「無条件での平和条約」を提案したプーチン大統領の意図は?
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月14日放送)に外交評論家の宮家邦彦が出演。プーチン大統領の東方経済フォーラム以降の動向について解説した。
ロシアのプーチン大統領が大規模演習を視察
国際会議、東方経済フォーラムへの出席を終えたプーチン大統領は13日、軍が極東やシベリア地域で行っている軍事演習「ヴォストーク東方2018」を視察したとイタルタス通信が伝えた。プーチン大統領は、今回の演習に初参加した中国軍とモンゴル軍との共同演習が行われているザバイカル地方のツゴル演習場を視察し、3ヵ国の優秀な兵士合わせて10人にメダルを授与した。なお、今回の演習は冷戦期の1981年以来最大の規模となっている。
飯田)これについてプーチンさんの動きというものに、メールやTwitterで頂いています。群馬県館林市の“サバ缶”さん、「この東方経済フォーラムのなかで、プーチンさんが『年内に無条件で平和条約の締結を』と発言しました。宮家さんにお伺いしたい。この真意はどういったものなのでしょうか?『いま思いついた』というようなことを言っていましたよ」と。
宮家)まず「思いついた」と言いましたね。そんなわけはないでしょう。あの人は犬が大嫌いなメルケルさんと会うときに、わざわざ犬を連れて来るのですよ。思いつきでその場に犬がいるわけがないじゃないですか。だいたい、もともとKGBのエージェントでしょう。あの人たちは細心の注意を払い、計画した上でやるのだから、思いつきであるわけはないですよね。
それから「無条件」と言いましたね。ロシアが無条件で北方領土を返す、良いように聞こえますが違うのです。ロシアは平和条約と領土問題を切り離したい。先に平和条約をやって経済的な活動を強化して、できれば領土問題は後でやろうと。後でやるということは、下手をすればやらないのと同じですから、日本はそれではダメなのです。領土問題と平和条約は一体なので、北方領土の帰属について議論し、結論を出した上で平和条約だと結びつけているわけですよね。そのための手段として、経済活動をこれからやろうという話ですから。領土問題と平和条約をつなげる鎹(かすがい)なのです。これを我々が放棄するわけにはいかない。あくまでもおかしな占領をしているわけですから、これが無くなって時効が成立してはいけないのです。
プーチンさんからすれば早くやりたい、経済が欲しいのかもしれない。だけど彼は決して焦っていないと思います。だって失う物がないでしょう。プーチンさんがジャブを出してきたことに我々が一々反応し過ぎて、不必要な波を作っても意味がない。いままでやってきたことは間違っていないですから、これを繰り返していくしかないです。相手はアメリカとの関係が悪くなって、仕方ないから中国との関係を改善せざるを得ないので、日本との関係改善までは追い込まれていないと思います。
ロシアには全島返還の気はない
飯田)日ソ共同宣言では、平和条約を締結したときに歯舞と色丹に関しては返すと明記されていますが、ロシアはそこで終わらせて、国後、択捉に関しては「うちのものだよ」という状況に持って行きたかったということですか?
宮家)そう言う人もいるのですが、私がもしプーチンさんだったら、少なくとも日ソ共同宣言は「最大限我々が譲ってそこだよ」という程度のことですよ。ヨーロッパ方面ではウクライナにちょっかいを出して、ジョージアにもちょっかいを出した。それでクリミアを取ったのですよ、国際法違反で制裁を貰っているのです。それが北方領土を返すと思いますか? プーチンさんは相当強かな人で、全てを計算した上で、日本側に1つのジャブを打ってきた。これを我々が過大に反応してはいけない。いままでのやり方をじっくりと続けるべきだと思います。
飯田)総理があそこをスルーしたというのは?
宮家)いろいろ言いたいことはあるにしても、外交としては間違いではないと思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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