関心ごとは何か? 適切な質問とは? ~メダリスト会見に思う

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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第460回)

■五輪から帰国、「りくりゅう」ペアの人柄にじむ

早いもので衆議院選挙の投票から1カ月、ミラノ・コルティナオリンピックが終わり、パラリンピック、野球のWBCも始まりました。本当に目まぐるしく時は過ぎていきます。

関心ごとは何か? 適切な質問とは? ~メダリスト会見に思う

「りくりゅう」ペア 日本記者クラブの記者会見に臨んだ

中でもミラノ・コルティナオリンピックは数多の感動をもたらしてくれました。日本勢のメダル総数は冬季五輪では最多の24個。毎度毎度の帰国してからの「にわか報道」は同業者としてもあまり好ましくは感じないのですが、頂点を極めたメダリスト、目指したアスリートの皆さまには「おめでとうございます」「お疲れさまでした」と申し上げたいと思います。

中でも、素晴らしかったのは三浦璃来・木原龍一両選手の「りくりゅう」ペア、その活躍はこれまでも報じられている通りですが、帰国後の記者会見も大変印象的なものでした。

2月25日午後、東京・内幸町の日本記者クラブで行われた記者会見。最後に会見の司会者とこんな質疑応答がありました。

(司会)実は司会者というのは非常に損な役回りでして、会見前から外野からすごくいろんなプレッシャーを受けて、これをきいてくれっていうのを……、お答えはお任せしますんで、「りくりゅう」のお2人、本当に見ようによってはいろんな関係に見えるんですよね。仲の良い兄妹のようにも見える。友人にも見える、夫婦漫才にようにも見える。りくりゅう、何が正解なのっていうのを一言

(木原)えー?もう…

(三浦)なんかそれを超えてるよね

(木原)戦友……、じゃないですけど

(三浦)なんか一緒にいて当たり前ですし

(木原)喧嘩もすごいしますし…

(三浦)家族みたいになってる

(木原)あとはご想像にお任せします

(三浦)ご想像にお任せします

記者会見にはニッポン放送では洗川雄司アナウンサーが取材、私はこの時、デスク業務でしたが、会見をweb画面でチェックしていました。夕方のニュースではこのやり取りを「下世話でありながらも、おそらく誰もが知りたいという質問がありました」と申し上げて紹介しました。

いわば、プライベートに関わりかねない質問でしたが、「りくりゅう」ペアの回答は真摯で、戦友、家族という言葉を紡ぎながらも、含みを持たせるという見事なものでした。また、顔を見合わせる姿、物理的な距離が2人の関係を何よりも物語っていましたし、2人の誠実な人柄をも映し出していたと思います。

関心ごとは何か? 適切な質問とは? ~メダリスト会見に思う

会見ではリラックスした表情も見せていた

■こういう時にどういう言葉を繰り出すか……、一つの「模範」

一方で、私は質問をした司会者にも賛辞を贈りたいと思いました。オリンピックに限らず、スポーツ選手の会見は競技やプレイに関するものにほぼ限られ、プライベートに関する質問は「タブー」とされます。それがアスリートへの敬意でもあり、礼儀でもあります。ただ、今回の場合は様相が違うと思いました。「付き合っているか?」という発想は確かに下世話ですが、2人の関係性が今回の素晴らしい演技を構成した大切な要素であることは疑いないからです。「絆」の一言で片づけるには十分でない、それ以上の深い何かがあるのではないか……、誰もが知りたかったことだと思います。

ただ、これをいかに「タブー」でなく、敬意を表しながら質問するか……、質問者の力量が問われます。日本記者クラブでは挙手による質問のほか、文面による質問も受け付けます。その中で多かったのが関係性についての質問だったのでしょう。ただ、挙手による質問ではなかなか出てきません。「実は司会者というのは非常に損な役回り」「外野からすごくいろんなプレッシャーを受けて」この言葉に司会者としての苦悩と覚悟がみてとれました。

私もこれまで無数の記者会見を経験し、質問もしていますが、その中には自身の考えによるものもあれば、本社デスクと相談して質問を決めることもあります。いずれの場合も筋を押さえながら、どのようにして相手の発言を引き出すか知恵を絞ります。もし、今回の会見で自身がその場にいて、関係性をたずねる質問を託された場合、どういう言葉を繰り出すべきか。私も苦悩したと思います。

昨今の記者会見はインターネットの発達などで全編が中継されることも少なくなく、記者の質問も視聴者、聴取者にさらされます。今回は「お祝いムード」の会見でしたが、不祥事に関する会見では厳しい追及が飛ぶこともあります。会見者に対し、罵声を浴びせる記者、質問なのか「お気持ち表明」なのかわからない長い質問には、逆にSNSから厳しく批判されることもあります(もっとも、そうした批判を乗り越え、あえて質問する胆力も記者の資質ではあるのですが)。

今回の質問についてSNSでは「ド直球」「ダメな質問」「下世話な質問するのをやめてほしい」などという厳しい書き込みも見られましたが、今回の質問は2人に敬意と配慮を示しつつ、さらには笑いを交えながら、皆が知りたい本質に切り込んでいました。ただの直球ではなく微妙な変化も織り込み、相手の懐に飛び込んでいたとも感じました。

司会者は日本記者クラブ企画委員で、産経新聞でかつて運動部記者を歴任した森田景史論説委員。記者会見で「りくりゅう」の2人は少し疲れた様子でしたが、森田さんは「(日本記者クラブの会見として)確認したわけではありませんが、多分“宇宙一”になった方は初めてだと思います」とユーモアを交え、リラックスした雰囲気に務めていました。会見の進行、質問者として、一つの「模範」であったと労いの気持ちを表したいと思います。

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ゲストブックには「あきらめない」の6文字

■ペアスケートと現状と課題、そして4年後……、中身の濃い記者会見

会見ではペアスケートの現状を冷静に見つめる姿もありました。本来伝えるべきことについても触れておきます。

木原選手は「ハードルが高いような気がする。リンクの環境は日本でも徐々に改善されて素晴らしい環境に近づきつつあるが、ペア競技は大人数での練習は危険」と話し、ペア専用のリンクのさらなる整備を訴えました。そして、もう一つ指摘したのが指導者不足。「指導者が日本にまだたくさんいないのが、ハードルが上がっている原因。日本でペアというのはどういうものかを指導できるようになれば、ペアが難しいという要因が消せるのではないか」と競技発展への“提言”も語られました。

これには三浦選手が「私自身が木原選手のコーチングを助けていく」と応じます。そして木原選手は「女性のパートは三浦選手の方がわかっている部分も多いのと思うので、一人でコーチングするよりはチームで、一緒にコーチングしていきたい」と、将来の指導者としての夢を語っていました。

さらに競技者としての4年後について、三浦選手は「木原選手が引退する時は私も引退する時、私が違う人と組んでまた続けるということは絶対にない」と明言。「りくりゅう」ペアはこれからも続いていきそうです。

(了)

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