子どもたちの震災体験を5年経った今に語る。これからの命を救うために。

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あの日、終業式間近の小学校5年生も東日本大震災を体験した。
避難先の学校の3階から1階の昇降口に1人で降りた少年を津波が襲い、目の前で避難中の大人が流された。あの時、手を伸ばしたら助かっていたかもしてない。
少年は今もそう思う時がある。また学校3階の図書館から車ごと流される人も目撃した。3日後自宅の様子を見るため1人校舎を出た。そこで車ごと流された人が車の中で亡くなっているのを見つけ、近くで救出活動をしている大人に声を掛け亡くなった人がここにいるという印の「赤い旗」を立ててもらった。

小学校の音楽教室で震災を体験した小学5年生の少女は内陸にある母方の祖母の家に避難した。やがて住んでいた自宅は津波で流されたことを知る。震災から続く避難生活に当初は内心うきうきしていた。震災が原因ではあったが生活環境が激変したことによるハネムーンフェーズという心境だった。しかし流されて跡形もなくなった自宅を見たり、友人の葬儀に参列する中で大変なことが起きたという現実を実感していく。4月に入り、やがて小学校は授業を再開するが教室では被災した仲間を傷つけないよう災害の話はしないように指導された。被災した子どもと被災を免れた子どもの間には溝が広がっていく。小学6年生になった子どもたちの心は荒々しくなっていく。小学6年生になった少女は友人の心ない発言に怒りがこみ上げ、近くにあった机を投げ飛ばしてしまう。

同じく小学5年生で被災した少女は震災で親友と愛犬を失った。やがて中学生になり、それまでの親友とはクラスもクラブ活動も別々となり、不安な想いを話せる友人がいなくなった。少女は小学時代の親友の死も受け入れられずどんどん1人の世界に入っていく。「生きていても仕方ない」そんなことが頭をかすめた。そんな少女を救ってくれたのは、中学での生徒会活動で出会った友人との語らいだった。そして中学生になった彼らは高校生が行っていた震災シンポジュームに参加し、震災活動を語り継ぐ高校生の活動に衝撃を受けた。震災体験は「話していいんだ!」むしろ話すことが未災地=(まだ震災に遭っていない地域)の人の役に立つ。そう実感した。

高校生になった彼らは震災体験を語り継ぐ「語り部」の活動を始めた。
あれから5年が過ぎた。
成長した彼らは「同じ思いをして欲しくない。」「同じ犠牲を繰り返してはいけない。」という強い思いがある。一方で彼らの心には消えない傷も残っている。「親友の死を受け入れらない。」「あの人を見殺しにしたかもしれない。」などなどーー。
でもそんな思いや体験を話すことが心の解放につながり人の役に立つことを知った。
番組では高校生になった彼らが震災と向き合うようになった心の変遷と彼らの語り部としての活動を紹介していく。

これまで、当時小学生だった子どもたちが震災後どういう体験をしてどういう小学校生活を送ってきたのかについてあまり語られることはなかった。番組では高校生になった彼らが当時の体験や想いを率直に語っている。
また辛い体験を話すことは大人にとっても重要だと訴える医師がいる。宮城県名取市で心療内科医として800人以上の患者の心のケアにあたった桑山紀彦医師だ。「話すことで前向きになれる」と言う。

東日本大震災は彼らに多くのことを教えてくれた。彼らの想いや体験、教訓が多くの人に伝わればー語り継がれればーもし1,000年後に同じような大震災が起きてもきっと多くの命を救うことにつながる!
この番組「子どもたちの震災~しゃべっていいんだ」は、彼らのそういう願いが込められている。

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今年5月に放送され、第12回日本放送文化大賞でグランプリを受賞した「子供たちの震災~しゃべっていいんだ」を再放送をお送りする。

番組名:子どもたちの震災~しゃべっていいんだ
放送日:12/31(土)14:00~15:00
出演:上柳昌彦(ナレーション)、雁部那由多、津田穂乃果、桑山紀彦、相澤朱音

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