元内閣官房副長官補で同志社大学特別客員教授の兼原信克が8月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理が出席することが発表された日米韓首脳会談について解説した。

2023年5月21日、日米韓首脳間の意見交換～出典：首相官邸HPより（https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202305/21g7summit_outreach.html）

岸田総理大臣が日米韓首脳会談に出席へ

松野官房長官は7月31日、岸田総理大臣が8月17日からアメリカを訪問し、翌18日にワシントン近郊の大統領山荘キャンプデービッドで開かれる日米韓首脳会談に出席すると発表した。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮への対応や、覇権的な動きを強める中国、そしてウクライナ侵攻を続けるロシアを念頭に意見を交わす予定。

飯田）バイデン大統領が外国の首脳を「キャンプデービッド」に招待するのは初めてだということです。日米韓首脳会談ですが、直近では北朝鮮が弾道ミサイルなどを撃っていますから、その対応も含めてでしょうか？

尹政権になり、ここで日米韓を固める

兼原）日米韓だと、北朝鮮がいちばんの課題になります。あとは「NATOアジア太平洋パートナー（AP4）」でしょうか。日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国の4ヵ国の枠組みですが、AP4は太平洋側のアメリカの主要な友達ということになっていますから。

飯田）AP4。

兼原）韓国は左翼政権だと真逆を向くわけです。親北朝鮮・親中になってしまう。尹錫悦（ユン・ソンニョル）さんは右に振り切っていますから、ここで日米韓を固めたいのだと思います。

飯田）尹政権で。

兼原）これまでの韓国の大統領を含めると、西側として安心して見ていられる大統領は、保守の方へ振れていた李明博（イ・ミョンバク）さんと尹錫悦さんです。

飯田）西側が安心できるのは。

兼原）盧武鉉（ノ・ムヒョン）さんと、前の文在寅（ムン・ジェイン）さんは酷かったですね。どうしようもないという感じが少しありました。

30年間開いている日韓の政治情勢

飯田）「この5年間は仕方ないな」というような感じでしたか？

兼原）韓国は日本で言うと、50年代～60年代のような雰囲気があります。民主化したのは1987年ですので、それまでマルクス主義の人たちなどは、思想犯として投獄されていたのですよ。その人たちと学生が一緒に動いたのが80年代です。日本だと50年代～60年代ですので。

飯田）60年安保のころですね。

兼原）30年開いているのです。40歳～50歳代くらいの人が、こちらで言う全学連、全共闘のような人たちですので、激しいのです。日本のかつての社会党と自民党が、交代で政権を獲っているような感じです。

飯田）かつての社会党と自民党が。

兼原）北側を向いている政権のときは、どうしようもないですが、西側を向いている政権のときは一生懸命取り込みに入ります。尹錫悦さんは「韓国は大国だから西側の一員」というように思っているのかも知れません。日本で言うと中曽根さんのような感じでしょうか。

飯田）中曽根さん。

兼原）「西側の一員として動く」というようなところが少しあります。

2023年5月21日、日米韓首脳間の意見交換～出典：首相官邸HPより（https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202305/21g7summit_outreach.html）

李明博政権の際の日本と韓国のボタンの掛け違い　～親日だった李明博氏が竹島に上陸した本当の理由

飯田）李明博さんも、こちら側からすると最初はよかったけれど、最後は竹島に上陸するようなことがあって……。

兼原）あれは日本にも悪いところがあるのです。あの人は5年間、日本を大事にしてきた人です。明博は「あきひろ」ですから。あの名前は韓国にはないのです。

飯田）そうなのですね。

兼原）あの人は大阪生まれで「あきひろ」なのです。日本を大事にしてきて、最後の最後、慰安婦像が建つときに韓国のみんなが「行くな」と言ったのを振り切り、日本に来たのです。

飯田）振り切って。

兼原）しかし、野田さんの扱いが冷たくて、それで切れてしまった。「俺は5年間これだけ努力してきたのに、なぜなのだ」となってしまったのです。

飯田）その5年間を考えると、日本は1年ごとに総理が変わる5年間でしたね。その最後が野田政権でした。

兼原）慰安婦の件も、李明博さんはお金が欲しいわけではなく、元慰安婦の方々に温かいことを言って欲しかったのです。でも、「その話はまたゆっくりしましょう」と遮ってしまった。

飯田）日本側が。

兼原）慰安婦像が建って2～3日の時期、慰安婦問題で韓国が荒れ狂っていたときです。

飯田）かなり世論が沸騰している時期ですね。

兼原）私は当時、韓国公使だったので、空港へ李明博さんをお見送りに行きました。「大統領、行ってらっしゃいませ」と。「おう、行ってくるよ」という感じで行かれたのですが、日本にお帰りになったときはカンカンに怒っていました。お出迎えにも行きましたが、雰囲気が違っていましたね。

飯田）行きと帰りで全然違うのですね。

兼原）当時は日本政府側も怒らせてしまったのだと思いますよ。向こうは向こうで相当気を使っていたのです。直前には中国の胡錦濤さんの訪日がキャンセルになっています。「連続でキャンセルはあり得ない」と言って、李明博さんを一生懸命呼んだのですが、呼んだわりには扱いが悪かったところが少しありますね。

飯田）なるほど。1個1個のボタンの掛け違いですね。

兼原）外交は高いレベルでボタンを掛け違うと、あとが大変なことになります。

飯田）そこからずっと、ということですね。

兼原）そこから李明博さんは「5年間、日本を大事にしてきたのに、どうして？」と切れてしまったのです。

日米韓首脳会談の焦点は北朝鮮と中国、そして核

飯田）今回の日米韓首脳会談のポイントは、北朝鮮、中国などでしょうか。

兼原）あとは核ですね。

飯田）韓国にはアメリカの戦略原潜も行きました。

兼原）韓国は、北朝鮮が核を持っているので、核を持ちたいのです。

飯田）独自の核を。

兼原）アメリカはそれを絶対に許さないと言っているので、いろいろとやり取りがあるようです。だからアメリカは戦略原潜を持ち込んだ。バイデン政権ですので、アメリカは中距離ミサイルに核を搭載するという話にはなっていません。でも、どこかで核を積み始めたら、北が持っているので「韓国にも核を持ってきてくれ」ということもあり得ます。日本にも（核は）入っていませんから、「日本も一緒にやらないと」ということになるのかも知れません。