クルマのコックピットの変遷【2】 コンソール“一等地”をめぐる争い

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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第497回)

■センターコンソールの始まり、二極化の現代

クルマのコックピットの変遷【2】 コンソール“一等地”をめぐる争い

三菱・パジェロのインパネ 最新のクルマはディスプレイが「一等地」の定番

コックピットの変遷、後編は前席の中央部分に焦点を当てます。現代のクルマは一般的に左右に広がるダッシュボードと、そこから床へとつながるセンターコンソール(以下 コンソール)で構成されています。前編でお伝えしたシフターとも密接な関係がありますが、コンソールも時代の変遷をたどってきました。ちなみにコンソールとは「機械などを操作・管理するための制御卓や入出力装置」のことを指します。放送業界や音楽業界でも音声の調整卓のことをコンソールと呼びます。

クルマのコンソールの嚆矢は1950年代後半。当時主流だったFR(前エンジン・後輪駆動)車では室内にプロペラシャフトや変速機の機械部分が“トンネル”として張り出していました(カーペットなどで覆われてはいましたが)。このころのクルマはベンチシートが主流でしたが、流線形などデザインがスタイリッシュになるにつれて、車高が低くなっていきます。当然、シートの位置も下がり、相対的にトンネルが前席のスペースを圧迫するようになりました。

これに対応するため、座席もベンチシートから、セパレートシートに移行していきます。左右のシートが独立したことにより、むき出しとなったトンネルの見栄えを良くしようと、アメリカのデザイナーがカバーをつけることを考え出した……、これがコンソールの始まりとされています。

クルマのコックピットの変遷【2】 コンソール“一等地”をめぐる争い

日産・初代ブルーバード 時計とカーラジオは1960年代当時、羨望の的だった

スポーツカーなど、車高の低い車種はシフターがフロアシフト前提となるため、ダッシュボードとコンソールが一体となった「T字型」が採用されましたが、当時はまだコンソールがないクルマ、あっても上下2つに分割されていました。ベンチシートの車種や、廉価版のグレードはコンソールが床まで伸びず、途中で終わっていました。シフターまでコンソールがつながった上級グレードと比べると、何とも寂しく感じたものです。

時代が下ると、FF(前エンジン・前輪駆動)車が増えてきます。FR車に比べて室内の広さをアピールしようと、あえてコンソールをなくすクルマも出てきましたが、コンソールに慣れたユーザーからは「安っぽい」と感じられたようで、マイナーチェンジで“急造”のコンソールを設ける車種もありました。その後は多少室内が圧迫されようと、FF車もコンソール設置が一般的になりました。

クルマのコックピットの変遷【2】 コンソール“一等地”をめぐる争い

日産・初代フェアレディZ スポーツカーは「T字型」と呼ばれるコンソールが多かった

一方、ミニバンブーム、インパネシフト、シフターが動力源と機械的につながらない「バイ・ワイヤ」「電子制御シフト」が普及すると、再び、ダッシュボード下のスペースの自由度は大きくなっていきます。しかし、現代の考え方は二極化しているようです。

軽自動車などはスペース重視の車種はコンソールを廃止、または最小限にしているのに対し、SUVや高級ミニバンはむしろ、コンソールの存在を強調するものが多くなってきました。電子制御シフトのクルマの中には、シフターを手元に近づけるためにコンソールを高くし、運転席と助手席をブリッジのように完全に“分断”するものもあります。

クルマのコンソールの構造にも様々な歴史があるのです。

■“陣取り合戦”で生まれたもの、消えたもの……

クルマのコックピットの変遷【2】 コンソール“一等地”をめぐる争い

グローブボックス下に吊り下げられたカークーラー 当時は贅沢装備だった

続いて、ダッシュボード及びコンソールの使い道です。コンソールが登場した当初は収納スペースとしての利用でしたが、やがて、数々の装備品やスイッチ類が設置され、文字通りの「コンソール=制御卓」と相成りました。

装備品のレイアウトも時代によって変遷を遂げました。いまも昔も「一等地」はダッシュボード中央の部分、ここを何が占めるかによって、当時のクルマに何が求められてきたのかが見えてきます。

