人民解放軍のスローガンを揶揄した芸人 北京市当局が罰金と公演中止を命じる

By -  公開:  更新:

外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が6月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国政府に天安門事件の真相公表や賠償を求める声明を発表した「天安門の母」について解説した。

人民解放軍のスローガンを揶揄した芸人 北京市当局が罰金と公演中止を命じる

中国人民解放軍の香港駐留部隊の基地で閲兵する中国の習近平国家主席=2017年6月30日(共同) 写真提供:共同通信社

天安門事件から34年 ~「天安門の母」が中国政府を批判

中国で民主化要求運動が武力弾圧された1989年の天安門事件から6月4日で34年を迎えるのを前に、犠牲者の遺族らでつくるグループ「天安門の母」は5月25日、116人の連名で中国政府に対し、事件の真相公表や賠償を求める声明を発表した。この1年で遺族7人が新型コロナウイルス感染などのために死亡した。

飯田)「8964」などの数字で表現されています。

宮家)あれから34年経ってしまったのですね。我々は映像で思い出しますけれど、今回の「116人の連名」というのは、実名を出したのでしょうかね。とにかく勇気ある行動です。

1990年ごろには中国社会にもいい意味での隙間と余裕があった

宮家)この種の抗議は1990年以降、ずっと行われているのだと思いますが、当時はまだ中国社会にもいい意味での「隙間」があり、「余裕」もあったのです。

飯田)あのころは。

宮家)弾圧はあっただろうけれども、何となくひと息つけるスペース、ないしは時間があったと思います。

人民解放軍のスローガンを揶揄した中国の芸人 ~約2億6200万円の罰金と公演の無期限停止

宮家)最近、中国から来るニュースを見ていると、かわいそうになってしまう部分があります。スタンダップ・コメディアンである1人の芸人さん、日本で言うところの「ピン芸人」が、習近平さんの人民解放軍について語った軍事スローガンをもじってジョークのネタにしたのです。

飯田)習近平さんのスローガンを。

宮家)それで笑いを取ったらしいのです。そうしたらネットでそれを批判する人がいて、拡散されてしまった。何が起きたかと言うと、習近平さんを揶揄しただけで、その芸人が所属する事務所には罰金1340万元(約2億6200万円)が科せられ、その芸人さんは無期限の公演停止に追い込まれたのです。

飯田)罰金2億円に無期限の公演停止。

宮家)そういう話が載っていました。文化大革命の時代ですら、もう少し余裕があったと思います。かわいそうです。

ロシアにもアネクドートなど、風刺はある ~中国にも以前はもっと笑いがあった

飯田)圧政の権威主義や共産主義のなかでも、ロシアのアネクドートなど、いろいろな風刺、冗談があるけれど、それすら許されない。

宮家)エジプトでもサダト大統領が殺されたあと、ムバラクさんが大統領になったけれど、ムバラク大統領のジョークはたくさんありました。

飯田)そういうものなのですね。

宮家)イラクにいたときには、サダム・フセインに関するジョークもありました。でも、あそこではあまり言うと、本当に殺されてしまうので……。

飯田)表立っては言わない。

宮家)でも、ありました。2000年に中国に行ったときも、当時の北京にはもっと笑いがあったと思います。表立って風刺はできないのだけれど、陰ではありました。今回はピン芸人が公演してしまったので、仕方ないと言えばそうなのですが、あわれです。

飯田)そういった冗談も許されなくなると、本当にギスギスしますよね。

習近平氏への忖度から北京市当局が罰金と公演停止を命じる

宮家)戦前の日本がどうだったのか、もう1回調べてみようと思います。

飯田)戦時歌謡的なものの替え歌を聞いたことがあります。

宮家)それで罰金約2億6200万円を取られたら、庶民としては息苦しくてガス抜きもできないではないですか。これを習近平さんが率先して行っているとは思えません。日本でも報道されていましたが、忖度です。

飯田)忖度。

宮家)北京市文化観光局がこの芸人を注意したわけです。北京で面白おかしく習近平さんを揶揄する芸人をそのままにして、「何をしているのだ、お前たち」と言われないように防衛線を張っているのです。それで苦労するのが芸人さんというのは、かわいそうな話だと思います。

飯田)庶民の鬱屈、マグマがどうなっていくかですよね。

宮家)流れとしては、国家総動員体制です。そんなことを中国でやって、何かいいことがあるのでしょうか。忖度をやめて、もう少し自由にさせなさいと思ってしまいます。

番組情報

飯田浩司のOK! Cozy up!

FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

番組HP

忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。

Page top