米朝首脳会談は「猪木VSアリ戦」のようなもの
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「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月20日放送)に高橋洋一(数量政策学者)が出演。金正恩委員長が中国で習近平国家主席と会談したことから、北朝鮮をめぐる米中韓日のそれぞれの立場と思惑、また、米朝交渉の実態について解説した。
金正恩委員長が習近平国家主席に会いに行く本当の理由
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が昨日中国を訪れ、習近平国家主席と会談。会談では先週行われた米朝首脳会談の結果を報告。朝鮮半島問題で連携を強化することを確認したとみられる。
飯田)ここ短期間、3月、5月に続いて3回目の中国訪問ということで、今日20日までの滞在となっているそうですが、ここはある意味中国の後ろ盾感を前に出すということですか?
高橋)まあそうでしょうね。それまでずっと会わなかったのに、この3回だけ凄いなという感じですけれど。もう何年も会ってなくて、無視していたのに、ここは必死に金正恩はやっているのかなという感じですよね。
飯田)金正恩氏としてはやはりアメリカと対するには中国が必要だということですか?
ガチンコであるが故に難しい米朝交渉
高橋)なければ無理でしょう。米朝首脳会談ってガチンコなんですよね。だから、あれについて、期待感から「もっと勝てたのではないか」と思ってる人は批判する人が多いですよね。シンガポールでの共同声明について中身がないとか言います。
昔、異種格闘技戦で「猪木アリ戦」ってありましたね。あれを「世紀の凡戦」と言う人がいますが、それに似ている。要はガチンコになると大変なんですよ。どうしてもああいう形になってしまう。
飯田)猪木さんが、勝つ為に寝転んで戦ったという試合ですね。
高橋)もう負けちゃいけないってレベルでしょう。私が関係者に聞いたところでは、アリのグローブは石膏でカチカチでコンクリート状だったらしい。あれ一発食らったら多分骨折しちゃうってレベルですよ。
飯田)なるほど。
高橋)だから、一発当たったらアウトというレベルだから、あのような形にならざるを得なかった。プロレスをショーとして見ている人は、そういうガチンコ感って無いじゃないですか。だからもっと激しい技の掛け合いがあると思うわけなんだけど、本当にガチンコの試合になるとああいうものなんですよね。
米朝首脳会談もかなりガチンコだったと私は思います。一方的に勝てるはずが無いでしょうというレベルですよね。だから、ああいう形になるのはある程度仕方がないと私は思います。
飯田)あれは結局何かを決める会談ではなかったという。
高橋)最初からそうでしょうね。決められないんですよ。中国も後ろにいるし。だから今回もガチンコだから、金正恩は自分だけでやったら絶対に負けてしまうのが分かるから中国に擦り寄っているということですよ。
日本はお金を直接北朝鮮に出してはいけない
飯田)そこで各国それぞれの思惑のなかで動きをしていて、例えば韓国なんですが、外務省の報道官が言っているのが、韓国と北朝鮮とアメリカで3者の外相会談をASEANの拡大会合のタイミングが8月にシンガポールであるので、そこでやろうじゃないかというような流れになっています。韓国は「うちもある意味いっちょ噛んどくか」というようなところですか、これは?
高橋)そうでしょうね。みんないろいろな組み合わせがあって、日米韓と言いますが、韓はちょっと別だと思いますよ。韓は独自の、ひょっとしたら韓国の方が社会主義化するかもしれないという感じでやっていますからね。日本はよく気を付けた方がいいと思います。
飯田)こういう動きが出て来ると、日本だけが蚊帳の外じゃないかというような批判が国内から上がりますね。
高橋)でも、蚊帳の外にはなってなかったでしょう。この間の米朝首脳会談を見ても、トランプ大統領の記者会見で安倍さんの話多かったですよね。それを見ると韓国もちょっと焦るわけでこういう話が出てくるのではないでしょうか。
外相会談だから誰がやっても関係無いような気がしますが、トップが問題ですよ。これは特に北朝鮮の場合は金正恩しか決める人がいませんから。他の話は聞いていてもあまり意味ないのですけれどね。
飯田)あそこの国は基本的に完全な独裁なわけですものね。
高橋)「拉致は解決済み」と言う放送が出ると大騒ぎしますが、それはあまり気にすることのないレベルですよ。要は金正恩がどう言っているかだけです。だからそこの直接の交渉を日本もあまりやりたいと思うとダメなんだけど、日本は軍事力がなくて経済力しかないので、日本の持っているお金をちらつかせながら交渉するということですね。もちろん、非核化でも北朝鮮にお金を出しちゃいけないんですよ。当然のことながら国際機関にお金は出すけど、北朝鮮に行かないようにするということが必要です。
飯田)国際機関が中で非核化についての作業をする実費を担保すると。
高橋)それは出すけど北朝鮮にお金が行くようなのはダメですよ、ということです。
飯田)かつてね、制裁を緩めて需要を供給したりなんかしたときには結局、指導部が私腹を肥やしたじゃないかという話もありますもんね。
高橋)やはりお金を出すにあたっても、物資を出すにあたってもどこまで行くかをちゃんとチェックしなくてはダメですね。
非核化に向けての交渉はガチンコなだけに時間がかかる
飯田)アメリカがある程度譲歩したんじゃないかと見る方は、米韓の軍事合同演習、「ウルチフリーダムガーディアン」というのが8月に行われる予定だったのが中止になった、それは譲り過ぎたんじゃないかと言います。
高橋)譲っているのと、北朝鮮の方が実験施設をもう一度破壊するという話になっていますよね。その辺りは見合いだと思いますよ。お互いに1個ずつやって行こうという話でね。だから北朝鮮の方がこれで理由をこねたりしてね、核施設かなんかの話にちょっと躊躇すればまた軍事演習もすると、そういう形なのではないでしょうか。
飯田)今回は米韓の軍事合同演習を1回まず中止にしてみたということですか?
高橋)年中演習しているので演習にもいろいろなレベルがある筈なんですね。非常に重要なものから、コンピューターのシミュレーションみたいなものまでありますから。
飯田)重要度の部分もあると。
高橋)とりあえず一度様子を見て、じゃあ次何を破壊するのかということを見ているという感じはします。この軍事演習はね。これだけ見たら譲歩に見えますが、外国交渉ですから一方的な話じゃないんですよ。だから本当にちょっとずつ、ちょっとずつ、だからそうすると同時に2個という原則になっていて、北朝鮮の思う壺じゃないかっていう風に言うんだけど、お互いに両方ともガチンコだから厳しいところでやっているのだと思います。
飯田)トランプ大統領は米朝首脳会談の後の会見のなかでも、非核化そのものはものすごく時間がかかるんだという話もありましたが。
高橋)そりゃあかかるでしょう。南アフリカの非核化で十何年もかかかったんですよ。真面目にやれば時間がかかるのは間違いないです。
飯田)その辺はあと、誰が査察をするのだという辺とか。
高橋)あとは今どれだけ持っているかということが重要ですよね。実験場を爆発しちゃったからそこの検証がむずかしくなっているでしょう。実験場の爆発の前にどれだけ残留の放射能があるかを計っておけばある程度の核兵器の保有量は分かったはずなんですけどね。これからどうするのかね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00
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