ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（8月24日放送）に外交評論家の宮家邦彦が出演。ISを含む世界に散らばるテロリストについて解説した。

ISが指導者バグダディ氏と思われる音声を公開

過激派組織のIS（自称イスラム国）の最高指導者バグダディ容疑者の肉声とされる音声が、イスラム教の祭日「犠牲祭」にあたる22日に公開された。この音声のなかでバグダディ容疑者とされる人物は、ヨーロッパやカナダで最近起きたテロを称賛し、世界各国で更なるテロを敢行するよう呼び掛けている。バグダディ容疑者とされる音声が公開されるのは、およそ1年ぶりのこと。

飯田）バグダディ容疑者と「みられる」人物ということですが。

宮家）やはり苦しいのでしょう。ウサマ・ビンラーディンのときも、パキスタンとアフガニスタンの国境の山中にいたと思うのですが、ビデオでしたからね。ビデオで滔々と喋っていて、バグダディの場合もある程度の音声があるから調べるのでしょうが、いずれにせよ画を出せなかったということは彼らが安泰ではないということです。本当はシリアでいなくなったはずなのにね。なくならないのですよ。

飯田）壊滅したとか、組織的にはなくなったという話は聞いたのですが。

宮家）全員捕まえたわけでも殺したわけでもないですから。当然、何人かは逃げていきますよね。そうするとまた再結集するわけです。ですからどこにいても思想があって、それに対してフォロワーが出てくるわけですから、必ずお金を出す人もいるし実行する人もいる。いま静かだからといって甘く見てはいけないと思います。

我々の周りにもISの残党は潜んでいる

飯田）自称イスラム国の領土的なものが無くなるというときに、しかしながらいろいろなところへ逃げるのだと。あのときいろいろ報道されていて、一部はアジアの方にもという。

宮家）もちろんそうです。テロというのは領域が無いのです。だからISは非常に珍しいもので、普通は思想があれば良いのです。思想があってそれを喋る人がいて、フォロワーがいれば。物騒な話ですが、テロなんて運転免許さえあれば良いのです。運転免許があって、レンタカーすれば良いのですから。別に爆発物を持つ必要はないのです。
フィリピンのミンダナオが大騒ぎになって、いまは掃討作戦が済んだというけれど、あそこだって広い島です。どこに誰が隠れているかわからないことが当然だと思った方が良い。言い方は変ですが、彼らがまともなテロリストだったら、当然東京オリンピックは1つのターゲットになり得るのです。そこは日本の警察がしっかりと頑張っていると思いますが、我々も決して他人事ではないと思うべきです。

飯田）宮家さんがおっしゃったように、車や大型バスで群衆に突っ込んでいくテロがつい先日もロンドンで起こったわけですよね。

宮家）テロリストというのは卑怯者ですから、強いところへ正々堂々と行かないのですよ。弱いターゲットに対して、最も残忍な方法で破壊するのです。それで最大の政治的な利益を得るのが彼らのやり方です。我々が気を抜いたところがいちばん危ないわけです。

「日本は安全だ」という思い込みが危険

飯田）「日本人だから大丈夫だ」「日本人だから狙われない」なんてことはないわけですね。

宮家）それは我々の勝手な思い込みで、彼らの目的を達成するためなら彼らは誰でも良いのですよ。

飯田）世界の注目が集まる場所というのは、それだけでターゲットになるわけですね。

宮家）ですから彼らも、苦しいながらも声で存在感を示す。そうするとまだ活動している人たちがいるから、いろいろな形で再集結をするというのは十分あり得ることです。

事前の摘発、完全には難しい

飯田）フランスやドイツでも、事前の摘発というのがニュースになったりもします。これというのは情報網がないと難しいわけですか？

宮家）これはイタチごっこで、フランスで続いたときにはアメリカの情報機関は「フランスはだめだ」と。もっと事前に情報を取って対処しないと、一網打尽にしなければいけないのに、フランスの場合はもう後手後手だと言うわけです。それは1つの考え方なのだけれど、完璧に地下に潜った人たちをあぶり出して、スパイを入れて情報を取るのにもお金がかかりますよ。時間も人も必要だし、全部を見ることは不可能かもしれない。

飯田）最終的に人権との兼ね合いみたいなところにもなっていくわけですね。

宮家）民主主義国家であればあるほど、そのバランスを考えなければいけないときでしょう。短期的にオリンピック前後にやらなければいけないことはあるかもしれませんね。それはある程度の許容範囲にしないと、全体の安全は確保できないかもしれません。

飯田浩司のOK! Cozy up！
FM93AM1242ニッポン放送　月-金　6:00-8:00