Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1233回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、現在公開中の『誰よりもつよく抱きしめて』と『聖なるイチヂクの種』をご紹介します。
![(C)2025「誰よりもつよく抱きしめて」HIAN /アークエンタテインメント](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2025/02/01-1.jpg)
画像を見る(全13枚) (C)2025「誰よりもつよく抱きしめて」HIAN /アークエンタテインメント
『誰よりもつよく抱きしめて』愛してるからこそ、もどかしく切ない……
新堂冬樹が2005年に発表した同名小説を、『ミッドナイトスワン』『サイレントラブ』の内田英治監督が実写映画化した『誰よりもつよく抱きしめて』。
強迫性障害による潔癖症を患い、すべてのものに直接触れることが出来なくなった絵本作家と、その恋人。触れたくても触れられない2人の切なくも美しい恋模様が映し出された純愛ラブストーリーです。
『誰よりもつよく抱きしめて』のあらすじ
海沿いの街で同棲している絵本作家の水島良城と、絵本専門店で働く桐本月菜。お互いのことを大切に思い合っている2人だったが、彼らの生活は普通のカップルとは大きく異なっていた。
良城は強迫性障害による潔癖症が影響して、すべてのものに直接触れられない。月菜とは手を繋ぐことさえ出来なかった。
勇気を出して症状と向き合うことを決意した良城は、心療内科を受診。そこで同じ症状に悩む女性・村山千春と出会い、思いを共有するうちに千春との距離を縮めていく。
良城と千春の仲睦まじい姿に嫉妬を隠せない月菜。そして月菜もまた、恋人と触れ合っても心が動かないという男性・イ・ジェホンと出会い……。
『誰よりもつよく抱きしめて』のみどころ
水島良城役はBE:FIRSTのRYOKIこと三山凌輝。ステージでは明るく華のあるパフォーマンスを披露する彼ですが、本作では強迫性障害に対するもどかしさや葛藤を内在させた青年という、自身とは異なるイメージを持つキャラクターを好演しています。
桐本月菜役には、久保史緒里(乃木坂46)。愛する人に触れられないことへの苦しみや悲しみを繊細に表現し、俳優としてのさらなる魅力を放っています。
また月菜に思いを寄せる韓国人イ・ジェホンに扮する2PMのファン・チャンソンが、どこか影のある男性をミステリアスに演じていることにも注目です。
図らずも、メインキャストとなる3人は全員、ダンス&ボーカルグループのメンバー。アーティストとしても活動する彼らの精妙な演技が、作品の世界観をより切なく美しいものへと昇華させています。
複雑な人間模様とともに印象的なのが、作中に登場する絵本。劇中には良城が描いたとされる「空を知らないモジャ」という絵本が度々登場するのですが、そのストーリーが良城や月菜が置かれている状況と交差しているようで、思わず、胸を打たれてしまうことでしょう。
思えばコロナ禍は、家族や友人さえも距離を取らなければいけない、容易に触れられない。そんな時期でした。人との距離感を意識せざるを得なくなったことに戸惑いを覚え、不安を抱えた人も多かったのではないでしょうか。
魅力的なラブストーリーであることはもちろん、現代人の心の奥底にそっと寄り添ってくれるヒューマンドラマとしても見応えある一作です。
『聖なるイチヂクの種』1丁の銃が家族の本性を暴いていく……
「第77回カンヌ国際映画祭」で審査員特別賞を受賞。そして「第97回アカデミー賞」では、長編国際映画賞にノミネート。
家庭内で消えた1丁の銃をめぐり、家族の間に不信感が広がっていく様子を描いたサスペンススリラー『聖なるイチヂクの種』。
本作を手がけたのは、イラン出身のモハマド・ラスロフ監督。彼は自作映画でイラン政府を批判したとして、8年の禁錮刑と鞭打ちの有罪判決が下る中、国外へ脱出。本作をカンヌ国際映画祭に出品しました。
ラスロフ監督が命を懸けてまで世界に問いかけることとは。その真実を目撃して。
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(C)2025「誰よりもつよく抱きしめて」HIAN /アークエンタテインメント
<作品情報>
誰よりもつよく抱きしめて
全国公開中
出演:
三山凌輝 久保史緒里(乃木坂 46)
ファン・チャンソン(2PM)
穂志もえか 永田凜 北村有起哉 北島岬 竹下優名 酒向芳
監督:内田英治
原作:新堂冬樹「誰よりもつよく抱きしめて」 (光文社文庫)
脚本:イ・ナウォン
主題歌:「誰よりも」BE:FIRST(B-ME)
製作:HIAN アークエンタテインメント
配給・制作プロダクション:アークエンタテインメント
(C)2025「誰よりもつよく抱きしめて」HIAN /アークエンタテインメント
公式サイト https://dareyorimo-movie.com/
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<作品情報>
聖なるイチヂクの種
2025年2月14日(金)から TOHO シネマズシャンテほか全国順次公開
監督・脚本:モハマド・ラスロフ
出演:ミシャク・ザラ ソヘイラ・ゴレスターニ マフサ・ロスタミ セターレ・マレキ
原題:The Seed of the Sacred Fig
配給:ギャガ
公式サイト https://gaga.ne.jp/sacredfig/
(C)Films Boutique
連載情報
![](https://news.1242.com/wp-content/themes/news1242_PC/img/prof_cinema.jpg)
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/