荒井秘書官の更迭だけではない メディアが報道しない岸田官邸の「荷崩れ状態」を示す「もう1つのこと」

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ジャーナリストの須田慎一郎が2月6日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。荒井総理秘書官の更迭について解説した。

荒井秘書官の更迭だけではない メディアが報道しない岸田官邸の「荷崩れ状態」を示す「もう1つのこと」

衆院予算委に臨む岸田文雄首相と荒井勝喜首相秘書官(右)=2023年1月31日午前、衆院第1委員室 写真提供:産経新聞社

岸田総理大臣が荒井勝喜総理秘書官を更迭

岸田総理大臣は2月4日、同性婚やLGBTQなど性的少数者について差別的な発言をした荒井勝喜元総理秘書官を更迭した。後任には経済産業省秘書課長の伊藤禎則氏を充てるとしている。

オフレコが通用しないことは過去に何度も経験しているはず

飯田)オフレコを前提とした記者団の非公式取材で出た発言だということです。

須田)最も重要な通常国会が開かれているなかで、この緊張感のなさはどうなのだろうと思います。そもそも、オフレコは成立していないわけではないですか。

飯田)オフレコは。

須田)この手の発言をすると、囲みの記者はオフレコを守るのだけれども、メモが新聞社に上げられた段階で、いとも簡単に幹部の判断でオフレコが破られるというのは、過去に幾度も経験してきたはずなのです。

同性婚、LGBTQに関しての発言はリスクがある ~ここでリスクを取りにいく緊張感のなさが岸田官邸の大きな問題

須田)発言には慎重にならなければいけません。ましてや同性婚、LGBTQに関連する問題はナイーブなものです。踏み込んだ発言をするとなると、かなりのリスクがあります。

飯田)この手のテーマに関する発言は。

須田)それが正しいか正しくないかではないのです。あえてここでリスクを取りにいく必要があったのかどうか、ということです。私はこの緊張感のなさが、岸田官邸のいちばん大きな問題点ではないかと思います。

この問題を放置すれば国会で突き上げられ、そこから更迭したのでは遅いので、週末のうちに更迭

飯田)危機感の部分は、支持率の問題などでもっとピリピリしているのかと思ったら、そうでもないのですか?

須田)野党が週明けの国会はこれ一色になると、安住淳国対委員長なども盛んに発信しています。

飯田)ツイッターや記者団の取材などにも答えています。

須田)このまま放置すると国会がこの問題で混乱し、「追い込まれて更迭を決定した」となれば、政権が受けるダメージは大きくなるので、間髪を入れず週末のうちに更迭したのです。

飯田)その前に。

須田)ダメージコントロールとしては、「とりあえずやった」という形にはなっていますけれども、例えば秘書官が外遊について行ってお土産を買ってきたという情報が、なぜ漏れているのか。あるいは秘書官がこういう問題発言をしたと考えると、いまの官邸はかなりおかしいですね。

飯田)総理云々ではなく、周りの方々が話題になってしまう。総理としても「何をしているのだ」ということになってしまいますよね。

「財源確保法案」を「日切れ法案」として出そうとしていた与党 ~予算成立と同時に成立させないと予算が執行できない「日切れ法案」

須田)もう1点、メディアは報道しないのですが、事実上の防衛増税を決定付ける財源確保法案があります。実はこれが「日切れ法案」の形で出そうになっていたのです。

飯田)日切れ法案として。

須田)予算関連法案だから、「年度内予算の成立と同時に成立させておかないと予算が執行できない」というのが日切れ法案です。ですから3月末で期限を区切り、審議しようという形で出そうとしたのですけれども、どう考えても財源確保法案は日切れ法案ではないのですよ。

「財源確保法案」は予算成立以降に決めても問題はない ~これをごり押しするのであれば国会審議に応じないと反発した野党

須田)これは、「いまやらなくてもいいだろう」というものです。

飯田)増税の期日について明言しているわけではないですものね。

須田)それ以外のところに関しても、予算が成立する4月以降に決めたところで、何ら予算執行上の問題は起こらないはずです。

飯田)予算が成立してから決めても問題ない。

須田)自民党内からも野党からも猛烈な反対があり、荒井秘書官の更迭問題だけではなく、先週末に開かれた国会対策委員長会談においては、これが大問題になっていたのです。

飯田)国対委員長会談で。

須田)財務省にいいようにやられているのではないかということです。財務省が入れ知恵して、「これは日切れ法案ですよ」と言い、そのまま額面通りに政府が受け止めてしまったから、日切れ法案という形で出そうとしていた。「何を考えているのか」ということで、野党と与党の間で「これをごり押しするのだったら、以後の国会で全部白紙撤回する」と、「国会審議に応じない」ということにまでなったのです。

飯田)日切れ法案として出すのであれば。

須田)実はこちらの方が大きな問題で、自民党内からも同様の指摘があり、結局は日切れ法案扱いにはしなくなったのですよ。

結局「財源確保法案」を日切れ法案にすることは撤回

須田)当然です。そんなものは日切れ法案でも何でもないのだから。

飯田)テーマが似ているもので法律をつくるとなると束ねてしまう、予算に関連するからといって全部一緒にしてしまうけれども、本来は別々に審議するべきものですよね。

須田)事実上の増税を決定づける重要な財源確保法案を束ねて、どさくさ紛れに成立させようとしていたのです。そのやり口はもうわかってしまっている。週明けの国会で大きな問題になりかかったけれど、撤回されました。

飯田)これはもう撤回されている。

須田)事実上の撤回になりました。やることなすこと全部、荷崩れ状態に陥っているのが実態ではないかと思います。

飯田)荷崩れ状態に。

須田)はっきり申し上げて相当な危機です。おそらく6日以降、メディアは秘書官の更迭問題ばかり取り上げると思いますが、それ以外のところでも官邸が大きく揺らいでいるのです。

すべてその場しのぎで荷崩れ状態

飯田)グリップできていない状態なのですか?

須田)国会を通じて、どういう形で法案審議を行うのか、成立の見込みはどうなのか。その「見通しを立てて与野党の間で駆け引きする、官邸が譲歩する」という中長期的な戦略のなかで、この更迭問題がどのように位置づけられるのか。戦略性があるわけではなく、すべてその場しのぎの対応になっているのです。

飯田)この危機において、それでいいのかという話です。

須田)加えて、いろいろな問題が噴出してきているわけですからね。

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