工藤新監督就任……、ドラファンとして

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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第495回)

■プロ野球、サプライズが続いたこの10月

工藤新監督就任……、ドラファンとして

来年こそは……

プロ野球は日本シリーズが進行中です。それに先立つドラフト会議は、読売ジャイアンツが織田翔希投手を強行指名。その後、読売の新監督に松井秀喜さん就任……、サプライズが続きました。どんな結果になるにせよ、来年のペナントレースは熱い戦いが期待されます。

一方、今回の小欄は「偏向報道」であることを前もってお許しください。

3位、2位、4位、5位、2位、1位、6位、6位……、プロ野球が2リーグ制になってから、中日ドラゴンズが残した“周年”(20周年~90周年)の成績の変遷です。好不調の波が周期的に訪れていますが、ここ最近(80周年と90周年)はともに最下位と、残念な成績となりました。

また、2021年からは6年連続でBクラス。実は落合博満監督が就任する前の中日は2リーグ制以降でBクラスが連続したのは最長で3年でした(1968年~1970年)。落合監督退任後は7年連続Bクラス、2020年の3位(新型コロナウイルスの影響でCS=クライマックスシリーズはなし)をはさみ、6年連続Bクラス、14年連続でCS不出場……、暗黒時代と言って差し支えないでしょう。

そんな現状を打破できるか……、工藤公康さんが中日の新監督に就任しました。長期低迷が続く球団のファンとして、すっかり負け癖ならぬ「疑い癖」が染みついており、「就任決定的」の報が出ても、にわかに信じることができませんでした。落合元監督もテレビ番組で「えっ、やるんだ」と驚きを語っていましたが、私も「よく引き受けてくれた」と思ったものです。

■就任会見でようやく見えてきた球団のビジョン

10月15日に開かれた就任記者会見は公式サイトで見ました。様々な感慨が去来しました。

「次の100年(創設100周年)に向けて強固なチームつくりをしてほしいとお願いした」

その本気度がどこまでか……、加藤宏幸球団社長の発言からは、ようやく球団がビジョンを持ち始めたと感じます。工藤監督は63歳、10年も監督を続けるとは限りません。つまり、工藤監督で優勝するだけではない、「ポスト工藤」を育てて、中日を常勝球団に育てること…そんな深遠な意味にもとれました。生え抜きでもない、球団の選手・コーチの経験者でもない、完全なる「外部招聘」は1984年(就任時)の山内一弘さん以来、42年ぶりです。

記者会見で工藤さんは目標を明確に語りました。

「名古屋の皆さんに喜んでもらえるような野球をすること、一勝でも多く勝つことで皆様に喜んでいただけるようなチームをつくることが大きな目標。最終的な目標はもちろん勝って優勝すること」

工藤さんはご存知の通り、名古屋の出身、就任の決め手について「地元を考えた時にいろいろ思うこともあった、できることがあれば、名古屋の人に少しでも恩返しがしたい」と話します。勝利に飢えるドラゴンズファンに刺さったのは言うまでもありません。

しかし、チームづくりはまさにこれから。「選手自身を知ることが一番大事。自分から動いてしっかり知ることで、コミュニケーションをとりながら、能力向上につなげられるかがカギ」……、会見では「コミュニケーション」というフレーズが何度も出てきました。

キーマンについて聞かれると「全員」と明言。「全員に能力・体力・技術の向上、メンタルも強い思いを持ってもらう、総合的にうまくいけば必ず強いチームになっていく」
「久しぶりに名古屋に住んで楽しみなことは?」という質問もありましたが、「ないです」ときっぱり。「そんなことをしに来たんじゃない」と言わんばかりのうんざりした表情にも見えました。「選手の能力を伸ばし、試合をすることで結果を残すのは大事なこと、そのために来た。24時間365日、選手のことを考え、選手のことを思い、勝つために何をすればいいか、しっかり考えていきたい」とも話しました。

