「垣花正　あなたとハッピー！」（7月11日放送）に経済アナリストの森永卓郎が出演し、北朝鮮による日本人拉致問題と日本が今後取るべき姿勢について解説した。

北朝鮮の拉致問題と経済支援を考える

日本と北朝鮮の問題を考えるときにふまえておく必要があるのが、6月12日に行われた歴史的な米朝首脳会談です。日本は「拉致問題について触れてくれ」と要求したわけですが、議題には上がったけれど共同声明には盛り込まれないという結果に終わった。これをどう見ていくのか。日本はどう対応していくべきなのか。

日本に出される北朝鮮からの請求書は3兆円？

トランプ大統領が米朝会談の後に、北朝鮮への経済支援について、会見で「日韓両国に用意がある。アメリカが支援する必要はない」と言いました。最初、トランプ大統領は「中国・韓国・日本」と言っていたのですが、その後「韓国・日本」と言い出して、最後は「日本・韓国」に変わっていったのです。

「最終的にアメリカはお金出さないけど、日本が1番メリットを受けるのだから、金は出せよな」と請求書が回ってくる。このとき、北朝鮮も実は、安倍総理と金正恩委員長の直接会談を否定していない。というか、認めていた。ただしその裏で、「そのかわり、請求書を渡すからね？」です。
日本と韓国の国交が正常化したとき、戦後賠償の代わりに経済援助をしました。民間も含め3兆円くらいでしたが、それと同じくらいを要求してくるのでは、と言われています。

拉致問題は日本だけでなく国際的な人権侵害行為である

日韓基本条約の際には、朝鮮半島全体で払ったのですが、北朝鮮の立場からしたら「僕ら、貰ってないよ？　韓国にあげたのなら、同額だよね？」と言う可能性が、おそらく極めて高い。
そもそも「拉致問題とは何か？」これは「重大な人権侵害」なのです。暴力によって一般人を無理矢理拉致したわけですから、これはテロです。
実は拉致されたのは日本人だけではありません。1部の説だと米国人も拉致されたという説もあるし、韓国人はたくさん拉致されている。
だから、人権侵害を非難すべきで、日本だけのことを主張すべきではないと思います。
「人権侵害は止めろ！」と堂々と日本政府が主張して、「それを受け入れたら経済援助をする」という方が筋じゃないかなと思います。

北朝鮮がもっとも侵害している人権は北朝鮮国民全員の人権

実は北朝鮮が行っている最大の人権侵害は、北朝鮮の国民に対する人権侵害なのです。まず、基本的人権がない。思想や表現の自由、宗教の自由もない。国外へ移動する自由もない。国家の主導で、出自によって階級分化させ、階級の低い人たちはものすごい、生きるか死ぬかの貧困に喘いでいる。
居住の自由もないから引っ越しも自由にできない。軍事費を優先させたおかげで、あのミサイル1発でどれだけの北朝鮮国民を救えたのか分からない。生存権の侵害をしているわけですよ。

世界が北朝鮮の人権侵害を認めている

今年の3月23日に、国連の人権理事会というところで、日本とEUが共同提出して、北朝鮮に「拉致問題を“含む”すべての人権侵害をいますぐに終わらせろ」という決議を採択しているのです。若干問題なのは、中国がこれに賛成していないことですが、「国連で決議された」ということは、世界の人たちが「北朝鮮が人権侵害している」という事実を認めて、それを「いますぐ解消しろ」というのが、世界の総意なのです。

もちろん、北朝鮮はなかなか「うん」とは言わない。ただ、よく考えたとき、日本が政府認定している拉致被害者は十数人で、そんなに多くない。そこだけに拘ってしまうと、「自分のことしか考えてないのでは」と言われてしまうので、「それは象徴だけど、それも含めて人権侵害を止めさせる。そして、それと引換なら巨額の経済援助もいとわない」そうした態度を示せば、国際社会も「おっ、日本も外交をけっこうよくやっている！」となるわけです。

日本は経済支援をカードとした強い交渉力が求められる

3兆円と簡単に言いますが、大人1人につき3万円ずつ払うわけです。日本人にとっても、けっこう大きいお金です。だから、それを出すのなら、北朝鮮がずっとやってきた人権侵害を止めさせるくらいのことと引換にしないと私はいけないと思います。
「軍事力がないからそんな交渉できない」と言う人はいますが、ここはイッパツ、「日本は本当に筋を通す国なんだ！」と世界に見せた方がいいと思います。

垣花正 あなたとハッピー！
FM93AM1242 ニッポン放送　月-金　8:00-11:30