#1 高橋由伸(巨人)開幕戦 初球先頭打者HR

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#1  高橋由伸(巨人)開幕戦 初球先頭打者HR

 

◎2007年3月30日 横浜スタジアム

巨人 1 0 0 2 0 0 0 0 0 = 3

横浜 1 0 1 0 0 0 0 0 0 = 2

HR (巨人)髙橋由1号 李承燁1号 ゴンザレス1号

 

「今、球審の右手が上がりました。2007年開幕戦、横浜-巨人、三浦投げた! ……打った! ライトへ大きな当たりだ! ライト、バック! バック! 拳を突き上げた! 由伸、オープニングアーチ!!! 入ったー!!! いきなりの先制パンチ! 開幕1番・由伸やった! 番長の初球をとらえた! ライトスタンド、打った瞬間、文句なし!!」

 

試合開始直後いきなり、ニッポン放送・松本秀夫アナウンサーの絶叫がラジオから響きわたった。初回先頭打者アーチは別に珍しくないが、その年のオープニングゲームで、球審が「プレイボール!」を告げた直後に、先頭打者が初球をスタンドに叩き込んだ「開幕戦・初球先頭打者ホームラン」は極めて珍しい。長いプロ野球の歴史の中でも、1962年に阪急・衆樹資宏(もろき・すけひろ)が南海との開幕戦で打って以来、実に45年ぶり2度目のレア記録で、セ・リーグでは初の快挙だった。

 

この年、開幕早々さっそく“大仕事”をやってのけた高橋由伸(以下「由伸」)は、この年がちょうどプロ10年目のシーズンだった。1年目から主力として攻守に活躍した由伸だが、外野守備の際、フェンスへの激突を恐れないプレーで負傷するシーンがしばしばあった。それでも若い頃はすぐ復帰して試合に出ていたが、さすがに30代になると厳しくなる。2005年・2006年と出場試合が100試合を割り2年連続で規定打席に達しなかった。つまりこの年、由伸は背水の陣で10年目のシーズンに臨んでいたのである。

 

一方、巨人軍を率いる原辰徳監督は、指揮官復帰2年目(第2次政権)のシーズン。復帰1年目の2006年は4位で2年連続Bクラスに沈み、2007年は5年ぶりのペナント奪回が至上命題だった。そこで2006年オフ、日本ハムの44年ぶり日本一に貢献しパ・リーグMVPに輝いた小笠原道大をFAで獲得。さらにオリックスからトレードで谷佳知を譲り受け、開幕戦では2番・谷、3番・小笠原、4番・李承燁(イ・スンヨプ)、5番・ゴンザレス(新外国人)という強力打線を組んだ。

 

V奪回への残るピースは、彼らの前にチャンスメイクしてくれる“斬り込み隊長”の1番打者だ。主軸が外様の選手ばかりなので、ここは生え抜きを起用したいところ。そこで原監督が白羽の矢を立てたのが、由伸だった。

 

実は由伸、1番はそれまでプロではもちろん、大学・高校時代にも打ったことがなかった。だが相手投手から見ると、これまでジャイアンツ打線の中軸を担い、一発もある由伸がいきなり打席に立ったら、これは結構な脅威だ。原監督は「今年こそは!」と復活に懸ける由伸の意気込みも買い、斬り込み隊長役を彼に託した。

 

迎えた横浜との開幕戦当日。ビジターゲームなので、いきなり打席に立つことになった由伸は、前夜から横浜の開幕投手、“番長”こと三浦大輔が初球、どんな球を投げて来るかを予想していたという。自分は積極的に打ってくるバッターだということを当然三浦もわかっている。まずはストライクを取ろうと、初球はおそらく外からストライクゾーンに入ってくるスライダーを投げるに違いない……

 

この予想がみごとに的中。初球、三浦が投じた外角から真ん中に入ってきた緩いスライダーを、由伸は「待ってました!」とばかりに強振すると、打球はライトスタンドへ一直線。プレイボールからわずか10数秒後、鮮やかな先制パンチが決まった。巨人はその後、李とゴンザレスにも一発が出て3−2で勝利。得点はすべてホームラン。超攻撃型打線を象徴する開幕戦勝利だった。この「1番・由伸」が当たり、巨人はこの年、落合博満監督率いる中日との競り合いを制して5年ぶりのV奪回に成功している。

 

なお由伸はこの年、大きな故障や長期離脱もなく133試合に出場。3年ぶりに規定打席に達し、打率.308と同じく3年ぶりに3割をマーク。みごと復活を遂げただけでなく、この年なんと9本の「先頭打者ホームラン」を記録。これはシーズン日本記録として現在も破られていない。開幕戦での歴史的一発は、天才打者の復活を告げるノロシでもあった。

 

<チャッピー加藤>

 

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