習近平政権 「身体検査部門」が弱くなっている
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戦略科学者の中川コージが10月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米上院の民主党トップと習近平氏の会談について解説した。
中国の習近平国家主席が米上院の民主党トップと会談
中国の習近平国家主席は10月9日、中国を訪問中の米上院・民主党トップ、シューマー院内総務率いる超党派の議員らと会談した。このなかで習近平氏は「中国とアメリカは平和的に共存すべき」と述べた。
将来的にアメリカを超えるために「いまは笑顔で接する」中国
飯田)焦点となっているのは、11月半ばにサンフランシスコで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)です。ここで米中首脳会談も行われるのではないかと言われていますが、どうご覧になりますか?
中川)前回、首脳会談が行われたときに印象的だったのは、新華社が伝えていますが、両方とも破顔だったことです。これは中国側の「ここで衝突を起こさずにいきたい」という大きなメッセージです。
飯田)中国側のメッセージとして。
中川)平和主義ということではなく、「ここで一戦を交えるのはよくない」という態度の表れなのですが、いずれにしても中国のトレンドとしては、アメリカとの緊張を高めるより、「将来的にアメリカを超えるため、いまは笑顔でいこう」という態度です。これがいまのトレンドですので、大前提として「いますぐにアメリカと事をかまえるわけではない」というのは重要なところです。
内政的な部分で「笑顔で首脳会談を行っている」ことを示すことが重要
中川)その前提のなかで細かく話さなくてはいけない内容については、当然ながら首脳会談のなかで話した方がいい。中国側としても、会って具体的に何かを詰めるかどうかは別にして、笑顔でもう1度会うのはいいことではないか、というところではないでしょうか。
飯田)中身うんぬんというよりは、「笑顔を見せておかないと」ということですか?
中川)対外的というよりも内政的な部分で重要な要素になりますので、それを示しておきたいのだと思います。
制裁を掛けられ、国内にまん延している不安感を払拭するためにも「大国外交をきちんと行っている」ことを見せることは内政的にプラス
飯田)内政的というのは、「アメリカときちんと対等に話せている」ことを見せたいわけですか?
中川)中国の人民のなかには「孤立しているのではないか」という思いがあります。制裁を掛けられて「これから立ち行かなくなるのではないか」というような不安がまん延しているので、「いやいや、それは大国外交としてきちんと対処している」ということを見せるのは、内政的にはプラスになると思います。
飯田)なるほど。
中川)北戴河会議でいろいろあったように強硬派もいますので、指導部、特に習近平氏個人としては、その辺りの舵取りが大変だと思います。ただ、前回は笑顔で首脳会談を行っているので、今回いきなり仏頂面で進めるとは考えにくいです。
飯田)「1年で何が変わったのだろう?」と思ってしまいますね。
中川)そうですね。ですので、笑顔の画を出してくるのではないでしょうか。
かつてほど北戴河会議での長老の発言力は大きくない
飯田)かつての北戴河だと、OBの発言力は大きかったようですが、習近平体制になってからはどうなのでしょうか?
中川)正直に言いますと、伝わってくるのはあくまでも噂ですので、誰にもわかりません。しかも、当然ながら情報機関の話など、噂自体にいろいろなものが混ざっていますので、取捨選択することも難しい。ただ、間違いなく言えるのは、革命第一世代の人たちは高齢化が進んでいます。例えば、江沢民や胡錦濤の時代は10~20年前ですから、単純に年齢増があるわけです。
飯田)そうですよね。
中川)革命第二世代になってくると、格としては落ちてきます。その辺りの長老のレベル感は落ちてきているのではないでしょうか。革命から考えても何十年も経っていますので……。老舗企業のような感じですね。
飯田)その時代から70年以上も経っています。
中川)「大ボスの経営陣もだいぶ退いてしまった」というような状況だと思います。
身体検査部門が弱くなっている
飯田)国内の強硬派のような人たちよりは、「ここはまだ抑えていこう」という人たちが多くなってきているのでしょうか?
中川)党内の民主がどれだけ高まっているかはわかりません。いま言われているのは、「習近平1強になったから弱いのだろう」ということです。集団指導体制ではなくなったからだと。逆に言えば、習近平氏自身もそれを理解していると思います。1強になり、イエスマンばかりになってしまうということを。
飯田)本人も理解している。
中川)ですから、その辺りの再配置のようなものを行う必要がありますし、外相や国防相がパージされてしまったのは明らかに異例です。「どこが問題なのか」と言うと、長老などよりも、身体検査部門が弱いのではないかと思います。
飯田)身体検査部門が。
中川)規律に関する部門ですね。この間、トップ24人の政治局委員に対し、中央巡視組という、いわゆる「腐敗Gメン」の第1回目の報告会がありました。規律部門をもう少しきちんと締めていかなければならないのでしょう。身体検査が弱くなっていることは、習近平氏自身も感じていると思います。
飯田)身体検査や規律のようなものは、習近平氏が1~2期目で武器にしたところですよね。
中川)そうですね。
飯田)王岐山氏を使ったりしていましたが、そこがいま弱くなっているのですか?
中川)弱くなっています。去年(2022年)、配置替えをしたときは当然、それを理解しながら人事を組んでいきますので、そこで失敗したのです。
飯田)外相や国防相を。
中川)パージするならば、もっと前にパージしておけばよかったわけです。その辺りのシステムがきちんとされていないことは、習近平氏を苛立たせる原因でもあるでしょうし、それは中央の組織部や規律検査部門が担当するのだと思います。内政的には、組織の再強化が必要になります。
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