20年前の本日、第39回日本レコード大賞を受賞した安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」

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【大人のMusic Calendar】

大晦日恒例の「レコ大受賞曲」にスポットライトを当てるシリーズ、今回はぐっと時代が新しくなって1997年(平成9年)の大賞受賞曲、安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」を取り上げてみよう。

おおっと、平成9年なんて最近じゃん、なんて早くも脳内に異議の声が響いてきてますが、考えてみればこの曲がヒットした年に生まれた者は、今日の段階で一人残らず選挙投票権を手に入れている。もう「大人」の仲間入りではないか。当時中高生だった皆さんも、もう成熟したいい大人だ。そして、この曲を20年前に歌った安室奈美恵は、今年静かに歌姫の女王の冠を置くことを決意し、来年での引退を表明した。スーパーモンキーズでのデビューから数えると25年目だ。ここまで長きにわたってJ-pop前線に位置し、人気と鮮度を保った女性歌手を他に答えることができようか。彼女の決意は、奇しくも「平成」という時代の終了と符合し、新たなる時代へとこの国が突入することの象徴となる。

さて、20年前とはどんな時代だったのだろう。コンピレーション・アルバム制作のため、その時代を振り返ることも多々あった最近の筆者だが、1997年は日本の音楽界にとって大きな節目だったと思う。90年以降、マルチメディア・タイアップによるメガヒット曲の量産により、それまでとは形相をまるっきり変えてしまった日本の大衆音楽界は、1998年に宇多田ヒカル、浜崎あゆみ、モーニング娘。の登場により、現在のJ-popメインストリームに向かう基盤を固める。つまり、曲がり角に突き当たる最後の直線が97年だったのである。その直線を鮮やかに駆け抜けていたのが小室ファミリーであり、その先導役が安室奈美恵であったのだ。大衆の購買心理を読みながら、歌い手の歌いたいことを的確に楽曲化し、しかも飽きさせることがなかった小室哲哉の功績は、決して軽視してはならないものである。

96年度レコード大賞を「Don't Wanna Cry」で射止めた翌年早々、市場に送り出された「CAN YOU CELEBRATE?」は、フジテレビ「月9」枠で97年の第1作となったドラマ『バージンロード』のテーマ曲に使われたことで、発売と同時にロケットスタートを加速。ドラマでの印象的な使われ方も絡み、たちまち結婚式に引っ張りだこのスタンダード曲の仲間入りを果たした。昨年は3回も知人の結婚記念パーティーに出席するという、未だに実感がわかない展開に及んだのだが、その中の一回で恒例の即興演奏に及んだ時、自然に「CAN YOU CELEBRATE?」のメロディーが飛び出した。ずーっと脳裏から消えることがない曲の仲間入りを果たす運命が付いて回っていたのだろう。

20年前の本日、第39回日本レコード大賞を受賞した安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」

実は、このコラムを書くに当って1997年の記憶を定かにするため、ピアニスト・作曲家として活動中の加羽沢美濃が97年のヒット曲の数々を料理したデビュー・アルバム『ピアノ・ピュア メモリー・オブ・1997』を久々に引っ張り出してみた。美麗なアレンジを得てここに記録された曲の数々は、改めてあの頃の豊潤な香りを蘇らせてくれる。「CAN YOU CELEBRATE?」を一曲目に、ル・クプル「ひだまりの詩」、松たか子「明日、春が来たら」、CHARA「やさしい気持ち」等々、当時はまさかそんな運命になるとは思っていなかったが、未だに頻繁に歌われ耳にするスタンダード曲だ。聴き手が成長してないなんて言うと嘘になりますよ。この持続感がJ-popのヒット曲から消えたのは、果たしていつなのだろう。『メモリー・オブ〜』シリーズは、2006年以降発売が途絶えている。きっとその年ではないだろうか。

20年前の本日、第39回日本レコード大賞を受賞した安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」

さて、あなたの1997年はどんな時代でしたか? 今よりはずっとましだろ、なんて簡単に片付けないで下さいね。人はみんな、成熟し大人になるのだから。ちなみに、筆者が初めてインターネットというものの味を知って、趣味的な独り言を発する場所としてのホームページを開設したのが、その年のことでした。そこから始まった道が巡りに巡って、今こうしてコラムを書かせてもらうまでに至っているのです。
明日からまた、新しい一年が始まります。まず絶望感ありきではなく、きっといい年が来ると建設的な気分を持とう。「CELEBRATE」したくなる出来事にめぐり逢うために。

【著者】丸芽志悟 (まるめ・しご) : 不毛な青春時代〜レコード会社勤務を経て、ネットを拠点とする「好き者」として音楽啓蒙活動を開始。『アングラ・カーニバル』『60sビート・ガールズ・コレクション』(共にテイチク)等再発CDの共同監修、ライヴ及びDJイベントの主催をFine Vacation Company名義で手がける。近年は即興演奏を軸とした自由形態バンドRacco-1000を率い活動、フルートなどを担当。 5月3タイトルが発売された初監修コンピレーション・アルバム『コロムビア・ガールズ伝説』の続編として、新たに2タイトルが10月25日発売された。
20年前の本日、第39回日本レコード大賞を受賞した安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」

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