番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

きょうは、スペシャル企画「思わずハミング♪　私が好きなこのメロディー」にちなみまして、SMAPの代表曲『夜空ノムコウ』の「メロディ誕生秘話」をご紹介します。あの、つい口ずさみたくなるメロディは、いったいどのように生まれたのでしょうか？　作曲されたシンガーソングライターの川村結花さんに伺いました。

SMAP『夜空ノムコウ』CDジャケット

いまから21年前、1998年1月に発売された、SMAPの『夜空ノムコウ』。SMAPのシングル曲では初めてのミリオンセラーとなり、彼らの代表曲となりました。作詞を担当したのはスガシカオさん。作曲は川村結花さん。

川村さんによると……「当時、SMAPの音楽制作に関わっていたプロデューサーの方に、曲を何曲か預けていたんです。そのなかの1曲でした」

大阪出身の川村さんは、東京藝大卒業後、シンガーソングライターを目指し、ソニー・ミュージックエンタテインメントのオーディションを受けて合格します。まずはソングライターとしての活動からスタート。SMAP担当のプロデューサーと知り合います。「曲を書いてみない？　いいのができたら、どんどん持って来てよ」という話になり、94年、SMAPの5枚目のアルバムの1曲目に、川村さんが作詞・作曲した曲が採用されました。タイトルは『ギョーカイ地獄 一度はおいで』。

「その頃のSMAPは有り得ないようなスケジュールで動いていて、レコーディングが大変だという話をプロデューサーから聞いていたので、それをそのまま曲にしちゃったんです」

シンガーソングライターの 川村結花 さん

翌年、川村さん自身もアーティストとしてデビューしますが、「アーティストとして前に進むには、とにかくいい曲を書いて行くしかない。……そんな状況で書いたなかの1曲が、あの曲だったんです」

この曲ができたのは本当に一瞬のことでした。京王線の沿線に住んでいた川村さん。本屋さんの2階に住み、近くにあった一軒家の喫茶店で、当時付き合っていた彼氏とよく将来のことなどを語り合っていました。たまたま、久しぶりにそこを訪れる機会があり「あの喫茶店、どうなったかな？　久しぶりにお茶しに行こう」とその場所に行ってみたら、なんと！　再開発のため周囲の建物がすべて取り壊され、更地になっていたのです……。

「当時の思い出が根こそぎ持っていかれたようで、ものすごいショックを受けたんですが、その瞬間いろんな思いがバーッとつながって、サビのメロディが頭に浮かんで来たんです」

川村さんはすぐに近くのコーヒーショップへ飛び込み、頭に浮かんだ曲をそのまま五線譜に書き写しました。すぐに家でデモテープを作り、プロデューサーに渡したところ「お、いい曲だね」。その後、しばらくして「……あの曲さあ、今度SMAPの新曲に、って考えてるんだ」。

最初に渡したデモテープには、川村さんが書いた、女性が主人公の違う歌詞が付いていましたが、プロデューサーはこう言いました。「男性用の新しい詞を、スガシカオさんに書いてもらったから」。

こうして『夜空ノムコウ』が完成しましたが、もう1つの“ミラクル”が起こります。
「実は最初のバージョンは、全然別のAメロが付いていたんです。『いいんだけど、ちょっと長いかな』と思っていたんですが、何とかならないかなと考えていたら、ジャストフィットするメロディがバーッと頭に浮かんで来て……これだ！　って」

すぐプロデューサーに連絡し、電話口で新しいAメロを口ずさんだ川村さん。すでに前のバージョンで編曲が進んでいましたが、鎌田プロデューサーは「そっちのが断然いいね！　すぐアレンジャーに譜面送って！」。
こうして現在の『夜空ノムコウ』が完成し、大ヒット。SMAPはこの曲で新境地を拓き、川村さんも新たなレコード会社との契約が決まりました。川村さんは言います。

「この曲が出たあと、まわりのミュージシャンから『いい曲を書いてくれてありがとう』ってすごく言われたんです。『流行りのダンスミュージックじゃなくても、いい曲を書けば、ちゃんと世の中は受け入れてくれるんだね、勇気が出たよ』って。この曲で『ああ、私は音楽をやってていいんだな』っていう切符をいただいた感じですね」

八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送　土曜　8:00-10:50