脚本家の遊川和彦が、黒木瞳がパーソナリティの番組「あさナビ」(ニッポン放送)に出演。脚本した連続ドラマ『過保護のカホコ』について語った。
黒木)今週のゲストは脚本家の遊川和彦さんです。
人気脚本家ですが、作品のテーマを決めるときは、どうやって決めているのですか?
遊川)いろいろです。『過保護のカホコ』の場合、過保護はある意味、ウチのプロデューサーの家がモデルです。あまりに過保護ぶりが面白くて、「面白いからドラマにすれば?」と軽く言ったのです。「誕生日が3回ある」とか、そんなことはあり得ないし面白いと思って。だけど、そんな企画が通るわけないと思っていました。何で通ったのか聞いたら、『過保護のカホコ』のタイトルが面白かったからと言われました。そこから困るわけです。テーマがない。「過保護のカホコのエピソードは面白いけれど、テーマがない」。
でも、そんなときによく考えたら、いまは「日本中が過保護だな」と思ったわけです。親もそうだし、仕事にしても、昔は部下が文句を言ったら怒鳴ったのが、現代では「コンプライアンスを守ってくれ」と言っていたとか。とにかく腫れ物を触るみたいでした。「先生が書いて下さった物に文句を言ってはいけない」とか。それもおかしいですよね。これも脚本家を過保護にしているわけです。役者も過保護にされていると思います。
黒木)誰に対しても、過保護だと。
遊川)そうです。そこに心はあるのかと思うわけです。だから、それに物を言う男を出して、「これでいいのか?」となったときに、「世界が過保護な現代に投げかけるテーマになるのでは?」と思ったのです。
黒木)それは始まりですが、今回の2時間スペシャルのテーマ「何を描いていくか」は、何から閃きましたか?
遊川)いろいろ考えたけれど、夫婦が成長することですね。自分も結婚して3年くらいですが、夫婦として全然成長していないという気持ちもありますから(笑)。
黒木)まだまだ新婚ですね。だって、毎朝キスするんでしょう?
遊川)もちろんです!
黒木)3年というと、夫婦生活が面白くなってきて、お互いのいろいろな主張が出てきたり、口論も出てきたり。違う部分や同じ部分が分かってきますよね。3年で、どんな感じですか?
遊川)対応の仕方が分かってきます。諦めるところは諦めて、主張する部分は主張する。それが分かってきます。
「今日傘持っていけば?」と言われたら、内心で「今日は降らないだろ」と思うのですが、そう思っても素直に傘を持っていくようになりました(笑)。全受け入れです。
黒木)変わりましたね!
遊川)変わりました。「俺、大人になったな。成長したな」と思いました。
黒木)相手の思いやりを受け入れてあげるのも、成長の1つですね。
遊川)そこで否定しても、たかが傘1本持っていけば済む話じゃないですか。ムキになってケンカになっても意味がないわけです。その辺りが成長したとしみじみ思います。
遊川和彦/脚本家東京都生まれ、小学校1年から広島県大竹市育ち。
広島大学政経学部を卒業後に上京。テレビ制作会社のディレクターなどを経て、1987年に脚本家デビュー。
以後、テレビドラマの脚本家として、25年以上にわたり話題作を次々と発表。
2003年には スペシャルドラマ『さとうきび畑の唄』で文化庁芸術祭大賞を受賞。
2005年には 涙そうそうプロジェクト『広島 昭和20年8月6日』で日本民間放送連盟賞番組部門・最優秀作品を受賞。また2005年には『女王の教室』で、第24回向田邦子賞を受賞した。
2011年には、最終回の視聴率が40%を超えた『家政婦のミタ』を発表。この作品で、2012年東京ドラマアウォード脚本賞を受賞。
2012年下半期に放送のNHK連続テレビ小説『純と愛』の脚本を担当。
脚本家としては珍しく、撮影や編集の現場に足を運び、チームの一員としてスタッフ全員で高みを目指すことをスタンスとしている。【そのほかの主な作品】
『オヨビでない奴!』『金太十番勝負!』『ママハハ・ブギ』『予備校ブギ』
『学校へ行こう!』『ADブギ』『十年愛』『もしも願いが叶うなら』『禁断の果実』
『人生は上々だ』『真昼の月』『智子と知子』『GTO』『魔女の条件』『オヤジぃ。』
『お前の諭吉が泣いている』『恋がしたい恋がしたい恋がしたい』『おとうさん』
『幸福の王子』『夫婦。』『誰よりもママを愛す』『演歌の女王』『学校じゃ教えられない!』
『曲げられない女』『リバウンド』『〇〇妻』『過保護のカホコ』
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