2024年を賑わせたニュースと映画たち
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Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1225回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
2024年も残りわずかとなりました。
皆さんにとって、どのような一年でしたか? 一年間の世相を漢字ひと文字で表す「今年の漢字」。2024年に選ばれた漢字は、「金」でした。オリンピック・パラリンピックでの日本人選手やMLB大谷翔平選手など、スポーツ選手の活躍が光をイメージさせたという「金(きん)」。そして、政治の裏金問題などの影を感じさせる「金(かね)」。この2つの意味があるとのこと。
そこで今回は、2024年年末特集。私、八雲ふみねが印象に残ったニュースを振り返りながら、それにまつわる映画をご紹介します。
『SHOGUN 将軍』エミー賞受賞の快挙!
日本人の俳優が、次々と海外の作品に進出。そして日本映画の海外での評価がますます高まった2024年。
「第96回アカデミー賞」では、山崎貴監督の『ゴジラ -1.0』がアジア映画では初となる視覚効果賞を、また宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』が長編アニメーション賞を受賞。日本発の2作品がオスカーに輝いたというニュースは、記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。
そんな中で、私にとって特に強く印象に残っている出来事といえば、真田広之プロデュース・主演のドラマ「SHOGUN 将軍」がエミー賞を受賞したことです。
エミー賞とは、米国テレビ界の“アカデミー賞”ともいわれている最高峰の賞のこと。「SHOGUN 将軍」は作品賞、主演男優賞(真田広之)、主演女優賞(アンナ・サワイ)をはじめ、エミー賞史上最多となる18部門を受賞。まさに、SHOGUNの天下獲りのごとき快挙を成し遂げたのです。
1600年代、天下分け目の戦い前夜の日本が、ハリウッドによって圧倒的なスケールで映像化された「SHOGUN 将軍」。外国人で初めて“侍”になった実在のイギリス人航海士・三浦按針の視点から日本の戦国時代を描いた時代劇ドラマです。
映画『ラストサムライ』への出演を機に、ハリウッドに進出した真田広之さん。『ウルヴァリン:SAMURAI』や『47RONIN』、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』など、これまで数多くのハリウッド映画に出演。スピード感溢れるアクションで、観客を魅了し続けてきました。
ハリウッドによって描かれる“日本”は、文化や解釈の違いからか、私たち日本人から観ると、どうにも違和感が残るものが多かった。
しかし、本作ではプロデューサーも務める真田さんが、日本からスペシャリストを呼び寄せるなど、戦国時代の実像を正しく描くことを徹底。日本の伝統美とハリウッドのスケール感が融合した、新たなスタイルの時代劇を作り上げました。
エンターテンメントの中心であるアメリカから、日本文化を世界に向けて発信する。真田広之さんの悲願が結実した一作と言えるでしょう。
ちなみに『SHOGUN 将軍』は、先日発表された「第82回ゴールデングローブ賞」のドラマ部門では、作品賞、主演男優賞(真田広之)、主演女優賞(アンナ・サワイ)、助演男優賞(浅野忠信)と、4部門にノミネートされています。
授賞式は、日本時間の2025年1月6日に開催予定。『SHOGUN 将軍』の歴史的快挙は、まだまだ続きそうですね。
『レディ加賀』:能登半島地震から、まもなく1年。1日も早い復興を……
2024年1月1日、石川県能登半島地方においてマグニチュード7.6の地震が発生。元旦に流れた大地震のニュースに、耳を疑った人も多かったことでしょう。能登地方をはじめ、石川県は、様々な映画・ドラマ・アニメの舞台となっています。
是枝裕和監督の映画監督デビュー作『幻の光』、原作漫画の舞台でもある石川県七尾市で撮影された青春映画『君は放課後 インソムニア』、モノづくりの楽しさや苦しみに焦点を当てたアニメーション映画『数分間にエールを』。
そして、2024年に公開した『レディ加賀』も、石川県の加賀温泉郷を舞台とした映画です。
本作の完成披露上映会は、2024年の元旦に起こった地震から約2週間後に東京で開催されました。現地は地震の影響を受けて、まだまだ混乱している状況。そんな中で舞台挨拶の司会を務めることになった私は、どんな心持ちで臨むべきか考えたことを、つい昨日の出来事のように思い出されます。
本作は、石川県加賀市を舞台に、地元の温泉街を再生するために、若女将たちがタップダンスチームを結成。
前代未聞の町おこしに奮闘する物語。加賀温泉郷の女将さんたちによる実在のプロモーションチームから着想を得て制作されました。劇中では、次のようなセリフがあります。
「加賀温泉には過去3度の危機があった。(2007年に起きた)能登半島地震、東日本大震災、そしてコロナ禍」
度重なる危機を乗り越えようとするパワフルな姿に、観ているこちらまで元気が湧いてくる一作。それと同時に、能登半島地方の1日も早い復興を願ってやみません。
『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』アメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ氏が当選!
