、現実を受け入れたときに彼の中に残ったのは、甘美な思い出だったのでしょうか。
そんな余韻に身を委ねることが出来るのも、この映画の魅力なのかもしれません。
甘き人生
2017年7月15日からユーロスペース、有楽町スバル座ほか全国順次公開
監督:マルコ・ベロッキオ
出演:ヴァレリオ・マスタンドレア、ベレニス・ベジョ、エマニュエル・ドゥヴォス ほか
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公式サイト http://www.amakijinsei.ayapro.ne.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/