脚本家の遊川和彦が、黒木瞳がパーソナリティの番組「あさナビ」（ニッポン放送）に出演。脚本した連続ドラマ『過保護のカホコ』について語った。

黒木）今週のゲストは脚本家の遊川和彦さんです。
『過保護のカホコ』の誕生秘話をお聞きしたいのですが、まず遊川先生自身は過保護でしたか？

遊川）まったく逆です。4人兄弟の3番目で、親に愛を求めていました。母子家庭で、育てるのに精一杯で子供を可愛がる暇がないわけです。逆に「かまって！」と言いながら、仕方ないから自分なりの愛され方を模索する子供でした。

黒木）どちらかというと、竹内涼真君が演じる初ちゃんに近いのですか？

遊川）最初は過保護のヤツを憎んでいました。その憎しみを全部ヤツに託して、とにかく加穂子をいじめまくる！　そうでなければ、この物語は書けないというところから入ってくるのだけれど、だんだん彼が過保護の子の、自分にはない素晴らしさに気づいていく話になるのかな。「過保護の子が主人公になる」という発想はまったくないし、成立する自信もまったくなかったですね。

黒木）自信がないのに書き始めるわけですよね。どうしてですか？

遊川）「書けるな！」と思ったのは、初と加穂子のシーンが面白くなってきたからです。もともと、これはウチの大プロデューサーの家庭がモデルですから、そういうリアリティはありました。過保護に育つとすくすく、ピュアに育つから、愛される感じは分かるのですよ。何となく「この子は愛されるな」というのが分かるし、邪心や計算がないですよね。

黒木）誰にでも優しいし、柔らかい感じですものね。

遊川）それからどんどんエンジンがかかってきて、「これは面白いじゃないか！」と。加穂子も、最初は「顔芸をやってくれ！」というところから入りました。人間は話している間も表情やボディランゲージが変わりますよね？　そういうものを今回はちゃんと撮ろうと思って。「加穂子がどういう顔をするんだろう？」と。「初めて竹内涼真（初）という『異物』に会ったときに、ピュアな人間はどんな反応をするんだろう？」というのを面白がって撮れないかと思ったのです。それは女優さんも大変ですが、例えば「捨てられた子犬みたいな顔をしてくれ」と指示して、「それはどんな顔ですか？」となるけれど、そこを作っていくのがこちらも楽しいし、彼女もだんだん楽しくなってきたと思います。

黒木）充希ちゃんの場合は、それをどんどん面白がる。その逞しさは、私は見ていて気持ちよかったし、前向きだし、元気だし。ネガティブに捉えないですよね。「こうすれば、こう見えるかな？」とか、「こういうことかな？」みたいに、連日、控え室で練習していましたから。

遊川）こちらも最初は計算していないわけです。連ドラですから。黒木さんも難しい役だし、いろいろお話もしたけれど、そこでコミュニケーションを取りながら役作りをしていくのがいちばん面白いと思うので、それを大事にしていきたい。最近は特にそう思うし、『カホコ』をやっていて、それがいちばん大事だと、しみじみ思います。

遊川和彦／脚本家

東京都生まれ、小学校1年から広島県大竹市育ち。
広島大学政経学部を卒業後に上京。テレビ制作会社のディレクターなどを経て、1987年に脚本家デビュー。
以後、テレビドラマの脚本家として、25年以上にわたり話題作を次々と発表。
2003年には スペシャルドラマ『さとうきび畑の唄』で文化庁芸術祭大賞を受賞。
2005年には 涙そうそうプロジェクト『広島 昭和20年8月6日』で日本民間放送連盟賞番組部門･最優秀作品を受賞。また2005年には『女王の教室』で、第24回向田邦子賞を受賞した。
2011年には、最終回の視聴率が40％を超えた『家政婦のミタ』を発表。この作品で、2012年東京ドラマアウォード脚本賞を受賞。
2012年下半期に放送のNHK連続テレビ小説『純と愛』の脚本を担当。
脚本家としては珍しく、撮影や編集の現場に足を運び、チームの一員としてスタッフ全員で高みを目指すことをスタンスとしている。

【そのほかの主な作品】
『オヨビでない奴!』『金太十番勝負！』『ママハハ･ブギ』『予備校ブギ』
『学校へ行こう！』『ADブギ』『十年愛』『もしも願いが叶うなら』『禁断の果実』
『人生は上々だ』『真昼の月』『智子と知子』『GTO』『魔女の条件』『オヤジぃ。』
『お前の諭吉が泣いている』『恋がしたい恋がしたい恋がしたい』『おとうさん』
『幸福の王子』『夫婦。』『誰よりもママを愛す』『演歌の女王』『学校じゃ教えられない！』
『曲げられない女』『リバウンド』『〇〇妻』『過保護のカホコ』

ENEOSプレゼンツ　あさナビ
FM93AM1242 ニッポン放送　月-金　6:43-6:49