本日は高橋真梨子の誕生日 69歳となる
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本日3月6日は、高橋真梨子69回目の生誕記念日。ソロデビューから数えても本年で40周年という、最早日本を代表する大ベテラン歌手の一人である。一昨年・昨年と紅白歌合戦への出場で新たな話題を提供してくれたが(一昨年、女性歌手としては最年長出場記録を樹立)、驚くべきことに2012年以前の出場は、「桃色吐息」が大ヒットした1984年の1回のみ。決め手となる楽曲を多数持つ大歌手の強みを改めて証明する結果となった。
ところで、そんな彼女の数多い「決め手」の中で、真の代表曲と呼ぶに相応しいのは果たして何だろうか。一昨年の紅白で、1996年リリースされた26枚目のシングル「ごめんね…」が歌われ、最大のヒット曲として紹介された時、筆者の周囲では疑問の声が幾分か上がった。これには反論の余地がある。実際問題、彼女のシングルの内最も多くの売上枚数を叩き出したのは、この「ごめんね…」である。日本テレビ「火曜サスペンス劇場」のEDテーマとして長きにわたって使われたことで人気が加速し、オリコンチャートには47週にも渡りランクイン。最高順位こそ18位だったが、メガヒット林立期だった96年に於いては、65万枚も売れた曲が見過ごされがちになるのも仕方ない。この数字が86年か87年に叩き出されていれば、年間1位になるレベルなのである(!)。
それに比べると、一般的に代表曲の呼び声高い10枚目のシングル「桃色吐息」は、オリコン4位に達したものの、売上枚数は36万枚強。とは言え、幾度もベストアルバムに収録されたり、カラオケでも末長く歌われており、「ごめんね…」以上に知名度が高いと言われても納得できる。ちなみにこの売上枚数でも、87年の年間チャートであれば、余裕で2位になれる(!!)。
実はアナログ盤時代(88年まで)の真梨子のソロシングルでベスト30入りを果たしたのは、驚くべきことに「桃色吐息」のみ。ペドロ&カプリシャス時代には「五番街のマリーへ」「ジョニィへの伝言」という名曲名唱があり、その2曲に比べると意外と語られることが少ないながら、のちに旦那さんとなるヘンリー広瀬が作曲した「陽かげりの街」もそれらに迫るヒットを記録しているが(チャート順位的にはこの曲の方が上!)、ソロ初期にも決して避けて通れない「隠れ名曲」がいくつかある。
78年11月にリリースしたソロデビューシングルは、当時乗りに乗っていた尾崎亜美が提供した「あなたの空を翔びたい」。瑞々しい歌唱に早々と円熟味も加味された名曲で、オリコン49位とまずまずのヒットを記録。自動車のCMに起用された3枚目のシングル「ハート&ハード〜時には強く時には優しく〜」(79年)も同じく尾崎亜美作品で、オリコン67位にランクインした。山口百恵との結婚を間近に控えた三浦友和が出演した「大人のチョコレート」のCMで流れていた、続くシングル「アフロディーテ」(80年)も耳にする頻度が高かったが、意外にもチャートインしていない。
もっと意外なのが、8枚目のシングル「for you…」(82年)が同じくチャート入りしていないことだ。いや、後に2回も紅白で歌われたこの曲が、シングルとしてリリースされていることを知らない人は意外と多いのではないだろうか。地道なコンサート活動で歌い継いできたこの名バラードは、いつの間にか彼女の代表曲のひとつというステータスを獲得し、数多くのアーティストにカヴァーされたり、カラオケでも好んで歌われることになる。そして「桃色吐息」で遂に大ブレイク。この曲は玉置浩二作品と誤解されることも度々あるが(タイトルが果実、色、身体現象の組み合わせという「ワインレッドの心」との共通項ゆえか)、実際は佐藤隆作品であり、この曲のわずか2日前に発売された彼自身のシングル「マイクラシック」とは異母兄弟のような関係だ。関係ない話だが、昔広島を散歩していて「桃色吐息」という名の清涼飲料水を自動販売機に見つけた時は笑ったものだ。
CD時代になると、「ごめんね…」に至るまでにも、同じようにドラマタイアップを得た「はがゆい唇」で2曲目のベスト10入りを果たし(92年、最高5位)、先の玉置浩二とのデュエットを実現させた「貴方が生きたLove Song」(92年)や、冬季オリンピックテレビ中継のイメージソング「遥かな人へ」(94年)等、コンスタントにヒットを記録。カヴァーアルバムが今のようにファッショナブルなものではなかった頃、「たかはしまりこ」名義でリリースした2枚のアルバム『紗』(89年)『紗II』(90年)は、先駆者的存在としてもっと語られる機会があっていいと思う。これも蛇足だが、ビクターの「別名義王国」ぶりは、一つのコラム全部使って語れる位ネタが豊富なので、いつか別の機会に。さて、今年の紅白では果たしてどの「決め手」を提示してくれるか、楽しみにしたい。
高橋真梨子「桃色吐息」「あなたの空を翔びたい」ペドロ&カプリシャス「陽かげりの街」ジャケット撮影協力:鈴木啓之
【著者】丸芽志悟(まるめ・しご) : 不毛な青春時代〜レコード会社勤務を経て、ネットを拠点とする「好き者」として音楽啓蒙活動を開始。『アングラ・カーニバル』『60sビート・ガールズ・コレクション』(共にテイチク)等再発CDの共同監修、ライヴ及びDJイベントの主催をFine Vacation Company名義で手がける。近年は即興演奏を軸とした自由形態バンドRacco-1000を率い活動、フルートなどを担当。 5月3タイトルが発売された初監修コンピレーションアルバム『コロムビア・ガールズ伝説』の続編として、新たに2タイトルが10月25日発売された。