■著書からもあふれ出る「工藤イズム」。そして、重なる“あの人”の姿

工藤新監督就任……、ドラファンとして

中日・工藤公康新監督の著書

工藤監督就任の報を受け、私は工藤さんの著書を取り寄せました。誠に僭越ですが、地元にいないドラファンとしての「礼儀」だと思ったからです。しかし、皆同じことを考えているようで、結構入手困難になっています。特に選手を含めた中日関係者が手に取っていることは想像に難くありません。球団フロントも言動を見る限り、著書に目を通していると思われます。何とか入手し、読破できたのは「工藤メモ」(日本実業出版社)と「『10年後の自分』をつくる」(発行:KADOKAWA 編集:中経出版)の2冊。記者会見の発言の中には著書にすでに記されているものも多くあり、「工藤イズム」が詰まっていました。文章の関係でわずかではありますが紹介します。

「7年間監督をやってうれしかったことは『監督変わりましたね』と選手に言ってもらったこと」

ソフトバンク監督時代の苦い経験として、「誰かをはさんでコミュニケーションをとったり、違う伝わり方をしてしまうことが監督としての失敗」と会見では語っていました。著書にも明記されています。選手本人ととるコミュニケーションの大切さ……、経験に裏打ちされたフレーズだったわけです。

「当たり前を当たり前にできるかどうか、基本を大切にする」

会見での発言ですが、著書に記されていたのは「凡事徹底」。「微差が大差を生む」とも書かれていました。

工藤さんの著書からはほかにも心に残るフレーズが出てきます。野球選手でなくとも勉強になることもありました。一方でいまの中日に足りないものも多々ある……、膝を打つ自分がいました。そしてこんなことも記されていました。

「私が指導者をやるならば『優勝できるチーム』よりも『弱いチーム』でやりたい」

このフレーズを目にした時、ドラファンとしてうれしいやら、恥ずかしいやら……、複雑な気持ちになりました。

記者会見や著書からは、もちろんすべてではないですが、落合元監督の姿がどうしても重なってしまいます。

キーマンは全員、これは落合監督就任時の「戦力の10%底上げ」という表現に連なりますし、質問によって“塩対応”もはばからないこと、選手想いの姿勢……、このあたりもまたしかりです。

「凡事徹底」で思い出したのが、落合元監督がキャンプで行っていた“地獄のノック”。飛び込んだりせず、しっかり走れば処理できるギリギリの場所への打球はまさに「凡事徹底」の姿でした。

■“あのころ”を令和の時代にアップデートできるか?

そして、工藤監督の会見や著書で印象に残ったのはこのフレーズです。

「選手には1年でも長くユニフォームを着てほしい」

常勝時代の復活……、正直、工藤監督には期待しかありません。その一方で「疑い癖」のあるドラファンの自分もいます。

現代は「働き方改革」「労働移動」の時代です。小さいころからずっと野球一筋だった人もいれば、様々な人生経験の中の一つに野球があるという人もいるはずです。今年も戦力外通告がありましたが、入団からわずか3年で通告を受けた人もいます。そのような厳しい現実、何よりもユニフォームを着続けることの過酷さを考えれば、現役を続けながら「セカンドキャリア」を模索する人がいてもおかしくはありません。

あくまでもファンから見た限りですが、いまの選手をみていると、一部にそんなにおいを感じてしまうのです。そんな選手とも1年目の工藤監督は向き合うことになるのでしょう。思えば、落合元監督の時も、最後までついてきた選手は井端弘和、荒木雅博、森野将彦の3選手だけだったと言います。「あとはみんな逃げた」と落合さんは話していました。逆に言えば、そういう選手が3人いることが、常勝球団復活への最低条件なのかもしれません。

野球選手も人生は人それぞれです。しかし、ドラファンの1人として、工藤監督の想いには大賛成です。選手には1年でも、1日でも長く現役を続けてほしいと思います。そして、3人と言わず、少しでも多く、「工藤イズム」を継承する人が続くことを願います。それこそが「10年先の未来」を構築することにもつながるのですから。

(了)

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