本日11月2日は元プリプリのギタリスト中山加奈子の誕生日
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【大人のMusic Calendar】
夕暮れ時、母が買い物に出かけたのを確認すると15歳の私は自分の部屋の雨戸をガタガタと閉め始める。大好きなロックンロールを爆音で鳴らすためだ。ターンテーブルの上で回り続ける黒い円盤に乗って私の旅が始まる。日常ではないどこかに連れて行ってくれるそのリズムと音は、学校にも友達とのおしゃべりにもテレビの中にも無い、世界一カッコいい世界を見せてくれた。
今日で53歳になった私は、今もその旅の途中だ。何度か引き返そうと思った事もあったが出来なかった。新しい景色が広がるたびに胸が高鳴り、その次が見たくなる。人からは時々「続けてるってエラいね」などと言ってもらうことがあるが、決してそうではない。単にあきらめが悪い性分なのだ。
18歳から31歳まで活動していたプリンセス・プリンセスは本当に沢山の方に愛して頂いたバンドだ。初期はバンド名が違いその後2回改名し、事務所も2回変わった。最初の頃はライヴをしてもお客さんはまばらで座ったまま。それがある時から一人立ち上がってノッてくれるようになり二人になり。次に行ったときは動員が倍に、また倍にと増えて行った。2012年の1年間と’16年の春に期間限定で行った、東日本大震災復興支援の為の再結成の活動も含め、20代の全てを夢中で駆け抜けたあの時期に私が見せてもらった景色や貴重な経験はまさに人生の宝物である。
プリプリ解散後、私は34歳で新しいバンドを始める事になる。それが今年結成18年を迎えたVooDoo Hawaiiansだ。プリプリの活動期間が13年間だった事を思うと、なんと長く続いているバンドだろうと改めて思う。この間にはもちろんそれなりに様々な事があった。全速力で走ったり転んだり少し休んだりまた活発に動きだしたり。またVDHは事務所やレコード会社に所属していないので活動のすべては自分たちで行なわなくては事が進まない。ライヴがやりたい、ツアーに行きたい、新作CDを出したい、それを1つずつ実現する為には当然のことながら裏で数十倍の作業が必要になり、時々疲れてしまう事もある。でもそんなことは良いライヴが出来た時に一瞬で吹き飛んでしまうものだ。
VDHが活動を続け成長してゆく中で、私自身もかなり変化して行ったように思う。昔好きだった音楽はそのままに、好きなものがどんどん増えて行ったのだ。ロックンロール以外にも好きな曲やシンガーやミュージシャンが沢山出来た。知れば知るほど数珠つなぎに新しい音との出会いが訪れ、また胸が高鳴る。このロープの先端を握って私をおびき寄せているのは何者なのだろうと時々思う。たぶんあの日、私が乗り込んだこの黒い円盤を遠隔操作している人と同じ人に違いない。相変わらず旅は続いている。
今VooDoo Hawaiiansは新しいミニアルバムのレコーディング中だ。完成したらきっとまたツアーがやりたくなり、次の新作が出したくなるのだろう。バンドはどんどん成長してゆく不思議な生き物だ。そしたらまたライヴをやりツアーに出て、また新作を。この日々の向こうに、まだ新しい景色がそこにあるなら、是非とも死ぬ前に見ておきたいものだ。我が人生の後半をそんな風に過ごしてゆければ良いなと言う願望を込めて今、頭に浮かぶのはやはりこの一言に尽きる。
やっぱり私はあきらめが悪いタチなのである。
【リリース情報】
12月21日
VooDoo HawaiiansのNEWミニアルバム &『4our』再発、同時2枚リリース【ライヴ情報】
11月11日 (土) 安城昭林公民館ホール
11月12日 (日) 岡崎Boppers
11月25日 (土) 下北沢CLUB251『Newミニアルバム発売 & 4our再発記念ワンマンライブ』【オフィシャルサイト】
● VooDoo Hawaiiansオフィシャルサイト
● 中山加奈子オフィシャルサイト【著者】中山加奈子(なかやま・かなこ):元プリンセス・プリンセスのギタリスト。在籍中は「ダイアモンド」「ジュリアン」「パパ」などの作詞も担当。解散後ソロ活動を経てVooDoo Hawaiians結成。ヴォーカル&ギターを担当する。その傍ら作詞家としての作品提供、執筆、作詞プロデュースなどを行う。