4年に一度のアメリカ大統領選挙が行われた2024年。ドナルド・トランプ元大統領が第47代アメリカ大統領に返り咲くという結果になりました。
大統領就任式は、2025年1月20日に行われる予定。トランプ氏がどのように手腕を振るっていくのか、その動向に注目が集まっています。
ところで選挙戦の最中、一本の映画が話題になっていたことをご存知でしょうか。タイトルは、『The Apprentice』。若き日のドナルド・トランプ氏の姿を描いた衝撃作です。
本作は、2024年「第77回カンヌ国際映画祭」で公式上映。アメリカでは、大統領選挙直前の10月11日に全米公開されました。
本作の存在を知ったトランプ陣営は、制作チームに上映停止命令の手紙を送り、トランプ氏本人もSNS上で、脚本家に向けて怒りの投稿を発信していたことが、日本のメディアでも取り上げられました。
それもそのはず。本作に登場するのは、規格外の行動や発言を繰り返す“怪物”でなく、気弱で繊細な青年実業家だった頃の20代のトランプ氏。彼にとって、暴かれたくなかった過去が明らかとなっている作品だということを窺い知ることができます。
日本での公開は、大統領就任式直前の2025年1月17日から。何かと話題を振りまくトランプ氏ですが、年明け早々、外せない一本です。
2024年も残すところあと数時間。今年もニッポン放送 NEWS ONLINE「Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね」をご愛読いただき、誠にありがとうございました。
この映画コラムがきっかけに、“とっておきの一本”に出会えた人が一人でも多くいたならば嬉しい限りです。
2025年もどうぞよろしくお願いいたします。良いお年を!
<作品情報>
SHOGUN 将軍
ディズニープラスの「スター」にて独占配信中
出演:真田広之 コズモ・ジャーヴィス アンナ・サワイ 浅野忠信 金井浩人 平岳大 穂志もえか 西岡德馬 阿部進之介 竹嶋康成 倉悠貴 二階堂ふみ
エグゼクティブ・プロデューサー:ジャスティン・マークス レイチェル・コンドウ ミカエラ・クラベル エドワード・L・マクドネル マイケル・デ・ルーカ
プロデューサー:真田広之
制作:FXプロダクション
原題:SHOGUN
配信:ディズニープラス
(c) 2024 Disney and its related entities
Courtesy of FX Networks
公式サイト https://disneyplus.disney.co.jp/program/shogun
<作品情報>
レディ加賀
Blu-ray&DVDリリース デジタル配信中
出演:小芝風花 松田るか 青木瞭 中村静香 八木アリサ 奈月セナ 小野麻里奈 / 佐藤藍子 篠井英介 森崎ウィン / 檀れい
監督:雑賀俊朗
脚本:渡辺典子 雑賀俊朗
主題歌:眉村ちあき「バケモン」(トイズファクトリー)
特別協賛:加賀市
特別協力:北國新聞社
後援:石川県・金沢市
配給:アークエンタテインメント
(C)映画「レディ加賀」製作委員会
公式サイト https://ladykaga-movie.com/
<作品情報>
アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方
2025 年 1 月 17 日(金)TOHO シネマズ日比谷ほか全国公開
監督:アリ・アッバシ
脚本:ガブリエル・シャーマン
出演:セバスチャン・スタン ジェレミー・ストロング マリア・バカローヴァ マーティン・ドノヴァン
原題:The Apprentice
配給:キノフィルムズ
(C)2024 APPRENTICE PRODUCTIONS ONTARIO INC. / PROFILE PRODUCTIONS 2 APS / TAILORED FILMS LTD. All Rights Reserved.
公式サイト: https://www.trump-movie.jp
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/