戦後の国産車でいち早く一等地にお目見えしたのはオーディオ。日本では1951年に民放ラジオもスタートし、車内でラジオを聴けることは一種のステータスでもありました。ダッシュボード中央は時計、シガーライター、チョークスイッチ、灰皿に並んで、カーラジオが占めました。

潮目が変わったのは1970年代。空調装置が高機能化されてからです。当初ヒーターのみだった空調は、ベンチレーション=換気システムやエアコンの普及により、「レジスター」と呼ばれる吹き出し口が登場。ちなみにこれがなかったころは、助手席グローブボックス下にカークーラーがオプションで設定され、「贅沢装備」とされました。

クルマのコックピットの変遷【2】 コンソール“一等地”をめぐる争い

日産・七代目スカイライン 1980年代のクルマはエアコンレジスターが一等地を占めていた

レジスターも当初はダッシュボードの下部(あるいはコンソールの上部)に取り付けられ、「後付け感」がありましたが、やがて上部の一等地に“進出”します。空調効率を上げるほか、上部を計器類とレジスター、下部をオーディオとする「視覚系と操作系」を分離する目的もありました。視覚系で警告灯が充実してきたのもこのころで、トヨタ自動車は「OKモニター」、日産自動車は「セーフティモニター」と名付けました。

これを受け、オーディオ関係はコンソールに移行していきます。ラジオだけでなく、カセットデッキ、アンプなども備えた「カーコンポ」が出現し、よりスペースが必要となってきたのです。かつてはダッシュボード中央にラジオ、それ以外の場所に後付けのカセットデッキに分散していたものを「統合」する意味でも理にかなった配置だったわけです。ドイツの工業規格=DINが日本にも導入されたのもこのころで、いわゆる「2DINサイズ」のスペースがコンソールに確保されました。1970年代後半から90年代までは、クルマによって差はあれど、上からレジスター、空調コントロールユニット、オーディオ関連の順。その間に灰皿、シガーライターが配置されるのが定番となりました。エアコンは後にほとんどのクルマが標準装備となりました。

20年ほど続いた定番が再び変わったのは2000年代。カーナビゲーション=カーナビの出現です。1980年代に登場した当初は多くがオーディオ機器と“同格”の扱いでしたが、カーナビの進化とともに位置は上昇。レジスターをディスプレイの両脇に配置する「共存共栄」の時を経て、いまは大画面化したディスプレイが名実ともに一等地の座をゲットすることになるのです。最近は速度計などのディスプレイ化も進み、計器に連なるレイアウトも増えてきました。

クルマのコックピットの変遷【2】 コンソール“一等地”をめぐる争い

左上:インパネシフトが主流の軽自動車はコンソールは最小限(日産・ルークス)
右上:トヨタ・クラウン 上級セダンはコンソールの存在感が大きくなっている
左下:日産ノート・オーラ コンソールはブリッジ状になり、下部に収納スペースが設けられている
右下:日産のEV、リーフ あえてコンソールを分離し、空間がある

一方で、装備品の中には時代が進んで役目を終えたものもあります。最たるものは灰皿。前席中央のみならず、かつては各席のドアポケットまでに設置されていた灰皿は、喫煙人口の減少により姿を消しました。となると、灰皿とペアでついていたシガーライターも消滅。もともと給電機能もあったため、一時は残りましたが、最近はUSBなど各種ポートに変わっています。

収納スペースもただの小物入れから用途を想定したものが出てきました。いまの時代、欠かせないものがカップホルダー、当初は後付け装備として、レジスターの桟に挟んだりしていましたが、現在はコンソール、ダッシュボード両端、ドアポケットなど、至る所に用意されています。スマートフォンを置くスペースもUSBポートのそばに設けられるようになります。一方で、かつてカセットテープを入れていたスペースは用途を変え、コインホルダーも高速道路でETCの整備が進むにつれ、少数派になりつつあります。

◇

ダッシュボード、コンソールの限られたスペースの中で繰り広げられる“陣取り合戦”は今後も続いていくでしょう。いまはまさにディスプレイ全盛で、ダッシュボードからはみ出さんばかりに大画面化しています。しかし、最近はスマホでナビゲーション機能を活用するユーザーも増えています。操作の確実性から物理スイッチ復活の動きもあり、その争いは混とんとしています。

(了)

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