辻監督が現役時代、2年目の松井稼頭央を見て受けた衝撃
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今日の「スポーツアナザーストーリー」は、昨日(27日)引退会見を行った、埼玉西武ライオンズ・松井稼頭央にまつわるエピソードを取り上げる。
昨日、本拠地・メットライフドームで記者会見を行い、今シーズン限りでの引退を正式に表明した松井稼頭央。現在42歳(10月に43歳)、25年に及んだプロ野球人生ですが、その出発点であり、最後の所属チームとなったのがライオンズでした。
PL学園時代はピッチャーでしたが、プロ入り後は野手に転向。打ってはスイッチヒッターとして勝負強いバッティングを見せ、守ってはショートとして華麗な守備を披露。ゴールデングラブ賞を4度受賞しています。さらに俊足を活かし、3年連続盗塁王を獲得。2002年には「3割・30本塁打・30盗塁」のトリプルスリーを達成するなど、まさに走攻守3拍子そろった「史上最強の遊撃手」でした。
04年からは、メジャーに活躍の場を移し、メッツ、ロッキーズ、アストロズの3球団でプレー。07年、ロッキーズ時代に、ワールドシリーズで元同僚・松坂大輔のいるレッドソックスと対戦したことも。11年からは日本球界に復帰し、楽天でプレー。13年には球団創立初の日本一に貢献しています。
そして、プロ25年目の今シーズン。節目の年に、松井は「選手兼テクニカルコーチ」として、古巣ライオンズに戻ってきました。背番号は、前の在籍時につけていた「7」。復帰会見で
「FAで出た形なのに、戻ってこられることができて、本当に『感謝』という言葉しか出てこない」
と語った松井。
西武・辻監督は現役時代、春季キャンプで2年目の松井を見て衝撃を受けました。
「一塁に駆け抜ける足の速さを見た時に、これはすごいのが来たなと。送球も矢のようで、間違いなくこの選手は、西武の中心になる選手だと思った」。
若い俊足の野手が多いライオンズで、よき手本を示してほしいという思いがあっての復帰オファーでした。
「若い選手の話し相手になったり、相談に乗ったり、チームを明るくさせてくれる。本当に助かりました」
おかわり君こと中村剛也は、プロ1年目の2003年、メジャー移籍直前の松井とプレーした経験を持っています。
「プロに入った時、すごいなと思っていた。普段の練習に取り組む姿勢に影響されました。本当に寂しいですし、なんとか優勝して、引退に花を添えたいです」
……この中村の思いは、ライオンズナイン全員の思いでもあります。
今シーズンの松井は、ここまで24試合に出場と、出番はわずかですが、15日に出場選手登録を外れた後も、コーチとして1軍に帯同。25日の楽天戦が終わった後に、辻監督とチームメイトに引退を報告しました。その際、
「シーズンが終わったときに握手しような」
と返した辻監督。実は松井は、西武での日本一は未経験。もちろん、目指すは頂点です。
昨日27日、松井は1軍に再登録され、8回にメヒアの代走として出場。果敢な走塁を見せ、秋山の逆転3ランでホームを踏みました。引退を表明したからではなく、戦力として必要だから、辻監督は松井を1軍に呼んだのです。
引退会見で、いっさい涙を見せなかった松井。その理由を聞かれて、こう答えました。
「涙? うれし涙としてとっておく。(目指すは)日本一です」。